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化学プロセスと自動制御~ON/OFF制御~(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説しています。前回までで電球をヒーターに見立てて簡単なフィードバック制御系を作ってみました。今回は実際に温度制御を行ってみましょう。

 一番簡単な制御の方法は「ON/OFF制御」です。単純な方法なので、昔から(デジタルな製品ができる前から)アナログな方法で実用化されていました。化学の実験で良く用いられるオイルバス(油を入れてフラスコなどを加熱するヒーター一体型の鍋のようなものです)の温度調節でも、昔からこの方法が用いられています。

 オイルバスのヒーターにずっと通電し続けるとどんどん温度が上昇して思い通りの加熱ができませんし、なにより加熱しすぎた油は危険です。そこで、温度が上がりすぎないようにヒーターに給電するケーブルの途中に「バイメタル」の接点が入れてあります。

 「バイメタル」は別にロック音楽の一種ではありません。二種類の(熱膨張率の異なる)金属板を張り合わせたものです。温度が上がると膨張率の差からバイメタルは変形して「反る」ことになります。バイメタルは電気を通し、温度によって反る角度が違うので接点の位置を適当に設定しておくと温度が低い間は電気が流れるが、温度が上がると電気が切れて、温度が下がるとまた電流が流れる、という動作をさせることができます。

 この、温度が低い間は電気が流れる(ON)が、温度が上がると電気が切れてる温度が上がると電気が切れて(OFF)、温度が下がる、という動作による制御がON/OFFです。

 前回も紹介した、オープンキャンパス用のフィードバック制御の装置でON/OFF制御を行ってみた動画を以下に示します。(画像をクリックしてください。)

Photo_3

 設定温度は40℃。40℃を切って39℃になると電球が点きますが、温度が上昇し始めて40℃を超えると電球は消えます。ここまでは思いどうおりの制御なのですが、そのあとがいけない。電球が消えても温度の上昇はすぐには止まりません。だんだん上がって44℃程度になったあと、ゆっくりと温度がさがり、そして40℃を切って39℃に。ここでまた電球が点きます。

 上の動画は約6倍に加速して表示していますが、温度の上下が繰り返されていて40℃で一定にはなっていないことが分かります。

 このON/OFF制御では温度の暴走(非常に高い値になる)を防ぐことはできますが、温度は必ずしも一定にならず、通常、目標値の上下を揺れ動くことになります。

 温度を一定に制御するためにはより巧みな制御が必要だ、ということが分かります。どのような制御を行うか、その具体的な内容については次回に説明することとしましょう。

江頭 靖幸

 

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