化学プロセスと自動制御~手動で制御にチャレンジ~(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回、化学プロセスにおける自動制御の役割について説明しました。化学工場で行われている物質の合成は機械を使って行われていますが、その運用は自動制御を中心に行われている。このため、非常に大きなプラントであっても運転要員の人数は意外と少ない、という話でした。
さて、今回は以前オープンキャンパスで行っていた自動制御のデモ実験のなかの「手動での制御」について紹介しましょう。簡単な制御を手作業でやってもらって、制御の難しさについて知ってもらおう、という企画です。
ヒーターによる温度制御を実演しますが、今回、小型の白熱灯をヒーターとして用いました。白熱灯はすぐに温度が上昇するのでヒーターの代用となりますし、オンオフが見た目ですぐに分かるのもメリットです。白熱灯の表面に温度を測る熱電対を接触させ、スイッチでオンオフができるようにセットアップ。光がまぶしすぎるので紙で覆いをつくって準備完了です。
あまり熱いと危ないので40℃を目標値として手動での温度制御にチャレンジしてもらいました。スイッチオンで白熱灯が点灯し、温度は上昇します。オフにすると温度が下がります。オンオフのタイミングをうまく合わせて温度を目標の40℃に合わせます。
目標時間は1分ですが、これがなかなか難しいのです。
チャレンジしている人たちの様子をみていると、最初はうまく取り扱えないのですが、すぐにこつをつかんである程度コントロールできるようになることが分かります。
スイッチを入れるとどれくらいの早さで温度が上昇するのか、スイッチを切ったときすぐに温度上昇が止まるのか、どのくらいの早さで温度が下がるのか。最初は何も分からないので、暗中模索でスイッチをオンオフします。
だんだん、対象の動作のタイミングがつかめてくるとコントロールができはじめるのですが、今度はそれを続けるのが難しい。これに耐えて1分間のチャレンジに成功するひとはそうそう居ないのです。
このチャレンジから分かることは二つあると思います。
一つは、上手なコントロールのためには対象(この場合は白熱灯)の動作タイミング、具体的にはスイッチのオンオフと温度変化の関係を理解しないといけない、ということ。
もう一つは、このような制御の仕事は単調な割に集中力を求められる、人間にとって不向きな仕事だ、ということです。
前者は制御は知的なもので人間が関与する方がうまくいくことを示していますが、後者は集中力の途切れない機械こそが制御の仕事に向いていることを示しています。制御に向いているのは人間か機械か、現在の工学では「知的な動作を行う機械」、つまり自動制御を行う機械をつくることでこの問題を解決しています。
「解説」カテゴリの記事
- 災害発生時の通信手段について(片桐教授)(2019.03.15)
- 湿度3%の世界(江頭教授)(2019.03.08)
- 歯ブラシ以前の歯磨き(江頭教授)(2019.03.01)
- 環境科学の憂鬱(江頭教授)(2019.02.26)
- 購買力平価のはなし(江頭教授)(2019.02.19)