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2022年12月

2022.12.30

2022年を振り返る(江頭教授)

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 今日は2022年12月30日でまだ大晦日ではありません。でも今年の大晦日は土曜日なので本ブログは今回が今年最後の更新となります。と、いうことで今年、2022年を振り返ってみましょう。

 どんなメディアでも「22年を振り返る」と題した記事ならかならず小見出しの一つくらいには「未だ終わらぬコロナ禍」といった文言があるはずですよね。なので、まずは今年のコロナ対応について。22年のはじめには「さすがに今年でコロナ禍ももう終わりだろう」と考えていたのですが甘かったですね。現在の第8波まで、今年も第6波、第7波の感染の山がありました。ただ、どの感染ピークも微妙に大学での授業の期間を外れていた様に思います。そのおかげで昨年の様な学期途中での授業形態の変更、といった大きなイベントはありませんでした。私(江頭)は教務委員長をしていたので、これはありがたかった。オンライン授業にもみんな慣れてきたのですが、学期の途中で切り替わるとやはり大変ですからね。

 現在のコロナ第8波は一体いつまで続くのでしょうか。新しい波がくると学生さんの欠席が増えるという形で大学にははっきりと影響が現れるのですが、今回の第8波では教員にも欠席、いや欠勤が目立つようになってきのが特徴の様に思います。

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2022.12.29

年末なので人間ドックに行ってきました(江頭教授)

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 「春、新学期の学生諸君にはガイダンスをはじめとしていろいろなイベントがありますが、その中には健康診断も。でも本学には秋の健康診断があります。いえ、学生諸君に二回目の健康診断を受けてもらう訳ではありません。秋に行われるのは教職員の健康診断なのです。」

 なんて書き出しの記事を毎年10月ころに書いているのですが、今年は無し。実は健康診断の通知を見落としていて予約の手続きができなかったのです。10月のある朝、大学にレントゲン車が停まっているのを見つけてやっと気が付きました。これはいけない。でも件の健康診断の通知を見ると「学内の健康診断をしなかった人は人間ドックに行って診断結果を提出してください」との注意書きが。おまけに人間ドックの費用の一部補助もあるとか。そうか、なら人間ドックに行ってみよう。

 以前、大阪に住んでいた頃は大阪城近くの大手前病院の人間ドックに行っていたものですが、はて、ここだとどこの病院が良いのだろう?人間ドックの費用補助について問い合わせたついでに担当の人に「皆さんどこに行ってますか?」と聞いて教えてもらったところから「相模原総合検診センター」を選びました。日にちは自由に選べるので大学の授業が終了した冬休みにい行くことに。

 さすがに専用の施設で行う人間ドックだけあって、大学で行う健康診断に比べて内容は充実しています。それにオプションの検査もいろいろ。今年は厄年だし、思い切っていろいろ検査してもらおうか。

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2022.12.28

地表にとどく太陽エネルギーとアルベド(江頭教授)

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 太陽から地球に降り注ぐエネルギー、地球の自然と人間にとって大きな恵みであるこの太陽エネルギーはどのくらい地表に届いているのか。こちらの記事で地球全表面での平均で約342W/m2となることを紹介しました。

 「地球は青かった」の言葉通り、地球は宇宙空間から見えている。ということは地球に届いた光の一部は反射して宇宙に戻っていることになります。今回のお題は地球に降り注ぐ太陽エネルギーのうち、どの程度が反射されるのか、です。

 地球の表面は均一ではないので、反射の状態は土地によって異なります。入射する太陽エネルギーのうちで反射する光のエネルギーの割合を「アルベド」と言いますが、土地によってその値は異なっています。新しい雪の積もった雪原なら0.9程度。真っ白な雪原では9割の光が反射されます。地球上で大きな面積を占めている海のアルベドは実は小さくて0.06程度だと言います。雪原とは逆に太陽エネルギーの94%は反射せず、吸収されるということですね。

 海と同様、アルベドが小さいのが森林です。0.09から0.15だといいます。太陽の光を吸収することに適応した生態系ですから、これは納得のいくところです。一方、砂漠のアルベドは0.4程度とずっと大きな値です。

 地球の7割の表面積を占める海、それに陸地を覆っている森林のアルベドが小さいなら地球全体の平均のアルベドは小さいのかな、と思いますが実は0.3程度と、それなりに大きな値となっています。これは何故でしょうか?

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2022.12.27

2022年の授業は終了しました(江頭教授)

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 クリスマスには「サーモンと海老のクリームチーズロール」を食べてもう後は大晦日を待つばかりと思いきや、実は週明けの月曜日である12月26日まで本学では授業がありました。ただでさえ憂鬱な月曜日の授業ですがこのスケジュールは如何なものか。月曜1限の授業を受け持っている身としては戦々恐々として授業に臨んだのですが、本学の学生諸君は皆さんは真面目に授業に出席してくれていて一安心です。

 今年の年末年始のスケジュールは少し特別。休みの始まりが遅いというのも特徴ですが今年、いや来年は授業の開始が遅い、という特徴もあるのです。昨年、いや今年の1月は5日から授業がスタートしたのですが、来年はなんと授業開始は10日から。今年同様に5日からスタートしてもすぐに土日がある。その一方で成人の日は1月9日なので正月休みと成人の日の間にあまり授業時間がとれないのですね。そう考えると休みをまとめて取れる様に授業開始を遅らせるというのも粋な計らいというものでしょう。もっともそのために12月26日には授業をしなければならなかったのですが。

 さて、八王子キャンパスは本日27日から暫しのお休み。これは授業がお休みというだけではなく本当にキャンパス閉鎖となります。卒論生や修士の学生さんの中には実験がしたい人も居るかも知れませんが、やはり年末年始に事故があっては対応もままなりませんからね。それに例年行とおり年末年始のお休みを利用した電気系統のチェック(とそれに伴う停電)などキャンパスのメインテナンスを行うためにも必要なお休みなのです。

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例年通り片柳研究棟前に置かれた停電対策用の発電ユニット。もっとも今年は年末年始の休みが始まる前の土日でメインテナンスは終了したようです。

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2022.12.26

クリスマスイブのお昼に「サーモンと海老のクリームチーズロール」を(江頭教授)

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 コロナ禍のせいで人と一緒に会食をするという機会が激減した、という人は多いのではないでしょうか。私の場合も「大学の教員」という立場を考えると感染の可能性はなるべく少なくしたいという想いがあります。ましてや大学内で、あるいは大学の学生さん達と会食、というのは今でもやはり憚られるところです。大学の授業がすでに多くの若者が一堂に会する機会、という意味で普通よりは感染リスクがあるわけですから、それにプラスして会食をするというリスクを重ねるというのはできれば避けたいですよね。

 とはいえ昔は折に触れて大学で出前をとって昼食会をしていたなあ、などと。(いや、私が学生だったころは夜に飲み会をしていたのですが、さすがに学内ではやらなくなっていました。)そう考えると今の学生さん達は可哀想だなあ。

 と、いうことでクリスマス用のオードブルを注文して研究室の学生さん達に振る舞うことにしました。

 注文したのはセブンイレブンの「サーモンと海老のクリームチーズロール」です。実はこのセレクション、ちょっとした理由があるのです。

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2022.12.23

太陽エネルギーの量と太陽定数(江頭教授)

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 地表に降り注ぐ太陽の光は地球を暖め、水を蒸発させて雲をつくり雨を降らせ、植物を育てて私たちの命を支えてくれる、太陽電池を使えばエネルギー源にもなる、何よりも大きな自然の恵みといえる太陽の光ですが、どのくらいのエネルギーを地球に与えているのでしょうか。それが今回のお題です。

 すぐにわかる事ですが、地表のどこか一点で考えてもこのエネルギーの量は激しく変動しています。昼もあれば夜もある。夜の光のエネルギーは0です。夏もあれば冬もある。晴れの日もあれば曇りの日もある。加えて地表のどの場所を選ぶかでも違いがあります。赤道直下の暑い太陽、極地の白夜。太陽の恵みはかなり不平等な様です。

 さて、視点を宇宙に移して太陽光線を受けている地球を外から見てみましょう。太陽からの光は360度全ての方向に広がって行きます。太陽からの距離の二乗に反比例して弱くなっていく太陽の光。地球の軌道で地球ぐらいの物体を考える時にはほとんど平行光線として見ることができます。この地球の外、地球の軌道上でみた太陽からの光のエネルギーの密度を太陽定数と呼びます。その実測値は1367 W/m2。地球の外なので昼も夜も関係ありません。もちろん、夏も冬も、北も南も関係なくひとつの値が決まります。(厳密には太陽の活動に呼応して変動しているのですが、その変動幅は小さいそうです。)

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 さて、太陽定数というひとつの基礎データが与えられたところで最初にもどって地表に降り注ぐ太陽のエネルギーについて考えてみましょう。先ほど太陽の恵みは不平等で場所と時間で大きく変動する、と書きましたがその平均値はどれくらいでしょうか。地表のどこか一点で、1年間太陽光を計測して平均値を求める。それを地球全体で行って全ての平均を計算する。この手順で太陽エネルギーの平均値を求めることができます。いや、天気の善し悪しも含めると1年間の平均では不充分でしょう。それはさすがに複雑過ぎるので、大気圏の外での太陽エネルギーについて考えることにしましょう。

 実はこの意味での太陽エネルギーの平均値、びっくりするくらい簡単に計算することができるのです。

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2022.12.22

一酸化炭素はなぜ危険か(江頭教授)

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 皆さんは「締め切った部屋でストーブを焚いている場合は、ときどき換気しましょう」という注意を聞いたことがあるでしょうか。これを読んでいるあなたが高校生ならば聞いたことないかもしれません。エアコンが普及する以前、部屋の暖房にはストーブが使われていてガスや灯油が室内で燃焼されていたわけです。この注意はストーブが火が不完全燃焼した場合、締め切った部屋だと一酸化炭素が溜まって、一酸化炭素中毒を引き起こす、それを防ぐための注意喚起なのです。

 でも、なぜ一酸化炭素で中毒が起こるのでしょうか。「一酸化炭素は赤血球のなかのヘモグロビンと酸素より強く結びついてしまって離れない。酸素を体内に運ぶヘモグロビンが一酸化炭素に占拠されると体内に酸素を運べなくなって息ができても窒息してしまう。」というのが、その理由です。

 ここまでは良く聞く話ですが、もう一方踏み込んでみましょう。では、いったいどれだけの一酸化炭素を吸い込んだら危険なのでしょうか。

 事務所衛生基準規則では事務所内の一酸化炭素濃度は「百万分の五十以下」つまり50ppm以下でなければならない、と定めているので50ppm程度なら吸い込んでも問題ない様です。ただ、これは一定量の一酸化炭素を吸い続ける場合の話です。一時的に一酸化炭素を大量に吸い込んでしまう、というケースではどうなるのでしょうか。これは人の体の中のヘモグロビンの量に関係がありそうです。

 日本中毒情報センターで公開されている情報によれば体の中のヘモグロビンの10%~20%が一酸化炭素と結合すると症状が現れてくるそうですから、体内のヘモグロビンと結合する一酸化炭素量の10%以下の量に抑える必要がありそうです。

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2022.12.21

書評 「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること 」(江頭教授)

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河合雅司

「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」(講談社現代新書)

講談社(2018)

この本は以前推薦図書として紹介した「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」の続編です。「人口減少日本でこれから起きること」が2017年刊でしたから、それから1年後にサブタイトルを「人口減少日本であなたに起きること」として書かれたパート2という訳ですね。

 実はこの河合雅司の「未来の年表」は次々に続刊が出ていて、今回私がこのパート2を読もうと思ったのもパート5に当たる「未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること」の宣伝を兼ねた記事をあちこちで見る機会があったからです。いきなりパート5から読んでも良かったのですが、やっぱり順番通りに、と思い直してこちらの電子書籍版を入手しました。

 著者の河合氏は本書の冒頭で好評を博した前著について触れながら「自分の日常生活で何が起こるのかを教えて欲しい」というリクエストが多かったと述べ、本書の目標をこのリクエストに応えることだと述べています。つまり日本全体でのデータに基づいて、サブタイトルにもあるとおり「あなたに起きること」について考察しよう、というわけですね。

 目次から内容を拾ってみるとこんな感じです

「伴侶に先立たれると、自宅が凶器と化す」

「亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる」

「食卓から野菜が消え、健康を損なう」

「80代が待ちを闊歩し、窓口・売り場は大混乱する」

「若者が減ると、民主主義が崩壊する」

うーん。わざと奇をてらった書き方をして興味を引き立てようとする意図はわかるのですが…。

例えば「若者が減ると、民主主義が崩壊する」について。シルバー民主主義とかそんな話しかと思ったら選挙の投票場の運営が大変だ、というお話。いや、それ自体は大きな問題だと思いますが「民主主義が崩壊する」というのはいささか大袈裟なのではないでしょうか。

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2022.12.20

化学者かギターヒーローか(江頭教授)

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 先の記事で紹介した本学のイベント「大学院フェスティバル」改め「サステイナブル工学研究会」、内容が「お祭り(フェスティバル)」から「学会(研究会)」にシフトしていると書いたのですが、そんな中でもお祭り要素満点の出し物が若手教員によるパネルディスカッションでした。本学工学部の若手の先生たちが自分の子供時代から今に至るまでを語り、学生達、いえ後輩達の参考にしてもらおうという企画です。なにしろ大学院進学は人生の大きな転機ですからね。

 さて、今回のパネルディスカッションでのお話。化学系の先生が実は中高時代にギターヒーローを目指して練習に熱中していたという意外なエピソードが。

 この先生はいろいろあって現在は化学者となっている訳ですが、さて、これが今2020年代の中高生のお話だったらいったいどうなるのか、少し考えてしまいました。

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2022.12.19

「大学院フェスティバル」改め「第4回 サステイナブル工学研究会」が開催されました(江頭教授)

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 皆さんの中で「大学院フェスティバル」という言葉を聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか?

 という書き方で紹介してきたこのイベント、今回から名前を改めて「サステイナブル工学研究会 ~学びの祭典~」として今年も開催。これで4回目の実施となりました。

 本学工学部に接続している大学院、サステイナブル工学専攻が毎年開催しているイベントでスタート時点では対象者を本学の学部学生として大学院生が学部生に向けて自分がどんな研究をしているのかを紹介する、というイベントでした。その後、外部の先生たちにお願いした招待講演、本学科の若手の先生たちが学生時代から研究者を目指して現在に至るまで道を振り返るパネルディスカッションも加わり、学外から高校生の皆さんの参加もあり、という調子で順調に発展しています。

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メイン会場の風景。今回の研究会は基本録画・録音禁止なのですがこれは開場前なのでぎりぎりOKでしょう。

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2022.12.16

「ガクチカ」と「コーオプ実習」(江頭教授)

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 本学の向けの3年生諸君の就職活動のためのイベント「模擬面接」、前回の記事でも紹介しましたが、3年生諸君の1年先輩に当たる4年生から面接官役を選んで面接の練習をする、という内容です。私の研究室でも2名の学生さんに面接官役お願いしました。模擬面接の様子を記録するために私も模擬面接に同席したのですが、なかなかどうして彼らは立派に面接官役を果たしてくれていて、1年前の模擬面接での様子から目を見張るような成長です。

 みんな就職活動では頑張ったんだろうなあ。これこそ「大学時代で力を入れたこと」、いわゆる「ガクチカ」でしょう!

私が学生時代に力を入れたことは就職活動です…

いや、さすがにそれはないか。

 この「ガクチカ」、部活動やアルバイトを挙げる人が多く、コロナ禍で「ガクチカ」になる様な経験ができない、と話題になったこともありました。その点本学工学部では「ガクチカ」にぴったりな体験を全ての学生が経験しています。

 もったいぶるのは止めましょう。本学工学部が実施しているコーオプ教育の目玉、「コーオプ実習」です。

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2022.12.15

模擬面接を実施しました(江頭教授)

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「模擬面接」は学生諸君の就職支援の一環として本学キャリアコーオプセンターと我々教員とが協力して行う就職活動の際の面接の予行演習です。対象は本学の3年生。応用化学科の三年生も当然「模擬面接」の対象となります。

 この模擬面接は研究室の先輩が面接官役となります。すでに就職活動を終え、実際の面接を経験した4年生が、一研究室あたり数名、面接官役のを務めます。研究室毎に模擬面接を行い学生に対するフィードバックと共に結果をキャリアコーオプセンターに報告する、というのが本学の一般的なスタイルです。

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2022.12.14

水の蒸発速度はどのくらい?(江頭教授)

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 表題の質問「水の蒸発速度はどのくらい?」の答え、一般論なら「条件によって変わります。」です。

 今回は身の回りの水がどのくらいのスピードで蒸発しているのか、を考えてみましょう。

 「食事中にコップの水が蒸発して空になってしまった」なんて事はありません。

 コップに溜まっている水の深さが10cmくらい、食事の時間はたとえば1時間とすると水の蒸発速度はどんなに早くても10 cm/hよりは小さいでしょう。

 同じように「コップに水をいれたままにしたら翌日には蒸発していた」というのもありそうもない話ですから、蒸発速度は最大でも10 cm/day 以下、これが上限です。

 逆に蒸発速度の下限、最低でもこれぐらいの速度で蒸発する、という速度について考えてみましょう。「食器を洗ったあとに拭かないと跡がのこる」という話、以前このブログでも紹介した話です。例えば深さ0.1mm程度の水滴が残ったとして翌日には乾燥していると期待できるので、蒸発速度は少なくとも 0.1mm/day よりは大きいのではないでしょうか。

 身の回り、つまり室内環境での水の蒸発速度は、最大 10 cm/day、つまり100 mm/day から最小 0.1 mm/day の間。かなり幅の広い推定ですが実際はどのくらいなのでしょうか。写真のようにビーカーにグラフ用紙を貼り付けて実験してみました。

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2022.12.13

1930年代のエコカー(江頭教授)

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 今回のお題は1930年代のエコカーの話です。ええ、2030年代でなく1930年代です!

 ガソリンエンジンによる自動車が主流になる前、電気自動車が造られていたことは知られていますが、今回取り上げたいのは木炭で動く自動車、木炭自動車の話。

 木炭自動車は戦時中の物資不足の時代、ガソリンが不足した日本で木炭をつかって走れるように改良された自動車のことです。木炭を不完全燃焼させて一酸化炭素と水素を含むガス、合成ガスを発生させる炉を組み込んだ自動車で、ガソリンの蒸気の代わりに合成ガスをエンジンに供給することで木炭を使って走ることができました。

 木炭自動車の起源は1920年代に遡りますが、本格的に普及したのは1930年代の後半からだったそうです。当時、既存の自動車に取り付けるための反応用の釜とガス供給装置のキットが大小さまざまな企業から販売されていた様です。元々炭素自動車として設計された自動車ではなくても、木炭自動車に改造することができた、ガソリンエンジンをそのままの形で転用できたのです。

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2022.12.12

10℃の鉄と10℃の綿はどちらが冷たいか?(江頭教授)

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 今回のお題はナゾナゾです!

 「鉄1トンと綿1トンはどっちが重いか?」というは古典的な謎々。

 思わず「鉄」と答えたくなってしまいそうですが、両方とも1トンなので重さは「同じ」が答え。典型的な引っかけです。

 では今回のタイトル「10℃の鉄と10℃の綿はどちらが冷たいか?」はどうでしょう?

 同じ温度なんだからこれも「同じ」が答えでしょうか。

 それはそれで良いのですが、少し想像してみてください。あなたは部屋の中にいます。温度は10度です。少し、いえ、結構な寒さですね。さて、この部屋に鉄と綿がある。部屋にあるものは気温とだいたい同じ温度になっているでしょう。

 さあ、鉄に(想像の中で)触ってみてください。「冷たい!」

 今度は綿に触ってみましょう(これも想像の中ですが)。少しひんやりしてますが決して鉄の様に冷たくは感じないですよね。

 まあ、どこまで想像が正しいかは別として、私が言いたいことはおわかりではないでしょうか。たとえ同じ温度でも鉄と綿とでは触ったときに感じる温度の感触は違うだろう、ということです。

 下の図は鉄、あるいは綿と人間の指が接触したときの図(のつもり)です。接触した瞬間には、鉄と綿は10℃、指は体温で36℃(本当はもう少し低いと思いますが)です。

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2022.12.09

「授業点検」のこと(江頭教授)

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 授業点検。授業は本学の授業ことです。点検されるのは教員、その授業を担当していないほかの教員が点検を行います。

 我々大学の教員は高校や小中学校の先生たちの様な「教員」としての教育や訓練を受けていません。(教育学部があればそこの先生たちは違うのかもしれませんが、それはまた別のお話。)ですから授業をするときも学生時代に自分が受けた授業を思い出しながら手探りで授業を行うことになります。各自、自分なりに工夫を凝らすのですが、時には誰かの意見を求めたくなることがあります。また、授業中に何かを思い付き、これはいい、と人に伝えたいと思うこともあります。

 教員同士の会話の中で授業の方法について話題になることがあります。専門分野を超えて盛り上がる話題で時として良いアイデアをもらえることもありますが、話の流れ次第ではあまり効率的ではありません。

 そんなわけで、「授業点検」です。

 本学で行われる授業は順番に点検の対象に選ばれます。対象になった授業を他の教員数名が参観し、授業後にその授業の内容について話し合います。その授業の学科の教員、他の学科の教員、場合によっては他学部の教員も参加するので、いろいろな視点から授業の内容ややり方が吟味されることになります。

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2022.12.08

ハラスメントに関する講習会が開かれました。(江頭教授)

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 東京工科大学では月に一度、八王子キャンパス、蒲田キャンパスでそれぞれに「全学教職員会」と称した講習会を開いています。学長が大学の運営方針を説明する回もありますし、各学部がそれぞれの教育目標を発表する回もあります。時には外部講師をお願いして大学の教育にかかわる最新の話題を解説していただくこともあります。

 今週のタイトルは「法律家から見たハラスメント」。本学では毎年このようなハラスメントに対する講演を行っていますが、今回はもその1つ。今回は清水法律事務所の清水 光弁護士。清水さんには本学の顧問弁護士もお願いしているそうです。内容はハラスメントの定義や種類の説明に始まって具体例の紹介しながらハラスメントに当たるか否かを問いかけるスタイル。今回はアカデミックハラスメントへの対策・対応の解説が中心でした。

 

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今回、開始の挨拶は本学の大山学長でした。

 

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2022.12.07

人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか? その2(江頭教授)

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 前回に続き、「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?」がお題です。

 一人当たり年間 10 トン…、というのは前回やりました。いま考えているのは人間社会が化石燃料を燃やして出している二酸化炭素ではなく、生物としての人間が呼吸して出している二酸化炭素量のお話です。

 人間が消費するカロリーから計算して年間 0.35 トン、という数字を計算しましたが、今度は別の観点から計算してみようと思います。直接的に、人間が呼吸する量からの計算です。

 まず、人間の呼吸量はどのくらいでしょう。「NHK for School」にあるビデオ「ヒトが呼吸する空気の量」 をみると一日の呼吸量は「 500 mL ペットボトル2万本分」とあります。つまり一日で 10 m3 の空気を吸って、吐いています。

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2022.12.06

人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?その1(江頭教授)

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 今回のお題は「人間は一人当たりどのくらいの二酸化炭素を排出しているか?」です。

 これを聞いて「日本人なら年間10トンくらい。」と答えられた人はなかなかのものです。でも、今回の質問はちょっと意味が違います。

 日本人が年間10トン程度の二酸化炭素を排出する、というのは日本という国が排出している二酸化炭素を日本の人口で割った値で、そのかなりの部分は化石燃料を燃やす際に放出される二酸化炭素です。

 今回問題にしたいのは人間が生物として放出する二酸化炭素の量、つまり呼吸することによってどれだけの二酸化炭素を放出するか、という問題です。

 この問題、どうやったら答えがでるでしょうか?人間が二酸化炭素をはき出すのは食べ物を体内で分解するから。それを元に二酸化炭素の量を推算してみましょう。

 まず、人間はどのくらいものを食べるのでしょうか。

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2022.12.05

「地域連携課題」と「大学コンソーシアム八王子学生発表会」(江頭教授)

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 「地域連携課題」という言葉、聞いたことがない、という方も多いと思いますが、これは本学の授業の名称なのです。本学科では3年生前期の授業。つまりクォーター制(前期を1期、2期の2つに分ける制度)で実施されるコーオプ実習の際、大学に残っている学生に向けて行われている授業です。シラバスには授業の内容は、「学生が地域の関係者と連携しながら地域・社会的な課題等に取り組む」ものとあります。

 本学部は八王子キャンパスにありますから、この場合の「地域」は具体的には八王子市のことです。八王子市の「担当者等を講師に招いて地域が抱える各種の課題を学んだ後」に、「学生が自ら主体的に地域から課題を選定」し、その解決方法を提案する、それが地域連携課題の授業内容です。この授業はグループワークを基本とし、いろいろな施設や企業を訪れて課題の解決方法を調査・分析、結果を比較検討することで効果的で具体的な提案を目指します。

 とまあ、ここまでは以前にもご紹介したところ。授業としての「地域連携課題」は最終発表会で優秀発表を選出して終了なのですがせっかくの成果がそれだけではもったいない。でも学会にだすとしてもどこで発表すれば良いのだろう?

 実は「地域連携課題」にぴったりの発表の場があります。それがタイトルにもある「大学コンソーシアム八王子学生発表会」です。

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2022.12.02

「平均」にもいろいろありまして(江頭教授)

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 本日のお題は「平均」です。

 平均とは何ですか、という問いに対しては「複数の数字に対して、その全てを足し算した値を数字の個数で割ったもの」というのが普通の解答でしょう。これはこれでまったく問題ありません。ただ、この解答は平均値のもとめかたを述べているだけで、本来、平均とは何であるかを説明してはいません。

 では、あらためて平均とは何なのでしょうか?

 例えば「複数の数値を1つの数値で代表させたもの(代表値)の一種」となるでしょう。そうであるならば別に平均値を「足し算して割った」ものに限る必要はありません。

 たとえば「幾何平均」と呼ばれる「平均」は「複数の数字に対して、その全てをかけ算した値を数字の個数分の根をとったもの」です。(これに対して普通の「平均」は算術平均と呼ばれます。)

 また「調和平均」は「複数の数字に対して、その逆数の算術平均の逆数」となります。

 下図には0から1まで変化するxに対してxと1-xとのいろいろな平均値を計算したものをグラフ化しています。

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2022.12.01

チーズと豆腐(江頭教授)

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「ねぇ、チェダーチーズはどうしてチェダーチーズって言うの?」

「それはね、イギリスのチェダーという町でつくられていたチーズだからさ。」

「ふーん、じゃあゴーダチーズは?」

「ゴーダチーズはオランダのゴーダという街が発祥の地なんだよ。」

「なるほど!じゃあプロセスチーズは?」

「アメリカ西海岸のプロセス地方で…、ってそんなわけあるかい!」

 さて、件の「プロセスチーズ」英語では「processed cheese」というそうです。「処理されたチーズ」ということですね。

 最近いろいろなものが値上がりしています。チーズもその一つ。単に値上がりするだけなら我慢するのもありですがスライスチーズのサイズが異様に小さくなったり、いつものシュレッドチーズが食品の棚から無くなってしまうというケースも。

 仕方なくいろいろなシュレッドチーズを試しているのですがなかなか満足の行くものに出会えません。私はチーズを加熱してドロドロになった状態が好きなのですが、何というか加熱してやわらかくなっても「プラスチック感」みたいなものが強すぎる製品が多い気がします。

 そんな中で豆腐で作った「シュレッドチーズ」の代用食(?)を見つけました。これは試してみなくては。

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