化学プロセスと自動制御~フィードバック制御~(江頭教授)
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化学工場ではいろいろな機械を使って化学反応を起こし、大量の材料を合成しています。
たとえば化学反応を起こすための反応器は通常、反応が進むような温度まで加熱されています。では、その温度はどのように調整されているのでしょうか。自動制御によって一定値に保たれている、というのがこれまでの説明ですが、もう少し具体的に見てみましょう。
反応器を加熱するには電熱線などのヒーターが用いられています。その電熱線だけで望ましい温度を達成する、これは理屈の上だけなら可能です。(つまり、現実的には不可能、ということです。)
例えば前回の様に「電球を40℃にする」という目標を設定したとき、ちょうどよいワット数の電球をもってくれば単純につけっぱなしにするだけで、成行きのままで目的の40℃を達成できるはずです。問題は「ちょうどよいワット数」がいくらかが分からないこと、周囲の状況によって変わること、そのワット数の電球を準備することが難しいことです。つまり、現実的には成行きで目標値を維持することは無理、となります。
成行きのままでは目的の値からずれてしまう。これを目的の値に近づけるためには、成り行きでどんな温度になったかを知り、その値と目的地との違いを小さくするように電球に働きかける存在が必要です。ヒーターから見れば、ヒーター自身の(加熱という)動作の結果に対して、修正するための情報(OFFするタイミング)を提供する(フィードバックする)存在が必要なのです。
前回の例では人間がその役割を果たしていました。自動制御ではその役割を機械が代行します。これが制御装置で、ヒーターは制御装置によるフィードバックを受けて目的の温度を達成するのです。
この様に機械の動作結果を測定し、適切な操作をフィードバックする制御装置による制御を「フィードバック制御」と呼びます。
オープンキャンパスでは写真の様な、簡単なフィードバック制御システムを準備しました。
制御装置(オムロン社製 E5CB)は電球の温度を熱電対で測定します。ここで電球の情報が制御装置に伝わります。制御装置は写真のようにSSR(ソリッドステートリレー)に接続されていて、このリレーによって電球をON/OFFすることができます。こちらでは制御装置から電球に向かって情報フィードバックされるのです。
電球が点くと温度が上がり、切れると下がる。ON/OFFのバランスをとって一定温度に調節します。
フィードバック制御では制御装置と対象になる機械との間で情報のループができていることが大切です。今回の場合は
電球→熱電対→制御装置→SSR→(再び)電球
というループです。よくあるトラブルは電球と熱電対が外れてしまうこと。電球の温度がどんなに高くなっても制御装置にはその情報が届かないので、電球はつけっぱなしになります。電球程度なら問題はないのですが、これが化学反応を起こしている装置だとすれば大きな事故にもなりかねませんね。
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