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2023年5月

2023.05.31

「地域連携課題」の発表会が行われました(江頭教授)

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 今週の月曜日(2023年5月29日)2022年度、第一期の「地域連携課題」の学科内発表会が行われました。

 「地域連携課題」という言葉、聞いたことがない、という方も多いと思いますが、本学の授業の名称です。本学科では3年生前期の授業。つまりクォーター制(前期を1期、2期の2つに分ける制度)で実施されるコーオプ実習の際、大学に残っている学生に向けて行われている授業です。シラバスには授業の内容は、「学生が地域の関係者と連携しながら地域・社会的な課題等に取り組む」ものとあります。

 本学部は八王子キャンパスにありますから、この場合の「地域」は具体的には八王子市のことです。八王子市の「担当者等を講師に招いて地域が抱える各種の課題を学んだ後」に、「学生が自ら主体的に地域から課題を選定」し、その解決方法を提案する、それが地域連携課題の授業内容です。この授業はグループワークを基本とし、いろいろな施設や企業を訪れて課題の解決方法を調査・分析、結果を比較検討することで効果的で具体的な提案を目指します。

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2023.05.30

食べ物の「カロリー」が気になる?(江頭教授)

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 ハーバーとボッシュが空中窒素固定技術を完成したおかげで食料の生産量は一気に上昇。おかげで世界では80億人の人間が暮らすことができています。これぞ応用化学の最大の成果、と応用化学科の先生としては胸を張りたいところなのですが、同時に問題もあります。今の日本、世の中においしいものが溢れていてどうしても食べ過ぎに、そして太り過ぎになってしまうのです。

 正直なところ、私などはスーパーに行ったとき食料品がこれでもかという程の量並べられているのを見ると頭がクラクラすることがあります。私が小学生低学年のころ、お母さんの買い物に付いていったときのお店(八百屋さんや肉屋さん、魚屋さん)はもっとこぢんまりとしたものでしたが…。

 と言うわけで、多くの人々が食べ過ぎを反省してダイエットを志しているのが今の日本。そもそも体重を減らすには食べ物について「入るを量りて出ずるを為す」を実践すれば良いはず。で、その食べ物を「量る」基準がカロリーとなるわけです。

最近食べ物の「カロリー」が気になって、「カロリー」制限を始めました。

とかね。

 ここまでは世の中一般に通用するお話なのですが、応用化学の先生としては少し気になるところが。えっ、カロリーって言い方おかしくない?

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2023.05.29

化学プロセスと自動制御~まとめに代えて~(江頭教授)

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 触媒の熱処理をしようとした時の話です。どこのメーカーとは言いませんが温度調節器にヒーターをつないで加熱を始めたのですが………。

「あれっ?温度が一定にならないな。PIDが外れちゃってるな。」

「これはいけない、AT、ATっと。えーと、マニュアルはこれか。」

「あれATのやり方が書いていない。不親切だなー」

「まさか自分でPIDを設定しろってか?まじか!えーとPを適当に決めてIを大きくとってそれからDには手を出すな、だったかな」

「うぅ、マニュアルのどこにもPIDの設定の仕方が書いてないぞ。」

「もしかして…、いや、まさか…、これって…、こっ、これはON/OFF制御しかできない温調だったのか!なっ、なんだってー!!」

 これ、実は2016年のこの記事からの再録です。このシリーズを読んでくださった方ならおわかりでしょうが、書き方はともかく自動制御について最小限必要な知識は上記のようなものではないでしょうか。

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2023.05.26

水素自動車のバスを見つけた!(江頭教授)

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 我々応用化学科は東京工科大学の八王子キャンパスに所属しています。その八王子キャンパス近くの交差点(近所の人にはラーメン屋さんのある交差点といえば分かるでしょうか)で、随分前に真っ白なバスを見かけたことがあります。インパクトあるなぁ、と思って良くみると黒いゴチック調の文字で「Fuel Cell Bus」と書いてありました。

 Fuel Cellは燃料電池のこと。つまりあのバスは燃料電池で水素から発電した電気を使って走る水素自動車だったのですね。

 以前、そんな事があったのですが、先日また同じ交差点で水素自動車のバスを目撃しました。急いでとったのが以下の写真。(バスが交差点に入ってくる前から見ていたのですがスマホを出すのに手間取って右折したあとの後ろ姿しか取れませんでした。)

 今度はカラーリングされていて白無垢の時ほどのインパクトはありません。でも別の意味で個人的にはかなりのインパクトが…。

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2023.05.25

化学プロセスと自動制御~オートチューニング~(江頭教授)

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 化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説しています。前回まではPID制御について説明をしてきましたが、今回はPID制御のパラメータを具体的にどのように決めれば良いか、を解説しましょう。

 まず、原理的に最適なPID制御のパラメータをどのように決めれば良いのか考えてみましょう。「最適」がどのような意味であれ、パラメータを決めるためには制御が行われたときの実際の動作をある程度予測する必要があるでしょう。制御は制御装置だけでなく、制御される相手(今回のシリーズでは温度をコントロールされる電球やビーカーの水です)と一緒になって、その動作が行われています。制御について予想するには、制御される相手が加熱に対してどのように応答するのかを知る必要があるということになります。

 制御を受ける対象の動作についての情報を得て、仮定したPID制御のパラメータに基づいて制御がどのように行われるかを予測する。そんな作業をくり返して、最も望ましい制御が行われるパラメータを見つける、これが最適なPID制御のパラメータを決める方法となります。

 ではその方法を...、となると非常に込み入った説明が必要になりそうですが、実は最近では細かい知識がないひとでもPID制御のパラメータを自動的に決定できるようなソフトウェアが制御機器の中に入っています。

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上図は今回のシリーズで温度制御に使用した制御装置。オムロン社の温度調節計「サーマック E5CB」

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2023.05.24

江戸時代の平均寿命と平均余命(江頭教授)

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 こちらの記事で紹介したように日本人の平均寿命はいまや80歳を越えています。でも昔の平均寿命はもっと短かった。例えば人口歴史学者の鬼頭宏氏は「人口から読む日本の歴史 (講談社学術文庫)」のなかで

出生時平均余命が五十歳を越えたのは、第二次世界大戦後の1947年であった

と述べています。ここで言う「出生時平均余命」生まれてすぐの子供がそれから後何年生きると期待できるか、という数値。要するに平均年齢で、それが75年で30歳以上延びたのですね。

 逆に過去に遡ると

1600年頃の寿命はよくてもせいぜい30歳程度であったであろう。

とのことですから、その後の江戸時代の人々の寿命は今とは比較にならないほど短いということが分かります。

 半分の人が30歳までで死んでしまうとすれば年を取った人はほとんど居ないのか。なら落語に出てくる「ご隠居」さんも実は意外と若い設定なのかも。などと思ってしまいます。確かに落語の「ご隠居」にはやや軽率な言動がみられがちで、意外と若い説にも分がありそう。でも、それはそれとして平均寿命が30歳程度であった江戸時代の30歳と平均寿命が81歳(女性なら87歳)である今の81歳とでは大きな違いがあるのです。

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2023.05.23

化学プロセスと自動制御~PID制御~(江頭教授)

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 化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説しています。前回まででPI制御を導入することによって加熱する対象を目標温度で一定に制御することができる、ということが示されました。これで一応目標は達成したのですが、今回は、より早く目標値に到達する方法について考えてみましょう。

 PI制御を行う制御装置は現在から過去に至る「目標値と現在値の差」のデータを与えられながら制御対象の出力を決めています。制御の質を向上させるためには二つの方法が考えられます。一つはもっと他の要素を導入すること、もう一つは制御のパラメータを適切に設定することです。

 まず一つ目。PI制御では「目標値と現在値の差」そのもの(P制御)と、「目標値と現在値の差の積分」(I制御)に比例してヒーターへの出力が決められているのならば、当然(かどうかは分かりませんが)もう一つの考慮すべき対象は「目標値と現在値の差」の「微分」となるでしょう。これがD制御で三つ併せてPID制御、となるわけです。

整理すると、

  • その時間の「目標値と現在値の差」に比例した電力を供給する制御を比例制御(P制御)
  • その時間までの「目標値と現在値の差の積分」に比例した電力を供給する制御を積分制御(I制御)
  • その時間の「目標値と現在値の差の微分(変化率)」に比例した電力を供給する制御を微分制御(D制御)

と言うのです。この三つを組み合わせたものがPID制御で、三つの制御の比例定数を巧く調整することでよりよい制御が可能なはずです。少なくともPI制御で目標値で安定的な制御は実現できるのですから、D制御を加えることでより自由度が広がれば「可能性として」PID制御の方がよりよい制御ができるはずです。

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2023.05.22

平均寿命と平均余命(江頭教授)

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 先週の記事で「日本人男性の平均寿命は81.4歳(女性は87.45歳)だ」というデータを引いて60歳の自分は「あと20年は生きられそう」と書いたのですが、今回のこの内容についての訂正です。

 私が書いた「あと20年」の根拠は単純に

(平均寿命)ー(自分の年齢)

という計算なのですが、これには問題がある。何しろいまちょうど平均寿命と同じ81.4歳の人がこの式で計算したら数値は0、いやそんなのおかしいですよね。もっと言うと、平均寿命はあくまでも平均なのですがから平均寿命以上の年齢の人も居るはず。そんな人が上の計算式を使ったらマイナスの値がでて「お前はもう死んでいる」ということになってしまいます。

 平均寿命まで生きた人がいると同時に、不幸にしてそれ以前に亡くなった人もいるはず。その人達の分は平均年齢を下げる方向に作用するのですから生き残った人はその分平均寿命より長生きしないと「平均」の定義に反してしまいます。つまり平均寿命まで生きた人にはその後も生きていると期待できる年数、つまり平均「余命」があるわけですね。これは別に平均寿命まで生きた人だけに言えることではありません。どんな年齢の人にも期待される平均余命が計算できるはずです。

 実は平均余命の計算は厚生労働省が計算して公表しています。実際のデータは以下のようになっています。

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2023.05.19

化学プロセスと自動制御~PI制御~(江頭教授)

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 化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説しています。前回はON/OFF制御では一定にならない温度制御の問題点を改善するためにP制御(比例制御)による制御を行いましたが、温度は目標値に到達することができませんでした。今回は温度を目標値に到達させる方法について解説しましょう。

 P制御ではオフセットが残って目標の温度に到達できない、この原因は前回も解説したように温度が目標値に達したとき「目標値と現在値の差」がゼロになってしまう、加熱速度もそれに比例してゼロになってしまうからです。もっと正確に言えば「目標値と現在値の差」が小さくなると加熱速度も小さくなってしまうので、結局目標値に到達できないのです。

 この問題を解決するためには「目標値と現在値の差」以外のものを加熱速度の制御に加える必要があります。何が適当でしょうか?

 瞬間瞬間の「目標値と現在値の差」に注目しているとこの問いには答えられないでしょう。ある瞬間での「目標値と現在値の差」がゼロになることこそが制御の目標ですが、これは制御の目標が達成された瞬間には制御のための情報が失われてしまう、ということでもあるのです。ですから制御装置は「目標値と現在値の差」の時間変化を記憶しておく必要があります。

 現在の制御装置では単純に「目標値と現在値の差」の積分値をデータとして保存し、その積分値に応じて加熱速度変化させる方法がとられています。積分値に応じた制御、ということでこれをI(Integral = 積分)制御と呼んでいます。通常I制御は単独で用いられることはなく、比例制御と組み合わせたPI制御として用いられています。

 さて、前回同様、このPI制御を実験してみましょう。電球をヒーター代わりにしている点は同じですが前回からはビーカーの中の水を加熱してその温度を制御する実験を行っています。(今回も動画の速度は10倍に加速しています。)

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2023.05.18

「老後」か「第二の人生」か(江頭教授)

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 このブログを読んでいるあなたがもし高校生なら「自分が後何年いきられるのか」などあまり深刻に考えたことはないかも知れません。私はもう60歳になって「おじさん」から「おじいさん」に進化しつつあるので自分の寿命について考える様になってきました。

 ということで厚生労働省が出している日本人の平均寿命のグラフをみてみました。日本人男性の平均寿命は81.4歳(女性は87.45歳)だとか。そうか、あと20年は生きられそうですね。

 いや、このグラフ、凄いですよね。日本人の寿命がこの半世紀で20年ほど伸びたことは驚くべき改善。医療技術の進歩、健康意識の向上、社会制度の整備などがこの成果に寄与したのでしょう。でも、その根本には社会が豊かになったこと、栄養のある食料を十分に食べることができる環境が整ったことがあるのです。工学部の人間としてはどうしても「工学の偉大な成果!」と誇りたくなるところです。

 

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2023.05.17

化学プロセスと自動制御~P制御~(江頭教授)

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 化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説しています。前回は電球をヒーターに見立てて簡単なフィードバック制御系を作り、ON/OFF制御によって温度制御を行ってみました。

 ON/OFF制御では温度が暴走する(過熱する)ことを防ぐことには有効ですが温度を一定に制御するまでにはいきませんでした。今回はよりよい制御を行う方法について考えてみましょう。

 温度が目標値の上下でON/OFFするだけではOFFにしてもすぐに温度が下がるわけではない。ONにしてもすぐに温度が上がり始めるわけではない。この遅れが温度の上下の原因なのですから、温度が目標値に近づいたら加熱を弱めるのはどうでしょうか。

 この考えに基づいた制御が比例制御(P制御)という方法です。目標温度と対象の実際の温度の差の大きさに比例して加熱量を制御する、「比例して」というところをとって比例制御と呼ぶわけです。

 早速、そのP制御を行ったのが以下の動画です。

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2023.05.16

Bard(GoogleのAI)の意外な一面(江頭教授)

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 前の記事(「ChatGPTとBard、どちらが偉いか」)ではGoogleの新しい対話型AI、Bardに本学応用化学科1年生に向けた課題

N2とH2からNH3を合成するプロセス、ハーバー・ボッシュ法が実用化された経緯(歴史)について調べて簡単にまとめたのち、ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)、君自身の考えを述べよ。

を出して「テキトーなことを言って」「問いただされるとすぐに折れて」「簡単に投げ出す」ところがChatGPTとよく似ている、と評価しました。この記事ではバーバー・ボッシュ法のハーバー(フリッツ・ハーバーです)のことを「フリードリヒ・カール・ハーバー」と間違えている点(ChatGPTは「フレデリック・ハーバー」と間違えている)について注目したのですが、今回は解答の内容について注目してみました。ポイントは「ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)」というところですが、Bardの答えは

ハーバーとボッシュの両方がアンモニア合成法の開発に重要な貢献をしたことは間違いありません。しかし、アンモニア合成法を商業的に実用化したボッシュの業績は、より大きな影響を与えたと私は思います。ボッシュの業績は、食糧生産量の増加に貢献し、世界中の人々の生活を改善するのに役立ちました。

となっていて、明白にボッシュを評価すると述べている。それも「…私は思います。」とまで書いています。

 このレポート課題は本人の意見を問うもので「君自身の考えを述べよ」とまで書かれているのですから、このように立場を決めて明確な答えをだすのが正しい。でもAIには(AIでなくてもレポートに解答する本人以外の人間にも)本人がどちらが偉いと考えるかを決めることはできません。

 ChatGPTではこの辺を曖昧にして「どちらも偉い」という結論しか出していませんでした。しかしBardは明確にボッシュを選んで解答している。この点については(「フリードリヒ・カール・ハーバー」は別として)なかなか評価に値するのではないでしょうか。

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2023.05.15

化学プロセスと自動制御~ON/OFF制御~(江頭教授)

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 化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説しています。前回までで電球をヒーターに見立てて簡単なフィードバック制御系を作ってみました。今回は実際に温度制御を行ってみましょう。

 一番簡単な制御の方法は「ON/OFF制御」です。単純な方法なので、昔から(デジタルな製品ができる前から)アナログな方法で実用化されていました。化学の実験で良く用いられるオイルバス(油を入れてフラスコなどを加熱するヒーター一体型の鍋のようなものです)の温度調節でも、昔からこの方法が用いられています。

 オイルバスのヒーターにずっと通電し続けるとどんどん温度が上昇して思い通りの加熱ができませんし、なにより加熱しすぎた油は危険です。そこで、温度が上がりすぎないようにヒーターに給電するケーブルの途中に「バイメタル」の接点が入れてあります。

 「バイメタル」は別にロック音楽の一種ではありません。二種類の(熱膨張率の異なる)金属板を張り合わせたものです。温度が上がると膨張率の差からバイメタルは変形して「反る」ことになります。バイメタルは電気を通し、温度によって反る角度が違うので接点の位置を適当に設定しておくと温度が低い間は電気が流れるが、温度が上がると電気が切れて、温度が下がるとまた電流が流れる、という動作をさせることができます。

 この、温度が低い間は電気が流れる(ON)が、温度が上がると電気が切れてる温度が上がると電気が切れて(OFF)、温度が下がる、という動作による制御がON/OFFです。

 前回も紹介した、オープンキャンパス用のフィードバック制御の装置でON/OFF制御を行ってみた動画を以下に示します。(画像をクリックしてください。)

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2023.05.12

ChatGPTとBard、どちらが偉いか(江頭教授)

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 最近話題のChatGPTのおかげでGoogleの検索はすっかり古びてしまいました。(いや、随分前から空気になってましたが。)ということでGoogleも新たにAIを公開。その名もBard。ということで、今回はChatGPTとBardを比較してみたいと思います。以前、ChatGPTに試してみたレポートの課題

N2とH2からNH3を合成するプロセス、ハーバー・ボッシュ法が実用化された経緯(歴史)について調べて簡単にまとめたのち、ハーバーと ボッシュ、どちらの業績を評価するか(どちらが偉いか)、君自身の考えを述べよ。

を、今度はBardに入れてみると…

N2とH2からNH3を合成するプロセスは、ハーバー・ボッシュ法として知られています。これは、窒素と水素を高温・高圧下で反応させてアンモニアを合成するプロセスです。このプロセスは1908年にドイツの化学者、フリードリヒ・カール・ハーバーによって発明されました。しかし、このプロセスは商業的に実用化するには高価で効率が悪かった。

1913年、ドイツのエンジニア、カール・ボッシュはハーバーの理論を基に、アンモニア合成法の改良に成功しました。ボッシュは、鉄触媒の開発と反応器の改良により、アンモニア合成法を商業的に実用化しました。

ハーバー・ボッシュ法は、化学肥料の製造に革命をもたらしました。アンモニアは、植物の成長に不可欠な窒素の供給源です。ハーバー・ボッシュ法は、アンモニアの製造コストを大幅に削減し、食糧生産量の増加に貢献しました。

ハーバーとボッシュの両方がアンモニア合成法の開発に重要な貢献をしたことは間違いありません。しかし、アンモニア合成法を商業的に実用化したボッシュの業績は、より大きな影響を与えたと私は思います。ボッシュの業績は、食糧生産量の増加に貢献し、世界中の人々の生活を改善するのに役立ちました。

私の意見は主観的なものであり、他の人には異なる意見があるかもしれません。ただし、ハーバーとボッシュの両方が偉大な化学者であり、アンモニア合成法の開発は人類の歴史に大きな影響を与えたことは間違いありません。

そういえばChatGPTは「フレデリック・ハーバー」なる謎のアメリカ人を生成したのですが、何とBardは「フリードリヒ・カール・ハーバー」を召喚してくれました。あの、「フリッツ・ハーバー」ってそんなに言いにくいのでしょうか。

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2023.05.11

化学プロセスと自動制御~フィードバック制御~(江頭教授)

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 化学工場ではいろいろな機械を使って化学反応を起こし、大量の材料を合成しています。

 たとえば化学反応を起こすための反応器は通常、反応が進むような温度まで加熱されています。では、その温度はどのように調整されているのでしょうか。自動制御によって一定値に保たれている、というのがこれまでの説明ですが、もう少し具体的に見てみましょう。

 反応器を加熱するには電熱線などのヒーターが用いられています。その電熱線だけで望ましい温度を達成する、これは理屈の上だけなら可能です。(つまり、現実的には不可能、ということです。)

 例えば前回の様に「電球を40℃にする」という目標を設定したとき、ちょうどよいワット数の電球をもってくれば単純につけっぱなしにするだけで、成行きのままで目的の40℃を達成できるはずです。問題は「ちょうどよいワット数」がいくらかが分からないこと、周囲の状況によって変わること、そのワット数の電球を準備することが難しいことです。つまり、現実的には成行きで目標値を維持することは無理、となります。

 成行きのままでは目的の値からずれてしまう。これを目的の値に近づけるためには、成り行きでどんな温度になったかを知り、その値と目的地との違いを小さくするように電球に働きかける存在が必要です。ヒーターから見れば、ヒーター自身の(加熱という)動作の結果に対して、修正するための情報(OFFするタイミング)を提供する(フィードバックする)存在が必要なのです。

 前回の例では人間がその役割を果たしていました。自動制御ではその役割を機械が代行します。これが制御装置で、ヒーターは制御装置によるフィードバックを受けて目的の温度を達成するのです。

 この様に機械の動作結果を測定し、適切な操作をフィードバックする制御装置による制御を「フィードバック制御」と呼びます。

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2023.05.10

(マスクを)着けるべきか着けざるべきか、それが問題だ(江頭教授)

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 連休明けの5月8日から新型コロナウイルス感染症(もはや「新型」でもないか)の感染症法上の位置付けが変わりました。具体的に言うと政府による一律の対策要請がなくなって、各自の判断で対策を考える、ということに。手洗いや手指消毒はともかく、マスクを着けるべきか着けざるべきか、これは各自が判断に迷うところではないでしょうか。

 さあ、どうしようか。着けても着けなくてもどっちでも良いかなあ、などと気楽に構えていることができるのも私が大学の教授で教授室という個室が与えられているからでしょう。人が訪ねてくるとき以外、そもそもマスクを着けていなかったのです。

 ではマスクを着けているのはどんなときか。まずは行き帰りの途中。電車やバスに乗っているときは特に。そして研究室で学生さんと会うとき、会議にでるとき、そして授業のとき。要するに人に会うときですね。

 さて人に会うときにマスクは必要でしょうか。これは自分の考えだけでなく相手の事も考えないといけません。そして相手はどう感じているか分かりませんから安全側をとってまずはマスクONでしょうか。相手がマスクOFFならこちらもOFFでも良いかも。

 もっとも相手が一人とは限りません。授業のとき、それにスクールバスなどの交通機関を利用するときは当面はマスクONでしょうね。

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2023.05.09

化学プロセスと自動制御~手動で制御にチャレンジ~(江頭教授)

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 前回、化学プロセスにおける自動制御の役割について説明しました。化学工場で行われている物質の合成は機械を使って行われていますが、その運用は自動制御を中心に行われている。このため、非常に大きなプラントであっても運転要員の人数は意外と少ない、という話でした。

 さて、今回は以前オープンキャンパスで行っていた自動制御のデモ実験のなかの「手動での制御」について紹介しましょう。簡単な制御を手作業でやってもらって、制御の難しさについて知ってもらおう、という企画です。

 ヒーターによる温度制御を実演しますが、今回、小型の白熱灯をヒーターとして用いました。白熱灯はすぐに温度が上昇するのでヒーターの代用となりますし、オンオフが見た目ですぐに分かるのもメリットです。白熱灯の表面に温度を測る熱電対を接触させ、スイッチでオンオフができるようにセットアップ。光がまぶしすぎるので紙で覆いをつくって準備完了です。

 あまり熱いと危ないので40℃を目標値として手動での温度制御にチャレンジしてもらいました。スイッチオンで白熱灯が点灯し、温度は上昇します。オフにすると温度が下がります。オンオフのタイミングをうまく合わせて温度を目標の40℃に合わせます。

 目標時間は1分ですが、これがなかなか難しいのです。

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2023.05.08

回復しつつある日常(江頭教授)

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 ここで「回復」と言っているのはコロナ禍からの回復のことです。厚生労働省のサイトにもある様に本日(2023/05/08)から「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に」なります。大学を教員の身としては「政府として一律に日常における基本的感染対策を求めることはない」というところがポイント。「求めることはない」という表現ですから、対策しなくても大丈夫、というお墨付きが出た訳ではありません。各自責任をもって判断を、ということなのでしょう。とはいえ、これがコロナ禍の一つの節目、区切りであることは間違いないですよね。

 さて、本学のこれまでのコロナ対策を振り返ってみると、やはり2020年4月からのキャンパス閉鎖が一番大きな影響のあるできごとでした。オンラインでの授業実施をはじめとして2020年度はコロナ対応の一年だったと思います。前期中頃までキャンパス閉鎖が続き、はじめてキャンパスでの授業を再開したとき、特に新入生がはじめてキャンパスに来ることができた日は(少しオーバーですが)感無量でした。

 そして翌2021年度。いま思い返してみると4月の学期始めには「コロナ禍も落ち着いてやっと今までのキャンパスに戻れる」と思っていたものです。それがゴールデンウィーク明けには再びオンライン授業中心の運営に戻らざるを得なくなる、ということに。正直、2020年度より2021年度の方が学生さん達にも我々教員にも負担(いや、負担感か)が大きな1年だったかも知れません。

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2023.05.05

化学プロセスと自動制御~はじめに~(江頭教授)

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 化学工場では私たちの生活に役立っている化学物質が日々大量に合成されています。生産のための合成、その際の化学反応そのものは化学の実験室で行われているものと同じですが、方法は実験室での作業とはかなり違う、というか似ても似つかないものです。特にスケールは化学実験で扱われるミリリットル~リットルレベルの量とくらべてずっと大量です。(大量といってもかなり幅がありますが。)

 さて、研究室と化学工場で行われていることの大きな違い、もう一つの特徴は化学工場での操作がほとんど機械で行われている、ということです。研究室では手作業が中心ですが化学工場でこれをやったら大変、というか無理ですね。小さくてもm3スケールの薬品を扱うとなるとどうしても機械の力が必要です。

 人型巨大ロボットに乗り込んで超巨大フラスコをゆさゆさ……、なんてシュールな絵づらではなくて、タンクやパイプをベースにした特製の装置を使用して、混合や加熱を行い、それによって化学反応が起こる様になっています。

 ではその巨大な化学工場はどの様に運転されているのでしょうか。流量の調整、温度の調整、場合によっては圧力の調整など、いろいろな機械と同様、自動制御が活用されています。このため化学工場はその巨大さに比較して意外と少ない人数で運転されています。

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2023.05.04

サステイナブル化学としての「ハーバーボッシュ法」(江頭教授)

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 ハーバーボッシュ法は大気中の窒素から窒素肥料の原料となるアンモニアを合成する工業的なプロセスです。高圧力の条件でアンモニアの生成を実験室レベルで実現したのがハーバー、ボッシュはその手法を工場レベルで実現したのでした。

 さて、これはもう120年くらい前のお話なのでハーバーもボッシュも「私はサステイナブル化学の研究をしています」という意識は無かったと思います。でも現在から振り返って見ると当時の状況に対応した「サステイナブル化学」に見える、というのが今回のお話の趣旨です。

 まず「サステイナブル化学」についての私の考えを述べておきましょう。例えばこちらの記事に書いた内容ですが、サステイナブル化学を含むサステイナブル工学の成果物は、別に一般の工学的な成果物と異なる自然の原理に従っている、ということはあり得ません。そうではなくてサステイナブル工学は工学的な研究や開発の過程で単に「人々の欲するものをつくる」ことのみを目指すのではなく、同時に「社会の持続可能性」を高める形でそれを実現することを目指すものです。

 さて、ハーバーボッシュ法に戻って、そもそもなぜハーバーが窒素からアンモニアを合成する研究を始めたのかを見ていきましょう。前回紹介したハーバーの伝記「毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者」には以下の様に記されています。

 一八九八年にイギリスのブリストルで開かれた大英学術協会の集会で、著名な物理学者であるウィリアム・クルックス卿は、いまやマルサスの原理の通りに人口爆発が起こっており、窒素肥料の不足のために食糧危機が目の前に迫りつつあると警告を発した。そして解決法として大気の窒素を植物が利用しやすいアンモニア、硝酸に変えることを提案し、その研究の緊急性を強調した。

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2023.05.03

書評 宮田 親平著「毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者」(江頭教授)

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 いろいろな場で学生さんによく質問するお題です。

「人類最大の発明は何?」

いろいろな答えが返ってきますが、こと化学に関する発明で私が人類最大の発明だと思うものはハーバーとボッシュによる「空中窒素固定技術」です。現在、地球に80億人以上の人間が暮らしている、ということそれ自体がハーバーボッシュによるこの発明によって大量の窒素肥料が合成され、充分な量の食料が生産されたことによっている、数十億人の命を支えているこの技術こそ、最大の発明だ、と考えるている訳です。

 さて、この偉大な発明をおこなった人物、フリッツ・ハーバーについて知りたいと思って見つけたのが本書です。タイトルにあるように「毒ガス開発」に力点が置かれていて、かなり意外な感じがします。

 もちろん、空中窒素固定技術に関する記述もあり、興味深い内容でした。特に、空中窒素固定技術が硝酸の作成から爆薬の製造にも利用できたことから、この発明が実は軍事技術として開発されたのではないか、という説に関しては、当時の科学技術と軍事との関係に基づいて明確に否定されていた点は印象的です。

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2023.05.02

いや、自信がないときはちゃんと「自信がない」と言ってくださいね(江頭教授)

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 そうそう、ちゃんと言ってくれたらわからないところは教えてあげますよ。知ったかぶりしてたまたま答えが合っていたとしても、それは実力にはなりませんから。君たち学生の目標は実力をつけることです。設問に正解する、しないはその実力を測る判断材料に過ぎないのですから。

いやそれはそれで正論なのですが、今回のタイトル、別に学生さんに対して言っているのではありません。最近なにかと話題の生成型AI、ChatGPTに言っているのです。

 ChatGPTの問題として、どんな質問にも簡単に答えが得られてしまって宿題やレポートが無意味になってしまう、という教育上の課題が挙げられています。それと同じような問題としてChatGPTから得られる回答が全く正しくない場合があり、利用者がそれを安易に信じてしまうのではないか、という指摘もあります。

 例えば、先日の記事で紹介した藤子・F・不二雄氏の短編漫画「定年退食」について。定年退職の「職」を「食」に入れ替えて深刻な食糧危機を描いたディストピア小説なのに、ChatGPTは「ハートウォーミングな漫画作品」と言ってくる始末。おそらく勝手に「定年退食」を「定年退職」のタイプミスだと決めつけているのでしょう。

 このように自分が正解を知っている問題であれば判断が下せるのですが、これに頼ってしまってはいつ大きな間違いをしでかすかわかりません。

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2023.05.01

東京工科大学のゴールデンウィーク(江頭教授)

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 えっ、今日から?

 確かに気分的には先週の土曜日、4月29日からゴールデンウィークですよね。たしかに4月29日は昭和の日で国民の祝日なのですがたまたま土曜日と重なっています。本学は週休2日制なので土曜日はもともとお休みなので計算外ですね。

 では本日5月1日はなんでお休みなのか。実は今日は本学の創立記念日で休業日となっているのです。

 さらにゴールデンウィークの休日として5月3日の憲法記念日、4日のみどりの日、そして5日のこどもの日と休みがありますが、生憎5月2日だけは何の日でもありません。これはいくら何でも、ということで本学は5月2日をお休みにしています。

 さすがに理由が見当たらないのか、この5月2日は「臨時休業日」とされています。

 さて皆さん、これをどう思いますか?

 「休みがたくさんでラッキー」と思いましたか。それとも「授業料を払っているからにはちゃんと授業をしてくれなくては!」と思ったでしょうか。

 後者の人、ご安心を。実は本学の学年歴(学年歴というのは授業専用のカレンダー、といったものです。)では臨時休業日で平日を休日にしている一方で、 祝日授業開講といって祝日に授業をする場合もあるのです。たとえば7月17日の海の日、世間は休日ですが大学では平常通り、月曜日の授業を行います。

 通常のカレンダーと異なる学年歴を用いるのはハッピーマンデー制度の影響です。

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