実験室ライフハック「スターラー Tips その1 問題編」(江頭教授)
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今回は実験室でのちょっとした工夫をご紹介。前半は問題の説明です。
化学の実験で用いられるスターラー、ご存じの方もいるかもしれませんが、ビーカーの中身をかき混ぜるための道具です。本体には磁石とモーターが入っていて、本体の上にのせたビーカーに、磁石をテフロン樹脂でコートしたスターラーチップ(攪拌子)を入れます。本体の磁石が回転すると磁石にくっついたスターラーチップも一緒に回転し、ビーカーの中を攪拌できる、という仕組みです。
普通に使う100mLや300mLのビーカーで使うには何の問題もありませんが、大きなビーカー、たとえば2Lのビーカーで使うと、ビーカーの周辺部を良くかき混ぜられない、という問題が。そこで大きなスターラーチップを買ってみたのですが、以下のようにあまり回転速度を上げられません。
回転が速くなるとスターラー本体の磁石とスターラーチップの磁石との結合が外れて、よく「スターラーチップがあばれる」と呼ばれる状態になってしまいます。
この現象、回転させるまえのスターラーチップの位置をみるとわかるのですが回転の中心(つまり本体磁石の中心)とスターラーチップの中心がずれていることが原因の様です。
本来の小さいスターラーチップの場合、チップの磁石は本体の磁石に両端でくっつく形で安定しています。
では、大きなスターラーチップの場合はどうなるのでしょうか。
図のようにチップが中央にあるとすると、本体の磁石とチップ磁石の極の対(SとN)の距離は離れてしまいます。
この状態よりも、片方のSとNがくっついて、もう一方のSとNが離れている状態、つまり
このような状態の方が実は安定なのです。
この状態でスターラーを回転させるとどうなるでしょうか。スターラーチップに働く遠心力は回転速度が上がるほど大きくなりますから、スターラーチップは磁石の結合力を振り切って「あばれ」出すわけです。
さて、ここまでが「問題編」です。この問題、どうやって解決すれば良いのでしょうか。その答えは次回「解答編」で紹介しましょう。
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