« 推薦図書 I.プリゴジーヌ R.デフェイ 著, 妹尾 学 訳「化学熱力学1,2」(江頭教授) | トップページ | ガラス器具洗いと皿洗い(江頭教授) »

0は何倍しても0のはずなのですが…ブラックコーヒーのカロリーの話し(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 最近、濃縮したコーヒー(ラベル「希釈用コーヒー飲料」と書かれています)がお店で売られているのを見つけました。なるほど、濃縮しすぎて粉末にすると香りの成分まで蒸発してしまうだろう。なら途中で止めて液体のまま販売して、後で薄めれば良いのか。

 写真の左側がその商品。340mL入りで5倍に希釈するのでこれ1本で1.7L相当になります。このサイズで右側の2Lのペットボトルと余り違わない量。これなら取扱いが易しいですよね。

Fig1_20230626141201

 さて、ダイエットを考えて無糖のブラックコーヒーを選びましょう。普通のペットボトル入りのブラックコーヒー、無糖のものは100mL当たり0kcalです。5倍濃縮の方も当然0kcalのはず。

Fig2_20230626141201

 なのですが、これは一体どうしたことでしょう?100mL当たり14kcalとの表示が。大した値ではありませんが0ではありませんよね。

Fig3_20230626141301

 濃縮された方が100mL当たり14kcal。これを5倍に薄めれば100mL当たりは2.8kcalとなるはず。ということは濃縮なしのボトル入りコーヒーとは違って何かが入れてあるのでしょうか?

 私はこのコーヒー飲料の製造過程について知ることのできる立場ではないのですが、この話しには筋の通った説明ができると思います。結論から言うと

100mL当たり2.8kcalなんて大した値ではないので無視した

です。

 「えっ、そんな乱暴な」とお思いでしょうか。いえいえ、ちゃんと根拠はあるのです。

 そもそも食品の栄養表示はメーカーが勝手に行っている訳ではありません。食品表示法という法律に則って行われています。

 例えば消費者庁の資料「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン」を見ると栄養素毎に「0と表示することができる量」が決められているのです。そして熱量については「5kcal」となっています。

 つまり濃縮前のコーヒーの熱量は100mL当たり5kcalを越えないので0と表示した。ところが濃縮によって100mL当たり5kcalという基準を超えてしまった。だから濃縮されたコーヒーのボトルだけに記載があるのでしょう。

 さて、5kcal以下は「0と表示することができる量」というのはどうなのでしょう。一般論から言えば「そんな乱暴な」となりますが、食品のカロリーは日々の食事の管理につかう数字でしょう。1日で千数百から二千数百程度の数値を問題にするので、その中で5kcal程度の誤差は大した問題にならないのでは。だって無糖のボトルコーヒーなら1L飲んでも28kcalの誤差にしかなりません。カロリー取り過ぎの前にカフェインの取り過ぎで頭が痛くなってしまうのでは。



江頭 靖幸

 

« 推薦図書 I.プリゴジーヌ R.デフェイ 著, 妹尾 学 訳「化学熱力学1,2」(江頭教授) | トップページ | ガラス器具洗いと皿洗い(江頭教授) »

日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事