江戸時代の平均寿命と平均余命(江頭教授)
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こちらの記事で紹介したように日本人の平均寿命はいまや80歳を越えています。でも昔の平均寿命はもっと短かった。例えば人口歴史学者の鬼頭宏氏は「人口から読む日本の歴史 (講談社学術文庫)」のなかで
出生時平均余命が五十歳を越えたのは、第二次世界大戦後の1947年であった
と述べています。ここで言う「出生時平均余命」生まれてすぐの子供がそれから後何年生きると期待できるか、という数値。要するに平均年齢で、それが75年で30歳以上延びたのですね。
逆に過去に遡ると
1600年頃の寿命はよくてもせいぜい30歳程度であったであろう。
とのことですから、その後の江戸時代の人々の寿命は今とは比較にならないほど短いということが分かります。
半分の人が30歳までで死んでしまうとすれば年を取った人はほとんど居ないのか。なら落語に出てくる「ご隠居」さんも実は意外と若い設定なのかも。などと思ってしまいます。確かに落語の「ご隠居」にはやや軽率な言動がみられがちで、意外と若い説にも分がありそう。でも、それはそれとして平均寿命が30歳程度であった江戸時代の30歳と平均寿命が81歳(女性なら87歳)である今の81歳とでは大きな違いがあるのです。
先の記事で現代の平均余命のデータを見ながら「今年20歳の学生さんはどうでしょう。平均余命は61.8年。平均寿命から単純に現在の年齢を引き算した結果と大して変わりません。」と書きました。でも「人口から読む日本の歴史」で紹介されている信濃国湯舟沢という村の平均余命のデータでは21歳の人の平均余命は江戸時代前期男性では37.7年、後期で39.5年となっています。
平均寿命が30歳程度なら21歳の人の余命は9歳程度なのでは…
と思ってしまいますが、実際の平均余命はずっと長い。江戸時代の21歳の村人は60歳程度まで生きると期待されるのです。これなら「ご隠居」と呼ばれるのに相応しいお年寄りもそれなりにいたと期待してよさそうですね。
とはいえこのデータ、よく考えてみると怖い話です。
「平均寿命」と「年齢+その年齢の平均余命」に大きな違いがある、というのはその年齢までにそれなりの人数の人が亡くなっているということを意味しています。21歳ですでにそうなっているだけではなく、実は5歳でそうなっている、それが江戸時代の人口構成なのです。この時代、子供が生まれても必ずしも育つとは限らない、と言う厳しい生活状況がありました。多くの赤ん坊が5歳を迎えることなくなくなっていた、という今とは全く異なる状況のために平均寿命がぐっと低く算出されているのですね。
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