食べ物の「カロリー」が気になる?(江頭教授)
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ハーバーとボッシュが空中窒素固定技術を完成したおかげで食料の生産量は一気に上昇。おかげで世界では80億人の人間が暮らすことができています。これぞ応用化学の最大の成果、と応用化学科の先生としては胸を張りたいところなのですが、同時に問題もあります。今の日本、世の中においしいものが溢れていてどうしても食べ過ぎに、そして太り過ぎになってしまうのです。
正直なところ、私などはスーパーに行ったとき食料品がこれでもかという程の量並べられているのを見ると頭がクラクラすることがあります。私が小学生低学年のころ、お母さんの買い物に付いていったときのお店(八百屋さんや肉屋さん、魚屋さん)はもっとこぢんまりとしたものでしたが…。
と言うわけで、多くの人々が食べ過ぎを反省してダイエットを志しているのが今の日本。そもそも体重を減らすには食べ物について「入るを量りて出ずるを為す」を実践すれば良いはず。で、その食べ物を「量る」基準がカロリーとなるわけです。
最近食べ物の「カロリー」が気になって、「カロリー」制限を始めました。
とかね。
ここまでは世の中一般に通用するお話なのですが、応用化学の先生としては少し気になるところが。えっ、カロリーって言い方おかしくない?
まず一般に「カロリー」とは何か、wiki…じゃなくてchatGPTに聞いてみましょう。
「カロリー」はエネルギーの単位であり、特に食品に含まれるエネルギーの量を表すためによく使用されます。具体的には、1カロリーは1グラムの水の温度を1度セルシウス上げるのに必要なエネルギーと定義されています。
これこの通り。カロリーというのはエネルギーの単位。熱エネルギーに限れば熱量の単位なのです。だから食べ物の「カロリー」ではなくて、食べ物の「エネルギー」というのが正しいはず。もっと言うと単位としてはSIを利用するのが推奨されているのですからエネルギーの単位としては「ジュール」を用いるべきでしょう。
最近食べ物の「エネルギー」が気になって、「ジュール」制限を始めました。
と言うべきなのでは…。(いや、何か伝わんない。)
実際、食品に表示されている「栄養成分表示」での記述は「エネルギー」や「熱量」になっています。また以前「オーストラリアの SUBWAY で驚いたはなし」という記事で紹介したように、場所によっては「カロリー」ではなくて「ジュール」で表記するケースもあるのです。
いや、わかっているのですよ。長年使われてきた言い方で、あまりにも広く世間に広がって要る言葉であるが故に変更が難しい、ということは。でも化学で使う用語や単位と栄養学、というか日常の栄養に関する会話で使われる用語や単位がずれていると、人間が栄養を採ることについての理論にも化学的な知識が背景として存在するのだ、ということが分かりにくくなるのでは、などと応用化学の先生としては考えてしまいます。
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