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2023年2月

2023.02.28

海は広くて大きいが...(江頭教授)

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 海の水にはいろいろな成分が含まれていますが、その中で圧倒的に多いのはもちろんCl-(550mmol/L)とNa+(470mmol/L)です。海水から水を蒸発させて食塩をつくる製塩業では、一緒に「にがり」がとれますが、これは海水に含まれるMg2+(53mmol/L)が主成分で、その濃度はNa+の10%程度です。また、イオウを含む硫酸イオンSO42-(28mmol/L)もCl-の5%程度が含まれています。

 また、Na+と性質の近いK+(10mmol/L)や、海中のプランクトンなどの骨格を形成するCa2+(10mmol/L)もNa+の2%程度含まれています。大気中のCO2が海水に溶けた場合、ほとんどはHCO3-イオン(2mmol/L)となるのですが、その割合はぐっと少なくてCl-の0.5%程度です。

 これら海水の主な成分は陸地の近くを除いて地球のすべての海でほぼ一定です。当たり前の様に思っていますが、考えてみればすごい話です。地球の規模の水が完全に混ざるにはどれほどの長い時間が必要だったのでしょうか。

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2023.02.27

「プロセス」という言葉(江頭教授)

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「ねぇ、チェダーチーズはどうしてチェダーチーズって言うの?」

「それはね、イギリスのチェダーという町でつくられていたチーズだからさ。」

「ふーん、じゃあゴーダチーズは?」

「ゴーダチーズはオランダのゴーダという街が発祥の地なんだよ。」

「なるほど!じゃあプロセスチーズは?」

「アメリカ西海岸のプロセス地方で…、ってそんなわけあるかい!」

 さて、件の「プロセスチーズ」英語では「processed cheese」というそうです。「処理されたチーズ」ということで、今回のお題はこの「プロセス(Process)」という言葉についてです。

 私が「プロセス」という言葉をはじめて知ったのは、やっぱり「プロセスチーズ」だったのではないかと思います。この場合の意味は「処理」ということで良いでしょう。そういえばコンピューターのCPU (Central Processing Unit)のPもプロセスで、これも「処理」という意味で通りそうです。

 一方、今の専門である化学工学でよく使う用法は「化学プロセス」ですが、これは「処理」というのとはちょっと違うような気がします。

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2023.02.24

「教育力強化委員会」のこと(江頭教授)

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 本学ではより良い授業が行われるように一人一人の教員の授業を複数の教員が参観し、その評価を確認し合う授業点検という制度があります。この授業点検についてはこのブログでも何回か触れています(その1その2その3その4, その5)。

 さて、今回ご紹介するのはこの授業点検のフォローアップについて。私自身も以前授業点検の対象となったとき、後になって学部長からの講評を頂いた記憶があります。(点検される授業の直後に行われる検討会とは別です。)じつはこの「学部長からの講評」の前段階として授業点検の結果を学長に報告する会議があって、それがこの「教育力強化委員会」なのです。

 教務部長が司会で、各学部の学部長がそれぞれの学部で実施した授業点検の結果を細かく説明してゆきます。それぞれの授業の特徴の説明や高評価・低評価の理由や背景など。それに学長自らが詳細の確認や方向性の指示などを出してゆきます。大学の「偉い人たち」の会議という感じで、なんか凄いなあ。

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2023.02.23

彼(ChatGPT)は昔の彼ならず(江頭教授)

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 ここ最近、ChatGPTを使っていろいろ試しています。今までの記事では1年生に出しているレポート課題をChatGPTに書かせてみることにトライしてみました。最初はおかしな内容のレポートが生成されたのですが、ChatGPTが日本語対応していないことを思い出して課題を英訳→ChatGPTに入力して英語のレポートを得る→レポートを和訳する(英訳、和訳にはDeepLを利用しました)、という手順でまっとうな解答を得ることができた、というのがこれまでの経緯です。

 さて、本日のお話。実は先ほど最初と同じ課題を(英訳せずに日本語のまま)ChatGPTに入れてみたのです。結果は以下の通り

ハーバー・ボッシュ法は、窒素と水素からアンモニアを合成する方法であり、20世紀初頭に実用化されました。ハーバー・ボッシュ法は、ドイツの化学者フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによって開発され、1909年に特許が取得されました。彼らは高圧と高温を使って、窒素と水素を反応させ、アンモニアを生成する方法を開発しました。この方法は、窒素が豊富な空気中でもアンモニアを生成することができ、肥料や爆薬などの重要な化学物質の生産に利用されています。

ハーバーとボッシュの業績を評価するのは難しいです。ハーバーは、窒素と水素を反応させる方法を発明し、それがアンモニアの工業的生産につながったことで非常に重要な貢献をしました。一方、ボッシュは、ハーバーの方法を工業的に実現するための高圧反応器の設計を行い、実用化につながったことで重要な貢献をしました。

どちらの業績も、ハーバー・ボッシュ法の実現に不可欠であり、彼らの協力によってこの重要な方法が開発されたと言えます。したがって、どちらが偉いかということは、個人的には評価することはできません。両者が密接に協力して、産業界に貢献する方法を開発したことが重要だと考えます。

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あれっ?アメリカの調理師、フレデリック・ハーバーはどこに行ったの?

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2023.02.22

小松川高校での出張実験(西尾教授)

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 2023年1月28日に,都立小松川高等学校で出張実験を行いました.小松川高校の藤田陽子先生(化学の先生)から化学実験講習会の依頼を頂き,「アルミサッシの技術を応用して、虹色のモルフォプレートを作製しよう」と題した実験を行いました.私が小松川高校でこの実験を行うのは4回目でしたが,今回も,参加した高校生が非常に活発に実験に取り組んで楽しんでいました.また,藤田先生が愛情を込めて学生を指導されている姿を見て,自分の教育姿勢を見直す良い機会となりました.

 実験講習会の様子を撮影させていただきましたので,見事な作品群を含めて紹介します.

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2023.02.21

ChatGPTとDeepLを使ってみた(江頭教授)

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 今巷で噂のChatGPT、前回の記事で私が1年生の授業で出している以下の課題のどう答えるのかを試した話しを紹介しました。

N2とH2からNH3を合成するプロセス、ハーバー・ボッシュ法が実用化された経緯(歴史)について調べて簡単にまとめたのち 、ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)、君自身の考えを述べよ。

結果はボッシュの方を「フレデリック・ハーバー」より評価するとのこと。いや、ちょっと待って。「フレデリック・ハーバー」って誰だよ。ハーバーボッシュ法のハーバーは「フリッツ・ハーバー」だよ。

 ということでChatGPTもまだまだ、と結論づけたのですが、よく考えたらChatGPTは日本語対応していないですよね。日本語での入力に普通に日本語が返ってくるので迂闊にも忘れていました。保証外の使い方をして文句を言うのはやっぱり良くない。ここは英語で質問しなくては。

 じゃあレポート課題を英訳してそれをChatGPTに入れて答えを日本語訳して…なんてやっていたら手間は増えるばかり。せっかくのAIの意味が半減です。ここは翻訳にもAIを使いましょう。

 まず以下が問題文の英訳。DeepLというAIを使って翻訳しています。DeepLというのは…ググってください、じゃなくてChatGPTに聞いてみよう。

 で、DeepLによる翻訳はこのように。

After researching and briefly summarizing the history of the practical application of the Haber-Bosch process, which is a process to synthesize NH3 from N2 and H2, give your own opinion on which of the two, Haber or Bosch, you value more (which is more significant).

一読して変なところはなさそう、ということでこれをChatGPTに入れた結果がこちら

The Haber-Bosch process is one of the most important industrial processes in the world, as it enables the large-scale production of ammonia (NH3), which is used as a fertilizer and as a feedstock for the production of many other chemicals.

Fritz Haber, a German chemist, developed the process in the early 20th century, and Carl Bosch, a German engineer, improved the process and made it commercially viable. The process involves reacting nitrogen gas (N2) with hydrogen gas (H2) at high temperature and pressure in the presence of an iron catalyst to produce ammonia.

Both Haber and Bosch played crucial roles in the development of the process, and their contributions cannot be separated. Haber discovered the chemical reaction that produces ammonia, while Bosch improved the reactor design and developed a high-pressure process that made the production of ammonia economically viable.

In my opinion, both Haber and Bosch were instrumental in the development of the Haber-Bosch process, and their contributions were equally significant. Without Haber's discovery of the chemical reaction that produces ammonia, there would have been no process to improve. Similarly, without Bosch's engineering expertise, the process would not have been commercially viable. Therefore, both scientists deserve credit for their contributions to the development of the Haber-Bosch process, and I value their contributions equally.

「フレデリック・ハーバー」はどこへやら。今度はまともな結果が出てきました。

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2023.02.20

ChatGPTを使ってみた(江頭教授)

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 前回前々回と「ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち」というレポートを学生に書かせている、というお話を紹介しました。レポートのお話なのでこれを機会に今巷で噂の「ChatGPT」にトライしてみた、というのが今回のお話。

 まず「ChatGPT」とは何でしょう。

「ChatGPT」とは、OpenAIが開発した自然言語処理技術を用いた大規模言語モデルの一つで、人工知能による自然言語の対話システムです。ChatGPTは、数億から数千億単語以上のデータを用いて学習し、文章の生成や文章に基づく応答が可能です。ChatGPTを利用することで、テキストチャットにおいて人間に近い自然な対話ができるようになります。

これ、実は件のChatGPTに「「ChatGPT」とは何ですか」と入れて帰ってきた結果なのです。これはなかなかのものですね。

 さて、肝心のレポート課題の本文はこちら

N2とH2からNH3を合成するプロセス、ハーバー・ボッシュ法が実用化された経緯(歴史)について調べて簡単にまとめたのち、ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)、君自身の考えを述べよ。

というものです。

 これを入れて返ってきた答えがこちら

ハーバー・ボッシュ法は、氮と水素からアンモニアを合成する工程を指します。この法則は、1908年にフレデリック・ハーバーとカール・ボッシュによって発明されました。

フレデリック・ハーバーは、アメリカ合衆国の調理家であり、アンモニアの合成法に関心を持ちました。彼は、氮と水素を反応させてアンモニアを合成することを発明しました。一方、カール・ボッシュは、ドイツの物理学者であり、この方法について研究を続けました。彼は、ハーバーの法則を改良し、より効率的かつ経済的な方法を確立しました。

ハーバーとボッシュの両方の業績は非常に重要ですが、ボッシュの業績はより高く評価されます。彼は、ハーバーの法則を改良し、より効率的かつ経済的な合成方法を確立しました。彼の貢献は、現在も世界中でアンモニアの合成に使用されています。

私自身の意見としては、両者の業績は同じ重要性があり、どちらも重要な役割を果たしています。ハーバーはアンモニアの合成法を発見しましたが、ボッシュはその改良と実用化に成功しました。両者の業績は、科学的進歩と産業の発展に大きな貢献をしました。

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いや、あの「フレデリック・ハーバー」って誰?

 

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2023.02.17

ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち? これが本当の7年目、そして8年目も(江頭教授)

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 これは本学科1年生向けの「サステイナブル化学概論」というオムニバス形式の授業での私のレポート課題、本当は「どちらの業績を評価するか」という質問です。私の授業では専門の化学工学の話をし、ついでにハーバーボッシュ法に触れた後に、毎年この質問をすることにしています。

 という記事を昨日オープンにしたのですが、すいません、これ実は2020年2月10日の記事「ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち? 5年目 」と全く同じ内容でした。実はこの記事、昔の記事を参考に新しいデータで書き換えよう、と思っていたのですが書きかけのまま忘れてしまっていたのです。それをそのまま昨日公開してしまった、という次第。

 別に間違ったことは書いていないから良いかな。いや、データ自体が違っている。これは訂正せねば。

 と、いうことで以下のデータが本当の7年目のデータ。今回は「どっちも偉いので選べません」とか「ハーバーやボッシュを推すのは素人。ミタッシュ一択でしょ」みたいな学生さんはいなくてきっちり二つに分かれています。例年と同じくハーバーがやや優勢ですね。

 また、この7年目の学生さん(要するに7期生か)のレポートで目立ったのはこのブログの記事を参照している、と書いている人がちらほらと居たことです。(そう、このブログには応用化学科の授業で役に立つことが時々書いてあるのですよ。)

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 さて、なんで昔書きかけた記事を今頃出してきたのか、というと実は今年の(8期生向けの)アンケートの結果をまとめたからです。

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2023.02.16

ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち? 7年目(江頭教授)

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 これは本学科1年生向けの「サステイナブル化学概論」というオムニバス形式の授業での私のレポート課題、本当は「どちらの業績を評価するか」という質問です。私の授業では専門の化学工学の話をし、ついでにハーバーボッシュ法に触れた後に、毎年この質問をすることにしています。

 ハーバーボッシュ法は空気に含まれる大量の窒素ガスを植物が利用できる形態に変化させる技術です。この方法でほぼ無尽蔵の窒素肥料を合成することが可能となり、70億を超える人口を支える現在の農業の礎となった偉大な発明です。

 ハーバーとボッシュ、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュ、の名前はこの空中窒素固定技術では必ず一緒に出てきます。しかし、その役割は大きく異なっていました。大ざっぱに言えば窒素、水素、アンモニアの平衡関係を解明し、高圧条件下で触媒を用い、比較的低温でアンモニアを合成する方法を考案したのがハーバーであり、高圧で水素を扱う場合に起きるいろいろな困難を一つ一つ解決して実用化したのがボッシュだ、という役割分担になります。

 さて、今回の結果はハーバーがかなり優勢でした。

 

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2023.02.15

卒論発表会と成績判定会議(江頭教授)

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 昨日の記事でも紹介した応用化学科の卒論発表会、一人の持ち時間は10分と短いのですが一つの会場で全員が発表するので結構な時間がかかります。初日(今回は2月13日)は文字どおり朝から晩まで続いたのですが、二日目(2月14日)はやや早めに終了。

そりゃあ、みんな打ち上げに行きたいですもんね。

いえいえ、そんな理由で早く終わる訳ではありません。学生さんはそうでも我々教員には別に評価の仕事があるのです。

 卒論発表会では学生の発表があって先生からの質疑がある。よくやったね、という暖かい質疑もあれば、何やってたんだい、という雰囲気のことも。これは学生諸君からも見えている評価の部分。でも時間の関係上、先生たちが全員質疑に参加できる訳もありません。ただ聞いているだけなのかというとそんなことはありません。実は全ての発表に全教員が何らかの形で評価を付けているのです。

 さて、発表会が終わると

学生諸君は荷物を持って速やかに退出してください。

というアナウンスが。我々教員は部屋に残って「判定会議」をはじめるのです。

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発表会が終わったので教室の様子も撮影OKに。でもちょっと寂しい風景ですね。

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2023.02.14

卒業論文発表会(江頭教授)

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 我々応用化学科の卒業論文発表会は本日(2022年2月13日)から2日間で開催。実は本学科が開設してから卒業論文発表会は今回で5回目。今年発表する学生諸君は5期生ということになります。もう何回も卒業生を送り出してきた様に思うのですがまだ5期生なんですね。

 今年の発表会は月曜日。今まで私の研究室では発表の前日のぎりぎりまで学生諸君と内容を詰めることになっていたのですが、今回はそうも行きませんでした。

 本学科の発表会では発表者の交代を迅速にするために一つのPCにプレゼンテーション用のファイルを集めています。今年度もそれは同じなのですが、例年発表前の休み時間に各自USBメモリを持ち寄ってノートPCにファイルを移していたものが、事前にネットに提出する形式になったのです。(感染症対策としてプレゼンテーション用のノートPCに不特定多数が触らない運用のため。)ネットへのアップロードの刻限が土曜日の17時となっていました。そこまでで少なくともスライドの内容は決まってしまう。なので、あとは発表練習を頑張ろう、ということに。

 例年、発表前日は慌ただしく過ごすのですが、今年は少し静かな日曜日が発表の前日となりました。

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発表会場の写真を…と思ったのですが発表会は撮影NGなのです。

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2023.02.13

大雪警報から一夜明けて…雪の八王子キャンパス(江頭教授)

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 先日の記事で八王子キャンパスに雪が降ったことを書きました。「はて、今日帰宅するころにはどのくらいの積雪となるのでしょうか。」などとのんきなことを書いていたのですが、その後も降雪の勢いは衰えることなく、早々に大雪警報が出る始末。本学でも学生さんにむけて

17時以降のサークル活動、クラブ活動、放課後開放は全て中止とします。

との通知が。そして教員にも

必ず17時までに退勤を徹底してください。

という指示が。

 ところがその17時頃には雪はみぞれに変わりやがて雨に。とはいえ地面には雪が残っていたので明日はどうなることやら。

 ということで、大雪警報から一夜明けた八王子キャンパスを写真に撮ってみました。これは2月12日の昼頃に撮影したものです。

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ちなみに前日、大雪警報当日、雪の降り始めの風景はこちら。

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2023.02.10

雪の八王子キャンパス(江頭教授)

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 毎年冬になると、雪が降らないかなあ、と期待すると同時に、雪が降ると困るなあ、と心配もしています。いや、雪そのものが困るのではないのです。雪が理由で交通機関が乱れるといろいろなトラブルが。特に授業期間中、それも学期末が近づくと一度の雪で授業が中止になるといろいろと予定が変わってしまいます。これが期末試験中ともなればもっと深刻に。

 幸い、昨年2022年の年末から今日まで、雪がほとんど降らない冬でした。いや、ありがたい。などと思っていたところ、今日の朝になってビックリ。結構な雪が降っていたのです。

 以下の写真をとったのは本日2月10日の9:00頃。建物の屋根や芝生には雪が積もって白くなっていますが、通路はまだら模様ですね。雪は今も降り続いていてやみそうにありません。はて、今日帰宅するころにはどのくらいの積雪となるのでしょうか。

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2023.02.09

地球上の光合成の最大値は?(江頭教授)

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 地球の生態系のエネルギー源はごく一部(熱水噴出孔の生態系など)を除いて太陽光のエネルギーによってまかなわれています。

 と、言うことで太陽光のエネルギーがすべて光合成に使われたとしたらどれだけの物質が作られるのか、が今回のお題です。

 以前、「地球の水の循環も太陽光線による水の蒸発散が原動力である」ということで、太陽光のエネルギーがすべて水の蒸発に使われたら、と仮定して水の蒸発速度の最大値を計算しました。今回はその光合成版ですね。

 さて、前提となる数値はまずは太陽定数。地球軌道に太陽からやってくる光のエネルギーで、その値は1367 W/m2

 昼も有れば夜もある、夏と冬、緯度によっても光の強さは変わりますが、その効果を考えると太陽定数の1/4が地表に降り注ぐ太陽光のエネルギーの平均値になります。これで341.75 W/m2です。(詳しくはこちらを参照してください。)

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2023.02.08

サステイナブルな日本の私(江頭教授)

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今日のタイトル、ツッコミ待ちです。

 「えっと、サステイナブルなのは日本?私?」

「サステイナブル工学」のサステイナブル(=Sustainable)は「持続可能な」と訳されていますが、何がサステイナブルで持続可能なのでしょうか。今回はこの問題について考えてみましょう。

 さて、以前も紹介した「成長の限界」で用いられるサステイナブルという用語、その対象は「人類社会」で、期間は「100年程度」です。まずは「サステイナブル工学」もこれを前提としていると考えて良いでしょう。「サステイナブル工学」は「人類社会」を「100年程度」持続させるための工学なのです。社会がサステイナブルであるためには人口の増加、一人当たりの生産物の増加、すなわち成長を野放図に認めることはできない、それが「成長の限界」の結論でした。

 では、「サステイナブル工学」がサステイナブルで無くても良い、と考えているものは何でしょうか。

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2023.02.07

湿度100%は「水中」じゃない(江頭教授)

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 私が子供の頃の話。テレビかラジオの天気予報なのでしょう。「明日の湿度は100%」という言葉が耳に入りました。「湿度」が空気中の水の量を表していることは分かるくらいの年齢だったのか、空気中に水が100%になるということは「水浸し」というか完全に「水中」にいることになるのじゃないか、なんて馬鹿な予報なんだ、と考えた記憶があります。

 まあ、馬鹿はおまえだ、ということで今回のお題は「湿度100%」がどんな状態か、という話をしましょう。

 天気予報などで使われている「湿度」という言葉、正確には「相対湿度」のことです。空気中の水分が飽和蒸気圧分の水分に比べてどのくらいの量、含まれているか。それをパーセントで表しています。ですから「湿度100%」という状態は空気中に飽和蒸気圧の水分が含まれている状態だ、ということです。

 なるほど、では「湿度100%」の空気中には実際にはどれくらいの(例えば何mg/Lの)水が含まれているのでしょうか?

 実はこの問い、この条件だけでは答えることができません。飽和蒸気圧は温度によって変わりますから温度を指定しないと空気中の水の量を求めることができません。

 水の飽和蒸気圧は以下に示すAntoineの式で求めることができます。

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2023.02.06

大学院修士の最終審査会を開催しました(江頭教授)

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 先週の金曜日(2023年2月3日)には東京工科大学工学部、じゃなかったサステイナブル工学専攻(工学部に対応します)の修士二年生の最終審査会が行われました。このブログを読んでいるあなたが高校生なら、大学のその先、大学院については漠然としたイメージしかないかも知れませんが、工学系では大学院は修士課程と博士課程に分かれていて通常修士が2年間、博士が3年間となっています。今日から開催される発表会のメインは修士二年生の発表ですから修士修了にむけての最終発表会となります。


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2023.02.03

光合成に使われる太陽エネルギーはどれくらい? 純一次生産から(江頭教授)

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 太陽から地球に到達する光のエネルギーは342W/m2。その約3割は反射され 約2割は水の蒸発に使われることになります。

 そして、こちらの記事では光合成に使われる割合(ただし陸上での値です)を計算し、約三百分の一程度という結果を得ました。

 今回は別の角度から、地球全体で光合成によって得られる、というか光合成によって植物が蓄えるエネルギーを計算してみましょう。植物が光合成をしても、植物自身が消費してしまう分のエネルギーは私たちは利用することはできません。(私たち自身が光合成ができれば話は別ですが…。)

 植物の光合成から植物自身の呼吸を引いた部分、要するに植物が成長してバイオマスが増える部分を一次生産と呼びます。(なお、呼吸を引く前の値は一次生産と呼びます。)この純一次生産についてのデータが、

 日本生態学会 編「生態学入門」(東京化学同人 2004)

という教科書の「地球の純一次生産速度と植物の現存量」(表9.1)という表にまとめられているのを見つけました。

 生態系によっていろいろな値をとるのですが、陸地の平均は 773 g/(m2・y)、 海洋の平均は 152 g/(m2・y)、そして全地球平均で 333 g/(m2・y)  となっています。

 前回と同様、この値が太陽エネルギーのどの程度に相当するのか、計算してみましょう。

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2023.02.02

便利なmoodleアクティビティ「個別ファイル送信」(江頭教授)

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 前回も触れた本学で利用している学習管理システム (LMS) のmoodle、資料の配付や小テストの実施と採点、レポートの提出など、授業で必要な機能はいろいろと揃っているのですがしばらく使っていて「これが足りない」と思ったことが一つ。「学生を指定して個人個人に情報を返すこと」ができないのです。いや、正確にはできないわけではないのですが、手間がかかる、というべきでしょうか。

 例えば教室で先生が「試験の答案を返すぞー」とか言って「○○君」と一人づつ呼び出して紙を手渡しするような状況を考えてみましょう。これは学習管理システムでも当然予想されている使い方。moodleであればテストの採点表をWEB上で表示して個別に書き込むことで学生一人一人にメッセージを送ることができます。紙の回答に手書きの場合は少し複雑で電子的に返却するならスキャンが必要に。電子化された答案ならWEB上の採点表にドラッグ&ドロップで本人宛に返却ができます。

 これで充分、大丈夫、問題ない。

 私もそう思っていたのですが実際に使っているとこれだけだと対応できない局面があるのです。

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2023.02.01

先進教育支援センターのこと(江頭教授)

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 本学では学習管理システム (LMS) としてmoodleというシステムを利用しています。moodleはオープンソースのソフトウエアですから、管理会社から理不尽に値上げを通告されてコンテンツの量を急遽削減せざるを得なくなる、といった心配はありません。でもオープンなのはソフトウエアのみ。サーバーを立てて管理運営するのは専門性の高い仕事で普通の教員が片手間でできることではありません。

 ということで、本学ではmoodleのためのハードウエアからソフトウエアまで一貫して管理してくれる部門として「先進教育支援センター」が設立されています。ここに所属する先生たち、センター長こそ教務部長の兼任ですがメンバーはセンター専属でmoodleをはじめとした教育支援のシステムや教育技法、教育効果の評価方法などに長けた先生たち。実際に教室でmoodle等を利用する際にもしっかりサポートしてくれます。

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moodleのサイトはこんな感じ。moodle自体もこのサイトも日本語対応しているのですね。

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