化学薬品と爆発(江頭教授)
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白衣を着たおじさんがフラスコに入った薬品に試験管で何かを加えると…ドッカーン!煙が晴れると顔に煤が付いて髪の毛がボサボサに。映画などに出てくるステレオタイプの化学薬品の爆発のイメージは微笑ましいものですが、実際の爆発はしゃれにならないものも多い。
そんな、化学薬品の爆発には古い歴史があるのですが、今回は「オッパウ大爆発」について紹介したいと思います。
この「オッパウ大爆発」は1921年、ドイツで起こった事件で、これについて私が知ったのはオーストラリアの乾燥地での植林実験を行っていた際、森林総合研究所所属(当時)の田内裕之さんに教えてもらったときでした。
私たちは乾燥地の乾いて硬くなった土壌に水がしみ込みやすくするために爆薬を利用した土壌改良を行っていましたが、そこで利用していたのがANFO爆薬(Anmonium Nitrate Fuel Oil explosive)でした。このANFO爆薬は安全性が高く、取扱も比較的容易だ、ということで 10kgの袋入りのANFO爆薬を担いで運んだりしたものです。
もちろん、手順通りにANFO爆薬にbooster(起爆用の爆薬)をセットして通電すれば大きな爆発を起こすことができます。(爆発の様子はこちら)
さて、このANFO爆薬ですが、その主成分は実は硝酸アンモニウムです。硝酸アンモニウムは肥料として大量生産されている化学物質ですが、実はそれが爆薬としても利用できる、というのです。このことが明らかになった事件、それが「オッパウ大爆発」なのです。
ハーバーボッシュ法が実用化されて硝酸アンモニウムを成分とする肥料が工場で大量生産されるようになりました。ドイツ南西部のオッパウの町にもそのような工場がつくられ、そこでは大量の肥料が野積みにされており、湿って固まってしまった肥料を出荷するためにダイナマイトで破砕する作業が日常的に行われていたそうです。
硝酸アンモニウムが爆発する可能性があると知っていたら恐ろしくて到底実施できない作業ですが、当時は硝酸アンモニウムを爆発させることは不可能だ、と考えられていました。爆破の作業も定常的に何の問題もなく行われていたのですが、1921年9月のある日、突如として大爆発を起こし、工場全体が破壊され500人以上の人が亡くなる大惨事となったのです。
「硝酸アンモニウムをダイナマイトで粉砕する」作業は後知恵では無謀と言えます。でもハーバーボッシュ法の開発が1906年。人間が数千トン規模の硝酸アンモニウムを扱うようになったのはその後のことです。1921年当時、「大量の硝酸アンモニウム」は未知の対象だった、と言えるでしょう。
化学物質の扱いに際しては、すでに知られている危険に対処する必要があるのは当然のことですが、このような未知の現象が起こる可能性もあるのです。
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