一酸化二窒素はNOxなのか?(江頭教授)
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本日のお題「一酸化二窒素はNOxなのか?」ですが、普通に考えれば「その通り」です。
ここで普通、というのは「NOx」が窒素酸化物の一般名称である、と解釈した場合です。ですが「NOx」には大気汚染物質の名称、という意味もあります。その場合の「NOx」は一般的にNOやNO2のことを指すのではないでしょうか。
大気汚染物質としての「NOx」は「ボイラーなどの固定発生源と自動車などの移動発生源」に由来するもので、「高温燃焼の際に発生するサーマルNOxと燃料にもともと含まれる窒素原子が酸化したフューエルNOxとに分類される」などとされています。
その一方で一酸化二窒素(N2O)は主に温暖化効果ガスとして扱われています。以下の図は温室効果ガスの排出量の内訳ですが、N2Oは二酸化炭素、メタンにつづいて第三位の排出量です。(ただしこの数値はCO2換算されていることに注意。実際の排出量は約300分の1です。)
温室効果ガスのインベントリではN2Oの放出の最大の原因は農業で、排出量のほぼ半分を占めるとあります。前述のサーマルNOxやフューエルNOxとして放出されるN2Oもありますが、これは第2位で全体量の三分の一以下でした。これをみるとN2OとNO・NO2をNOxと呼んで一緒に扱って良いのか、という疑問が湧いてきます。
出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より
大気中のN2Oの濃度は地球全体で大きな分布はなく、年々平均値が上がっている、というCO2とよく似た傾向を示しています。ただし、2015年の世界平均で328ppbなので、およそCO2の千分の1程度の濃度である、という点が大きな違いです。
その一方でNOやNO2の濃度は場所によって大きく変動していて、こちらはSO2と類似した傾向にある、といって良いでしょう。
NOやNO2による被害の起こり方もN2Oとは異なっています。光化学スモッグや酸性雨の原因となりますし、著しく濃度がたかい場合には直接有毒性を持っているそうです。それに対してN2Oは「笑気」と呼ばれて麻酔ガスとして医療用にも利用されている物質です。
さて、もう一度「一酸化二窒素はNOxなのか?」について考えてみましょう。いままで説明したようにN2OにはNOやNO2とはかなり違った性質がありますから、NO・NO2の総称をNOxとして、N2Oを別途扱う、というが現実に合っていると思います。たとえば「大気汚染の原因物質にはNOxやN2Oがあります」という表現は普通に考えれば変な話ですが、これは「有り」ではないでしょうか。
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