« 「成長の限界」再読 その3 (江頭教授) | トップページ | 「成長の限界」再読 その4【最終回】 (江頭教授) »

ネット時代でも「数字を記憶しておくこと」が大切なわけ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「数字やデータは覚える必要は無い、ネットで検索すれば良いのだから」

 これはよく聞く話ですよね。いや、最近は聞かないかも。むしろ今はこれが当たり前になっているのかも知れません。とは言え、私は古い人間なので、この意見には賛同しかねる部分もあります。「部分もある」という言い方になるのは一部分当たっているところもあるから。自分流に言い換えれば「全ての数字やデータは覚える必要は無い、ネットで検索すれば良いのだから」となるでしょう。逆の言い方をすれば「ネット時代でも一部の数字を記憶しておくことは大切だ」となります。

 今回はその一例として2022年10月18日付けのニューズウィーク日本版のサイト上の記事

BTSファン、メンバーが兵役の間は「韓国ボイコット」を宣言

を取り上げたいと思います。

Photo_20221019052501

 記事に書かれている内容について、私は特に意見はありません。

 とは言え、2ページ目の以下のパラグラフには言いたいことが。いや、いくら何でも盛りすぎでしょう。

Photo_20221019052801

(Newsweek日本語版のWebサイトから。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/10/bts-19.php 2022/10/19閲覧)

「10年で4333兆円とすると、1年当たり433兆円。日本のGDPが500~600兆円だということを考えるとその7、8割という数字。あの、日本のGDPって確か世界第三位だったのでは。韓国のGDPはそれ以下なのだから、もしこれが正しければ韓国の人たちは全員BTSに食べさせてもらっていることになるんだが…」

 これが私の言いたいこと。この中には数字として「日本のGPD」と「日本のGDPの順位」という二つの数字が入っています。

 

「日本のGDPが500~600兆円」というのもかなりアバウトな言い方ですし、日本のGDPが「世界第三位」というのは余り更新されない情報です。要するに簡単に覚えておくことができる程度の数字。でもこれが頭に入っていると記事を見た瞬間におかしさに気が付くことができます。

 何かの金額を見たとき、どのくらいの大きさなのか比較するための数字をいくつか覚えておくのです。その一つが日本のGDP。「4333兆円」という数字がそれより一桁多いことは一目瞭然。すぐに問題が明らかになるのです。

 では、この記事はどうしてこんな間違いをしでかしているのでしょうか。記事の署名は「エマ・メイヤー」となっていて、おそらく本国のNewsWeekからの転載らしいことが分かります。検索すると元記事が見つかり、その該当部分は以下の様になっていました。

Photo_20221019052901

(Newsweek英語版のWebサイトから。https://www.newsweek.com/bts-fans-plan-boycott-k-pop-merchandise-while-group-serves-military-time-1752566 2022/10/19閲覧)

 2018年で「$3.6 billion」と見積もられていて2014年から2023年の10年で「$29.1 trillion」と確かに書いてあります。単年が3.6で10年が29.1とほぼ10倍の数字になっているのですから普通に考えれば同じ単位でしょう。おそらくこの記事は単純に「billion」と書くところを「trillion」と書き間違えているのでしょう。

« 「成長の限界」再読 その3 (江頭教授) | トップページ | 「成長の限界」再読 その4【最終回】 (江頭教授) »

日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事