リバウンドした世界のCO2排出量のその後(江頭教授)
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昨年のいまごろ、こちらの記事で「リバウンドする世界のCO2排出量」と題してCovid-19のパンデミックの影響で一旦は減少に転じた世界のエネルギー由来のCO2排出量が2021年には増加、というか急激な増加=リバウンドするという予想を紹介しました。
昨年の今頃なので日本の温室効果ガス排出量は2020年度のデータがまとまったところ。各国がまとめた温室効果ガス排出量を集計しているUNFCCCの公式のデータは2019年までしかありませんでした。これに対してエネルギーに関する国際機関のIEA ( International Energy Agency ) は電力の需給やマーケットデータを利用した推計値を発表しています。ただし推計するのはエネルギー由来の温室効果ガスのみ。でも人間活動由来の温室効果ガスのほとんどはエネルギー由来の二酸化炭素なのですから、これでも充分な推計だと思います。
さて、リバウンドした世界のCO2排出量、1年経って今はどうなっているのでしょうか。いや、「今」というのは正しくないですね。推計値でもリアルタイムではないので「去年」にはどうなっていたのでしょうか。
出典:IEA ( International Energy Agency )
”CO2 Emissions in 2022”
この資料はIEAのWEBサイトから無料でダウンロードできます。
結果は0.9%増で「微増」といったところでしょうか。2022年、世界にはいろいろなことがあったのですが「懸念されるほどには増えなかった(lower than feared)」というのがIEAの評価です。
そうそう、昨年の記事で日本の2021年の二酸化炭素の排出量のリバウンドについてIEAの予測に基づいて
データを見ると他の先進国同様に減少とリバウンドを経験していますが、その割合は他国と比べると決して大きなものではありません。
と書きました。そして
来年度2021年度の日本の温室効果ガス排出量の公式データが出た際、このリバウンドは本当に観察されるのでしょうか。
とも。
さて、実際の2021年度の温室効果ガス排出量はこちらの記事で紹介したように2.0%の増加。確かにリバウンドはしているのですが全世界(6%)と比べるとやはり「決して大きなものではありません」ね。
では2022年はどうなるのか。世界の傾向が6%増(2021)→0.9%増(2022)となっているのですから、日本は2021年の2%増から減少に転じたのではないか、と私は予測しておきましょう。この予測が当たるかどうか。それは来年度になって2022年度の日本の排出量が公表されたときにはっきりします。
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