化学者かギターヒーローか(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
先の記事で紹介した本学のイベント「大学院フェスティバル」改め「サステイナブル工学研究会」、内容が「お祭り(フェスティバル)」から「学会(研究会)」にシフトしていると書いたのですが、そんな中でもお祭り要素満点の出し物が若手教員によるパネルディスカッションでした。本学工学部の若手の先生たちが自分の子供時代から今に至るまでを語り、学生達、いえ後輩達の参考にしてもらおうという企画です。なにしろ大学院進学は人生の大きな転機ですからね。
さて、今回のパネルディスカッションでのお話。化学系の先生が実は中高時代にギターヒーローを目指して練習に熱中していたという意外なエピソードが。
この先生はいろいろあって現在は化学者となっている訳ですが、さて、これが今2020年代の中高生のお話だったらいったいどうなるのか、少し考えてしまいました。
ギターを手に入れて練習して、その辺は昔も今の違わない(と思います)。でも今だったら動画サイトに「ギターヒーロー」名義で弾いてみた動画を上げだしてそこそこの再生数を稼いだり、ひょんなことからバンドを組んで「だれかと演奏するのって、こんな楽しいんだ」って感動したり、SNSで「承認欲求モンスター」が生まれてしまったりしながら音楽の道にすんなり進んでいけたのではないかと思うのです。
これはこれで良い事。社会の進歩だとは思うのですが化学に携わる人間としてはちょっと複雑な思いもあるのです。
化学薬品に対する規制で化学実験の機会は増えるどころか減りつつあるのが大きな流れ。授業で化学に興味をもった学生さんでも本当の実験を経験する機会はそれほど多くはありません。その一方で音楽などの分野ではPCやネットの普及によって意欲と能力のある若者にとって選択の自由はどんどん広がっています。つまり、ギターヒーローへの道はどんどん平坦になってきたのに化学者への道は昔のままか、より険しくなっているのです。
人材の取り合いで化学は不利なのでは。このままでは化学に志してくれる人が減ってしまうのでは。これは長期的に考えると化学最大の問題なのかも知れませんね。
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