日本の温室効果ガスの排出量(2021年度版)(江頭教授)
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最大の環境問題である地球温暖化、その原因物質である二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスはだれがどのくらい出しているのでしょうか。温室効果ガス削減のための基本的な指標となるこのデータ、日本国内での発生量については温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)がとりまとめて毎年発表しています。
という書き出しで日本の温室効果ガス排出量について紹介する記事も実は8回目。昨年がこちらの「日本の温室効果ガスの排出量(2020年度版)」 ですが、2019年度版、2018年度版、2017年度版、2016年度版、2015年度版、2014年度版と続きます。
2014年からスタートしたなら今年は10回目では。おっと、よく見てください。今年のタイトルは2021年度版となっています。実はデータの発表には少しタイムラグがあり、一昨年度のデータを昨年度のうちに整理して今年度発表する、というながれになっています。
さて、今回の結果は
2021年度の我が国の温室効果ガス総排出量︓11億7,000万トン(CO2換算)
前年度の総排出量(11億5,000万トン)と比べて、2.0%(2,000万トン)の増加
となっています。これは驚きのデータ。なんと2013年から連続7年減少していた温室効果ガスの排出量が久方ぶり増加に転じているのです。
この理由、皆さんお気づきのことと思いますが「新型コロナウイルス感染症に起因する経済停滞からの回復により、エネルギー消費量が増加したこと等が主な要因と考えらえる。」とされていて、それはまあそうだろうと。
実際、2013年度から2019年度までの減少率は1.2~3.9%(平均2.5%)であり、2020年度の前年比5.1%減というのがかなりの異常値だったのです。以下のグラフを見ても2021年度のデータは2013年度から2019年度までのラインの延長上にあって、2020年度だけが下がっているように見えるのではないでしょうか。
コロナ禍によって人間の経済活動が抑制され、その結果として温室効果ガスの排出が抑えられたのが2020年、そして経済活動の再開にともなって排出がリバウンドしたのが2021年、とまあ表面的にはこのようにまとめられると思います。では2021年は本当に2019年までの状態に回帰したのでししょうか。
2019年までの「省エネの進展」、「電力の低炭素化(再エネ拡大及び原発再稼働)」という、日本社会の温室効果ガスを出さない社会に向けての構造的な変化の過程はもちろん、継続して進行しているでしょう。
ではコロナ禍の期間に急激に広まったオンラインを使った働き方や教育の変化はどのくらい温室効果ガスの抑制に影響しているのでしょうか。
これはもう少し長い期間で温室効果ガスのは移出量を観察しないと分からないことですね。来年に予定されている2022年度のデータの発表にも興味が尽きません。
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