書評 小山 敏行著「熱力学きほんの「き」」(江頭教授)
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今回紹介するのは熱力学の教科書です
小山 敏行著「熱力学きほんの「き」」(北森出版 2015)
さて、この教科書の第3章は理想気体について。理想気体の状態方程式と、その中の記号についての説明にこうあります。
Rは気体定数[J/(kg・K)]
あれっ?気体定数の単位が違う様な…。
しかも、次のページの表3.1には「気体の分子量と気体定数、比熱(101.3kPa、298K)」というタイトルになっていて、気体としてヘリウム、水素、窒素、酸素、空気がリストアップされ、それぞれの気体の気体定数が示されているのです。
あれっあれっ?気体の種類によって気体定数が違うだなんて、どうなっているんだ、この教科書は!
もう皆さんお気づきのことでしょう。この教科書は熱力学の教科書。でも「化学熱力学」の教科書ではないのです。
よく考えれば当たり前の話し。熱力学はそもそも蒸気機関の発展と共に確立した学問ですから、機械工学のための「熱力学」の方が本家本元。化学熱力学は、化学反応を含んだ現象に対しても適用できるように拡張された熱力学で、謂わば「熱力学第二部」のようなものなのですね。
この教科書には化学反応の反応熱の話しはほとんど出てきませんし、ヘスの法則や物質の標準生成エンタルピーも扱われていません。その代わり、オットーサイクルやディーゼルサイクルなどエンジンの動作を理解するための概念には多くのページが割かれています。
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