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大気の厚さはどのくらいか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 皆さんは「mmHg」という大気圧の単位を聞いたことがあるでしょうか?

 私が子供の頃には大気圧にはこの単位が用いられていたと思います。Hgというのは水銀のこと。mmは長さを表すミリメータです。端を閉じた円筒を水銀の液面に立てると円筒内に水銀の柱ができます。この水銀柱がある高さ、およそ760mmを超えるとそれ以上は上昇しません。この状態で大気圧と水銀の重さが釣り合っている、そう考えると水銀柱の高さが大気圧の指標となります。

 水銀の代わりに水を使うとどうなるでしょうか。約10mの高さになるといいます。水柱の断面積を1m2とすると10mの水柱内の水は10ton、104kgです。重力加速度を10ms-2とすると105Nの力が1m2の面積にかかっている、これは105Paの圧力を受けているということですから、大気圧0.1MPaとよく一致しますね。

 では、考えを変えて水の代わりに空気を使ったら何メートルになるのでしょうか?大気圧と釣り合う空気柱の高さ、よく考えるとこれは今回のタイトルにある「大気の厚さ」そのものですよね。

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 まず空気の密度を決めましょう。0℃1気圧の1molは22.4Lです。1molの空気の重さは空気の平均の分子量28.8から28.8gとなります。空気の密度は28.8g/22.4L=1.285、約1.29g/L、つまり1.29×10-3g/ccです。

 空気の密度は水の密度の1.29×10-3倍、というか778分の1です。空気は水より軽いので(密度が低いので)水と空気が釣り合うためには空気の高さは778倍必要です。水が10mでしたから空気が大気圧と釣り合うために必要な高さは7780 m、つまり約8 kmとなりました。

 さて、この簡単な計算でどの程度正確な大気の厚さが計算できたのでしょうか。気象庁には「大気の構造」というページがありますので、答え合わせをしてみましょう。

 まず、大気の密度が高さで変化する、という重要な情報が。水や水銀は液体ですから圧力によって体積が変わるものではありません。でも空気は圧力に反比例して膨らみますから、上方の大気ほど圧力が下がって膨張している(密度が下がっている)訳です。従って、大気には明確な上端がない(下端は地面ですね)こともわかります。「大気の厚さ」はという設問には大気の上端をどのように定義するか、という問題がついて回るわけです。

 今回計算した約 8 kmという高さは空気が膨張しないと考えているので、上層の大気を1気圧に圧縮したとしたらどの程度の厚さになるか、という意味で「大気の上端」を定義した大気の厚さだ、ということになります。

 気象庁のページでは大気の質量の90%が含まれる高さを上端の定義として約15 kmという数値を挙げています。8 kmと15 km、結構違っている様に見えますが、上端の定義が違うことを考えれば納得できる結果でしょう。

江頭 靖幸

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