水酸化ナトリウムと洗剤(江頭教授)
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11月ももう終わり、ついこないだ2022年が始まったと思ったら(いや大袈裟)もう年末(これも大袈裟)です。
というわけで年末の大掃除を意識しているのでしょう(要出典)最近、掃除絡みの話題がちらほらと。そんな中に「業務用の洗剤を使ったら油汚れが凄くきれいになった」という話がありました。
洗剤の主成分は石けん、あるいは界面活性剤ですが用途によってはアルカリ剤として水酸化ナトリウムが入っています。取りにくい油汚れを取り除く、というか溶かして処理するためでしょう。油汚れを乳化させて取り除くのが石けんの働きですがいっそのこと油を水酸化ナトリウムで分解してしまえば水に溶けるようになるはず。この反応は石けんを作る化学反応であるケン化そのものですから「石けんで油をとる」ではなくて「油を石けんにする」ことできれいに取り除こう、という考え方ですね。
試験管やビーカーに油と水酸化ナトリウムを入れてよくかき混ぜて加熱すれば確実に石けんになるのですが実際に油汚れを試験管に入れることはできません。(いや、試験管に入れられるならもう掃除は終わっていますよね。)それに一般的に加熱するのも難しい。となればなるべく高い濃度で反応を早くしてやろう、と考えることになります。5%、10%、いやいっそのこと飽和濃度まで。でもそんな製品は一般では入手できません。5%を越えて水酸化ナトリウムが溶けている薬剤は「劇物」として扱われることになるのです。
たった5%、と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、水酸化ナトリウムはその5%でも充分に危険だ、と判断されているのですね。
5%以下なら安全、というわけではありません。作業はゴム手袋など保護具が必要です。業務用の洗剤の感想で「指が溶ける」という言い方をする人がいたのですが、この言い方はオーバーだとしてもある意味正しいところもあります。なにしろ石けんをつくるケン化反応でカルボン酸と水酸基の結合を加水分解するのと同様に、水酸化ナトリウムはカルボン酸とアミノ基の結合も加水分解してしまうのです。だから何って、いや、カルボン酸とアミノ基の結合はタンパク質を作っている結合、そしてタンパク質は人間の体、いえいえ、生物の体の主要な構成成分なのですから。
ちなみに、一部の業務用洗剤は劇薬として指定されていて一般人は購入することができません。水酸化ナトリウムは化学実験ではポピュラーな薬品の一つですが、実は非常に危険なものだということが分かります。
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