化学プロセスと自動制御~まとめに代えて~(江頭教授)
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触媒の熱処理をしようとした時の話です。どこのメーカーとは言いませんが温度調節器にヒーターをつないで加熱を始めたのですが………。
「あれっ?温度が一定にならないな。PIDが外れちゃってるな。」
「これはいけない、AT、ATっと。えーと、マニュアルはこれか。」
「あれATのやり方が書いていない。不親切だなー」
「まさか自分でPIDを設定しろってか?まじか!えーとPを適当に決めてIを大きくとってそれからDには手を出すな、だったかな」
「うぅ、マニュアルのどこにもPIDの設定の仕方が書いてないぞ。」
「もしかして…、いや、まさか…、これって…、こっ、これはON/OFF制御しかできない温調だったのか!なっ、なんだってー!!」
これ、実は2016年のこの記事からの再録です。このシリーズを読んでくださった方ならおわかりでしょうが、書き方はともかく自動制御について最小限必要な知識は上記のようなものではないでしょうか。
化学プラントはともかく、化学の実験室では装置を自作することもあまりないかも知れません。製品として完成された装置を使う場合は制御装置の動作を気にする必要は無いでしょう。もちろん、そのような完成品でも自動制御が使われていますが、そのパラメータはすでに適切に設定されているのが普通です。制御装置と制御の対象が一緒に販売されているのでそのようなことが可能なのです。
ですが、何かのタイミングで自動制御装置を使うことがあるかも知れません。制御について少しだけ覚えておくのも良いかと思います。
さて、温度制御が巧くいかない場合の対応をまとめましょう。
- マニュアルを確認(ON/OFF制御のみの場合はそういうものと納得すること。)して、オートチューニングを行う。
- オートチューニング機能が無い場合は手動でPIDのパラメータを決める。方針は「Pを適当に決めてIを大きくとってそれからDには手を出すな」です。
はい、まずはこれだけ覚えておきましょう。
化学プロセスで用いられている自動制御についてシリーズで解説してきましたが、これで一段落です。おつき合いいただいた方、ありがとうございました。
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