目からうろこの「うろこ」って何?(江頭教授)
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「目からうろこが落ちる」とういのはいままで分からなかったことが突然理解できる様子を表す言い回しです。でも目に「うろこ」なんか無いですよね。なんでこんな言い方をするのでしょうか。
ちょっと調べると(「デジタル大辞泉」など)、この言い回しは新約聖書から来ているそうです。目が見えなくなった人が(他の人の祈りによって)目からうろこが落ちて目が見えるようになった、という話で、別に健康な人の目にうろこがある、という訳ではないようです。
目にうろこができる病気、ということでしょうか。それも奇妙なはなしですが…。と思ってこの言い回しの英語バージョンをみてみます。(新約聖書が原典ならギリシャ語バージョンを見るべきかも。)落ちるのは scale だ、とあります。scale という言葉には「かさぶた」という意味もあるそうで、これらなら意味が分かりますよね。「目からかさぶたがとれる」。うーん、こちらは生々しくて流行らなかったのでしょうか。
さて、この scale、実は私の専門分野である化学工学でもよく使われている言葉なのです。
実験室などで用いる特別な水を除いて、普通に手に入る水にはカルシウムなど、なにがしかの不純物が溶けている、ということは皆さんご存じかと思います。硬水と軟水、石けんが溶ける・溶けないなど、身近な話ではないでしょうか。
水を流し続けているパイプにはこれらの不純物が沈着してパイプの内面に膜状の物質ができます。
これが scale。
化学工学では水を使った冷却を行うことが多く、その際は熱を良く伝える金属のパイプに水を流します。この内面に scale がつくと薄い膜でも伝熱の障害になります。scale を構成する物質は金属と比べて熱を通しにくいのです。水を使った伝熱の装置を設計する際にはこの scale による性能低下をあらかじめ見越して余裕をもった装置をつくる必要があります。
この意味での scale、日本語では何というのでしょうか。うろこ?かさぶた?いえいえ、「水垢」です。
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