煙突の白い煙は煙じゃない?(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
今回のタイトル、何を言っているのかとお思いでしょうが…。煙突から今日も煙がでているな、と思ったらもう少し注意して観察してみてください。
煙突から出ている白い煙の様なもの、動きを目で追ってゆくとすぐに透明になって見えなくなってしまいます。白い粉が空気と混ざって薄まって見えなくなる、という様子ではなく、本当にフッと透明になってしまうのです。
そうです。これは煙ではなくて「湯気」なのです。煙突から水蒸気を多く含んだガスが放出され、外気に触れて冷却されることで水蒸気が凝縮して微細な水滴になる。それが白く見えている訳です。外気との混合が進むと水滴は蒸発してガスは透明になります。
煙とはものが燃えるときにでる気体のことですが、それが目に見えて「煙」と呼ばれるのは微細な紛体が含まれているからです。このような煙は薄まっても透明になることはありません。それに必ずしも白いとは限りません。煙突から出ているのはそういう意味では煙ではない、ということです。
では、なぜ煙突という言葉には「煙」の文字がつくのでしょうか?
答えは簡単で、「昔は本当に煙がでていた」からです。ものが燃えるときに生じる気体に微細な紛体が含まれているは昔も今も変わりません。これを直接外気に放出するのが煙突の役割でしたが、今では煙のなかの微粒子を除去してからでなければ外気に放出することはできないよう、法律によって規制されています。つまり、いま煙突から放出されているのは「処理済みの煙」なので基本的には透明、たまに湯気が目に見える、という状況になっているのです。
この様な背景を知ると、煙突から白い「煙」しか見えない、というのは環境対策が行き届いている証拠だということが分かります。環境対策には費用もかかりますし技術も必要です。化学工学の知識をもった多くの技術者が今でも環境対策のために働いている、だから煙突の「煙」は白くなったのです。
おまけ:私が大学生のころ(30年くらい前です)、先生に工場見学につれて行ってもらったときの話。
「今の煙突からは湯気の白い煙しかみえないだろ、でも先生が学生の頃には煙突からは真っ黒な煙が出ていたものさ。」
「でも先生の先生が学生のころには赤い煙が出ていたんだって。」
いくら何でも…。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)