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ガラス器具洗いと皿洗い(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 工学部の応用化学科に新入生が入って学生実験を始めたばかりのことです。

「あのー、ガラス器具を洗ったのですが布巾はどこですか?」
「えっ?布巾って、何で?」
「だって、残った水を拭かないと跡がつくじゃないですか。」

そうか、化学の実験でのガラス器具の洗浄方法は食器の洗い方とは違うのですが、一般の人(それに入学したばかりの学生さん)には知られていないですよね。

 ガラス器具はブラシで洗う、必要なら洗剤を使う、本当にしつこい汚れがついた場合には特殊な洗浄方法もありますが、この辺は食器洗いと同じでしょう。ガラス器具には気づかないうちにひびが入っている可能性があるので、手で洗わないこと、という注意を受けますが、本当は食器洗いでも同じですよね。

 違いはその後。ガラス器具は純水(イオン交換水など)で流して自然乾燥、あるいは乾燥器(低温のオーブンのようなものです)に入れて乾かします。最初の話のように、残った水は拭き取らずに乾燥させてしまうのです。

 ポイントは「純水で流す」という部分です。純水と普通の水道水には大きな違いがあります。下の写真は片方が水道水、もう一方が純水です。

Photo

一見、まったく違いが分かりませんが、これを放置して乾燥させると違いが分かります。

Photo_2

 上の写真の様に、片方には跡が残りますが、もう一方は何も残りません。跡が残る方が水道水、何も残らない方が純水です。

 以前の記事(目からうろこの「うろこ」って何?)でも紹介したのですが、普通の水道水には消毒用の塩素の他にも、カルシウムなどの不純物が溶けています。水道水が乾燥すると、その不純物が残ってこの様な跡ができるのです。

 一方、純水は化学実験に使用するため、そのような不純物を取り除いた特別の水なので乾燥してもなにも残りません。

 さて、この純水を使えば食器を洗うときも布巾で拭く必要が無いのでは、と思いますよね。でも、純水を作る装置はなかなか高価ですから需要は少ないでしょう。それに、純水は実は「まずい」という定評があるのです。

 

江頭 靖幸

 

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