サステイナブルな日本の私(江頭教授)
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今日のタイトル、ツッコミ待ちです。
「えっと、サステイナブルなのは日本?私?」
「サステイナブル工学」のサステイナブル(=Sustainable)は「持続可能な」と訳されていますが、何がサステイナブルで持続可能なのでしょうか。今回はこの問題について考えてみましょう。
さて、以前も紹介した「成長の限界」で用いられるサステイナブルという用語、その対象は「人類社会」で、期間は「100年程度」です。まずは「サステイナブル工学」もこれを前提としていると考えて良いでしょう。「サステイナブル工学」は「人類社会」を「100年程度」持続させるための工学なのです。社会がサステイナブルであるためには人口の増加、一人当たりの生産物の増加、すなわち成長を野放図に認めることはできない、それが「成長の限界」の結論でした。
では、「サステイナブル工学」がサステイナブルで無くても良い、と考えているものは何でしょうか。
たくさんあるとは思いますが、一つ代表的なものを挙げるとすれば、それは「企業」ではないでしょうか。
企業はサステイナブルで無くても良い、なんてむごいもの言いだと思われるかも知れません。でも、「サステイナブル」であるための重要な条件は「成長しないこと」です。企業からすれば「サステイナブルであるために成長をあきらめろ」と言われるほうが、よっぽどむごいことです。
企業は成長しようとして競争し、競争に負けた企業は倒産します。勝ち残って大きくなった企業もいつかは新興企業に追い落とされて市場から消えてゆくでしょう。個々の企業では「我が社をサステイナブルに」と思うのですが、長い目で見ればこれを達成できる企業はありません。実は、この競争を通じた企業の入れ替わりは変化の原動力であり、全体としては成長しない社会に「発展」を与えてくれるものです。サステイナブル工学の目指す社会は成長しない社会ですが変化のない社会ではありません。サステイナブルな社会の発展は「個々の企業がサステイナブルであることを保証しないこと」によって保証されているのです。
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