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2023年9月

2023.09.29

「学士・修士一貫早期修了プログラム」のこと(江頭教授)

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 前回の記事ではアドバイザー面談について紹介したのですが、ついでに紹介しておきたいのが表題の「学士・修士一貫早期修了プログラム」のことです。4年間で大学を卒業したら大学院の博士前期課程(と言いますが事実上は修士課程のこと)に進学して2年間で修士号をとる。これが標準的なスタイルで、敢えて言えば「学士・修士一貫修了プログラム」と呼べるでしょう。で、今回紹介する「学士・修士一貫早期修了プログラム」には「早期」と入っていますから、この6年間のプログラムが短縮される制度だ、ということになります。

 具体的には学士を4年間ではなく半年短縮して3年半で取得。つづいて大学院博士前期課程の標準である2年間も半年に短縮して1年半で修士号を取得するという制度。大学と大学院で半年づつ短縮して合計1年の短縮。通常なら6年かかるコースが5年で修了することになります。

 もちろん、大学(と大学院)に通う年数が少なくなるのですからその分の学費もありません。いや、若い頃の1年は学費以上の価値があるといえるでしょう。

 とまあ、非常に魅力的な制度なのですが、これは誰もが利用できる訳ではありません。「学士・修士一貫早期修了プログラム」を利用するためには厳しい条件がつけられているのです。ここでは詳細には触れませんが、要は優秀な成績でたくさん単位をとる、ということがその条件の内容となります。

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2023.09.28

アドバイザー面談のこと(江頭教授)

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 「アドバイザー」は本学全体の制度です。高校生、中学生の皆さんに理解し易いイメージで言えば「担任の先生」のような役割だと思ってください。大学では研究室に所属すれば強固な人間関係ができるのですが、入学から研究室配属までの間、どこにも所属しない状態になるのが一般的です。この時期、大学生活になじめないと生活のリズムを壊すことが多く、大学からドロップアウトしてしまう可能性が高いのです。それに対応するために作られたのがアドバイザー制度で、定期的に学生諸君と面談をすることでケアをすることになっています。

 後期の始まりに合わせてアドバイザー面談をしてください、そんな連絡に応じて、私は昨日(9月27日)の3限に1年生向けのアドバイザー面談を実施しました。

 1年生の皆さんは本学に入学して1学期が過ぎて、成績も分かったところです。思ったように単位をとれて成績が良かったひと、逆に苦戦しているひとなど、まさに悲喜こもごもと言いましょうか。とはいえ、まだ大学生活は始まったばかり。いえ、私のような老人から言わせれば人生そのものが始まったばかりです。

 1年生の皆さんに言ったのは「今、良い習慣を身につければこれから40年それに助けられるんだよ」ということ。スケジュール管理の秘訣や快眠のテクニック、快食快…おっとと、まあいろいろ自分の生活を良くする工夫をして欲しいところです。

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2023.09.27

「探究成果発表入試」の評判(江頭教授)

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 前回の記事で総合型選抜の入試が行われた、ということを報告したのですが、その際に少し触れた「探究成果発表入試」についても紹介しましょう。「探究成果発表入試」もAO入試と同様に総合型選抜の一種であり、年内に行われる入試となります。

 「探究成果発表入試」の特徴は名前に「探求」とあるように「総合的な探究の時間」などの授業で行ったことが評価対象になっている点です。本学のWEBサイトから「ポイント」としてまとめられている特徴を引用してみましょう。

受験生の皆さんが「総合的な探究の時間」や「探究」と名のつく授業を通して行った「探究課題」の成果、またそこから得た経験などを発表してもらい、それを評価する入試です。

まずは発表が評価の対象だということが示されています。普通の試験は教員側がよく知っていることが問われる訳ですが、この「探究成果発表入試」では発表する側、つまり受験生の方が一番理解していることが問われる訳ですね。引き続き「探究成果発表入試」の説明はこの様に。

探究成果のレベルを問うものではなく、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析してまとめた過程やそこから得た経験を、本学に入学してからの学修や研究にどう活かして行くか、さらにはどのような人に成長し社会へ羽ばたきたいかなども含めて評価します。

そして大切なのは必ずしも発表される内容ではない、とも。評価対象は「探求」をはじめて、進めて、まとめ上げる能力なのですね。

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2023.09.26

「総合型選抜」の入試が実施されました(江頭教授)

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 9月24日は日曜日。でも本学八王子キャンパスでは特別なイベントがありました。私もそれに参加するために大学に行ったのですが、目に入ったのは以下の看板。

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そうです。9月24日は本学の試験、それも入学試験の日だったのです。

 いや、入試は来年の2月頃では。私の世代で大学入試に縁が無かったひとならきっとそう言うと思うのですが、これはいわゆる「総合型選抜」の入学試験なのです。いや、「総合型選抜」も分かりにくいですね。本学のWEBサイトでは括弧付きでAO入試と書いているとおり、これは以前のAO(アドミッション・オフィス)入試に相当するものです。

 さて、試験当日のキャンパス内を歩いて行くと開場となる建物に到着。

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少しカメラを引くとこんな感じ。本学の学園祭である紅華祭(あと14日なんですね。)の看板も見えました。

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2023.09.25

本日(9月25日)から後期授業が始まります。(江頭教授)

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 本日(9月25日 月曜日)から後期授業が始まります。夏休みも終わり、14回の授業と期末試験の新しい学期が始まるのです。

 えっ、今頃?と思っている高校生の皆さん、大学の授業は前期と後期の2期制なので「夏休み」が終わって授業が始まったのではなく、「秋休み」が終わって授業が始まったのだと思ってください。

 前期、後期ともに14回の講義と1回の試験、全部で15週間で一学期となります。前期と後期を合わせて30週間ですから、その間の休みは全部で22週間、春と秋に平均11週間の休みがある計算です(後述するように学期中のお休みなどがありますから、実際にはそこまでまとまった休みにはなりませんが。)

 前期の授業の終わりは7月27日、試験も終わり「秋休み」が始まったのが8月10日ですから、6週間半くらいの休みだった、ということになります。

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2023.09.22

本日は卒業式です(江頭教授)

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 本日(2023年9月22日)は本学の卒業式です。

 あれっ、と思った人も多いかもしれません。普通の卒業式は春に行いますが、本日の卒業式は秋の行事。そうです、いわゆる9月卒業の学生さん達の卒業式なのです。

 本学には秋入学という制度はありません。ですから通常通り4年間で大学の教程を終われば卒業は入学から4年後の春となります。とはいえ学生さん達の中にもいろいろな事情があることも。学業の途中で病気になる場合、経済的な問題で学業を続けられない場合もあるでしょう。そんな場合、半年卒業を遅らせることも選択肢にはあるわけで、結果として秋に卒業式を行う人たちもいる、そしてその卒業式が本日なのです。

 おっと、そう言えば別の事情で卒業式が半年ずれる学生さん達もいますね。

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2023.09.21

太陽エネルギーは「再生可能エネルギー」なのか?(江頭教授)

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 まず正解を書いておくと「はい、その通りです」となります。太陽エネルギーは太陽電池でも前回紹介した太陽熱温水器でも「再生可能エネルギー」に分類されています。例えば資源エネルギー庁の「なっとく再生可能エネルギー」のこちらのページでは再生可能エネルギーの定義を

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)においては、「再生可能エネルギー源」について、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。

と紹介しています。少々長いですがポイントは「永続的に利用することができる」というところ。それで何も問題はないのですが、いや気になってしまうんですよね。

 「永続的に利用することができる」エネルギーを「再生可能」って言いますかね?せいぜい「永続的に再生することができる」位にしかならないと思うのですが、さらに一言。エネルギーって「再生」するんでしたっけ?

 

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2023.09.20

小学校時代の夏休みの思い出と太陽エネルギー(江頭教授)

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 私の小学生時代といえば1960年代から70年代なので太陽電池はまだまだ実用になっていなかった時代です。それでも夏休みに太陽エネルギーを利用した記憶がある、といったらどうお思いでしょうか?

 私は夏休みのたびに母方の祖父母の家に遊びに行っていましたが、そこから海岸まで歩いて行ける程度の距離で良く遊びに行ったものでした。そして帰ってくるとフロで砂を落とすように言われたのですが、そのときにお湯(といっても夏場のことですからぬるま湯程度で充分)を供給してくれたのが太陽エネルギーでした。祖父母の家には太陽電池ではなくて、単純に太陽熱を利用する温水器があったのです。

 構造は極単純、屋根の上に置いたタンクの水を太陽の光で温めるというだけの仕組みですが、夏場のお湯の利用には充分だったのです。(もっとも私が夏休み限定で祖父母の家に行っていたからそう感じるだけで冬場にはそれほどありがたみはなかったのかも知れません。)

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(出典:Wikepediaより)

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2023.09.19

書評 ジェニファー・D・シュバ著「米国防総省・人口統計コンサルタントの 人類超長期予測」(江頭教授)

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 今回は人口問題に関する書籍を紹介しましょう

書評 ジェニファー・D・シュバ著「米国防総省・人口統計コンサルタントの 人類超長期予測」

サブタイトルには「80億人の地球は、人口減少の未来に向かうのか」とも書かれています。

 さて、本ブログでは以前にも人口に関する書籍をいろいろと扱ってきたのですが、先に「人口爆発が騒がれなくなったのは何故か?」という記事に示したように私はどうやら「人口爆発」は起きそうもない、という立場です。

 貧しい状態(多産多死の状態)の社会ではたくさんの子供を産むことが必要(でないと次の世代がいなくなってしまう)ですが、社会が豊かになるとその必要性はなくなる。タイムラグはあるものの人々は敏感に反応して出生率が減少し、やがて新たな状態(少ない子供が必ず育つ)へと移行してゆく。

基本的にはこのように考えています。

 さて、今回紹介する「人類超長期予測」にはいろいろなトピックスが紹介されているのですが、大きなポイントとして上述のプロセスが必ずしも予想通りに進行する訳ではない、という指摘が成されています。具体的にはサハラ以南のアフリカの諸国で、これらの国々では「子供が死なない程度の発展」はあったが「出生率が減少」するほどには豊かになっていないという状況にあることが指摘されています。結果、局所的な人口爆発(制御不能な人口増化)が起こっており、毎年増え続ける子供達が、そしてやがては毎年増え続ける就職年齢に達した若者達が社会にどんどん参入してくることになるのです。人手不足の日本からすれば夢の様な状況ではあるのですが、そんなに質の高い(要するに高給の)職を準備することができるのでしょうか。若者の失業率が高くなれば自ずから社会は不安定化し、それがまた出生率を高止まりさせる…。Photo_20230907183501

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2023.09.18

ペットボトルのフタのはなし(江頭教授)

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 最近何かと病院の待合室で時間を過ごすことが多くなっているのですが、これも病院の待合室でのお話し。ふと気が付くと私の隣に座っている高齢のご婦人がお茶を飲もうとペットボトルを取り出していました。保温のためか、あるいは冷えたボトルにつく水滴を防ぐためなのか、ボトルのサイズにぴったりの落ち着いた色柄の巾着袋に丁寧に入れられたペットボトル。はて、あの袋はあるいはこのご婦人の手作りなのだろうか。などと漠然とみていると様子がおかしい。ペットボトルに何かトラブルが起こっているのだろうか。あっ、そうか。ボトルのフタが開かないんだ。

 ペットボトルはその名前の由来であるPET(ポリエチレンテレフタレート)という樹脂で作られていますが、それは本体だけのこと。フタはポロプロピレンという別のプラスチックで作られていることが多い様です。輸送中に内部の液体が漏れ出さないようにフタはボトルの入口にしっかりと固定されていますが、開封時にフタを回すと一体化していたフタの素材がボトル入口周囲の部分で二つにちぎれてフタが開閉可能になる様にできています。フタがちぎれる、というか分離する際に離れる部分にはミシン目等が入っていて開けやすいようにできているのですが、はじめてフタを回してボトルを空けるにはそれなりの力が必要です。これは当たり前といえば当たり前。余りに簡単にフタがとれてしまったら輸送中に勝手にボトルが開いてしまうかも知れませんからね。

 さて、お隣のご婦人は困っている様子なので声をかけてみました。「お手伝いしましょうか?」

 とまあ、ここでさっと開けてみせればかっこ良かったのですが、このペットボトルが意外と難物でして。私も結構開けるのに手こずってしまいました。

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2023.09.15

「風邪をひいたら仕事を休む」のは常識か 再論(江頭教授)

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 2021年の最初のころの記事で、年末に再放送していたテレビドラマのこんなワンシーンを取り上げました。

舞台はITシステムの開発会社。突然の仕様変更で現場は大騒ぎとなりました。残業に次ぐ残業、徹夜に次ぐ徹夜で膨大な仕事をこなしてゆく社員たち。そんな中で「子供に風邪をもらちゃって」と一人が咳をしながら職場にやってくる。

これに「いや、そんなことしちゃダメでしょう。」と続け、コロナ禍によって人々の伝染病に関する関心が一気に高まったことに触れ、結論として以下を。

 さて、近い将来、今回のコロナウイルス感染症の問題が片付いたとき、このドラマの表現は再び受け入れられるようになるのでしょうか。それとも体調が悪いのに仕事に来るなんて変な話だ、という新しい常識が定着するのでしょうか。今のところ先は見通せない状況ですね。

とまあ、最初に書いたようにこれが2021年のはじめの頃のこと。コロナ禍が始まって約1年のころの状況です。あれから2年と10ヶ月、約3年がたったのですが、果たして現在はどうなっているのでしょうか。

 こんなことを考えるのも私が先日「インフルエンザA型陽性」 という診断を受けているからです。(詳細はこちら

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2023.09.14

人口爆発が騒がれなくなったのは何故か?(江頭教授)

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 先日の記事、「人口爆発から少子高齢化へ」では以前(私が子供だった頃なので50年位前です)には人口増加によって起こる問題が不安視されていたのに対して現在では人口の減少が問題視されているということを指摘したのですが、今回はその理由について考えてみましょう。人口爆発が騒がれなくなったのは何故か、ということですね。

 いきなり結論から入りますが、その理由は簡単。どうやら「人口爆発」は起きそうもないことが明らかになったからです。

 おっと、これはさすがに不正確な表現でした。まず「人口爆発」が何を意味しているかを整理すると、人口が増えることそれ自体を「爆発」とは言いませんよね。この「爆発」という表現は「制御不能」であることの例えであり、「人口爆発」とは人口が制御不能なほどのスピードでどんどん増えることを意味しています。もちろん、地球が養うことのできる人口には限界があるはずですからいつかはその限界を突破して「悲劇的な」方法で人口は強制的に減少させられることになるのです。世界の人口の推移、とくに50年前の1970年代ころまでのデータをみると世界の人口は指数関数的に、まさに爆発的に増えていて、この見方にも説得力を感じるというものです。

 ところが、どうやらこの人口増化はそんなに続かないらしいことが分かってきました。

 この辺の事情は以前にこちらの記事で紹介した

ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド 著

上杉 周作, 関 美和 訳

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣(日経BP 2019)

の中でも触れられています。

 下図は世界の「女性ひとりあたりの子供の数」推移ですが、「この本でもっとも衝撃的なグラフと言ってもいい」と紹介されているものです。

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2023.09.13

「片桐先生、私が間違っていました!」または「抗ウイルス薬の進歩を実感した話」(江頭教授)

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 抗ウイルス薬については本ブログで少し議論がありました。切っ掛けは私の「インフルエンザの季節ですね。(パート2)」という記事。これは2019年2月8日の記事で、この中で私が

「人類がインフルエンザを克服」したようには見えません

と書いたのが片桐先生の逆鱗に触れたのでしょう。反論記事「抗ウイルス薬の進歩 江頭先生2019年2月8日ブログへの反論」が2月13日の記事として発表されています。この中で片桐先生は

 インフルエンザに関して言えば、この数年で極めて迅速に診断できるようになりました。また、治療も1996年のタミフルをはじめ数種類の特効薬により、高熱の期間は1〜2日に短縮され、患者の肉体的負担を減らしています。たしかにこれをもって「克服した」とはいいがたいかもしれません。しかし、確実に「克服」に向かっていると言えます。

と書かれています。

 で、今回の記事は、私自身がこの片桐先生のお言葉通りの経験をした、というお話しです。

 詳細は省きますが、体調不良を感じて体温を測ると熱がある。これは病院に行かねば、と思うのですがまずはコロナウイルスの抗原検査キットで確認をすることにしました。念のために買っておいたキットが役に立ちました。で、結果はコロナ陰性。良かった、とは思いましたが熱はあるんですよね。翌朝病院に行くと再検査で「コロナ陰性」ですが「インフルエンザA型陽性」とのこと。そうか、インフルエンザにかかったのか。

 で、処方されたのがイナビルという薬。ホコリを吸い込むような変わった飲み方(?)をする薬なのですが、これが片桐先生の言う「特効薬」なのか、とピンときました。

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2023.09.12

人口爆発から少子高齢化へ(江頭教授)

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 ここのところ過去に考えた未来と本当に来た未来の違いについての記事を書いているのですが、今回は人口問題について書きましょう。この問題ほど世論の「手のひら返し」が著しい問題はちょっと思いつかないくらい。何しろ私が子供の頃には世界の人口は爆発的なスピードで増えていて、このまま増加を続ければ資源や食料が不足することは明か。人々は少ない資源を奪い合って文明は崩壊する、といったイメージがまことしやかに語られていたのです。まあ、これは私が子供の頃に子供向けの雑誌などから得た印象なので信頼性が高くない話(正直言えば与太話)なのは致し方のないことかもしれません。

 それでも多くの国のエリート達が人口増化に対して危機感を持っていたことは疑いありません。たとえば有名な中国の「一人っ子政策」などはその象徴的な例でしょう。一人っ子政策のスタートは1979年であり、それに先行する人口抑止のための計画はいろいろあった様ですから、少なくとも当時の人々は地球の人口が増えす過ぎることに強い危機感を持っていたことが分かります。

 ところがいつの間にか人口爆発の話はどこへやら。今人口問題のトレンドは「少子高齢化」です。

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2023.09.11

氷河期から温暖化へ(江頭教授)

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 ここのところ過去に考えた未来と本当に来た未来の違いについての記事を書いているのですが、今回も同じ趣向で気候変動について書きましょう。今現在の人間の活動に適した気候が変化してしまうかも知れない。これはある種の根源的な恐怖であって、どうしても人々の(特に少年の)興味を引きつけてしまいます。私も子供の頃からそんな話題が大好物(不謹慎ですが)でした。

 まず何より、地球の気候が今と全く異なっていて、ひどく寒冷であった期間、つまり氷河期というものが本当に存在し、その発生理由は(少なくとも現在まで)はっきりと理解されておらず、いつまた次の氷河期がやってくるか分からない、という事実は子供の頃の私にとっては大きな恐怖でした。もし次の氷河期がやってきたら人類は生き残ることができるのだろうか。などと興奮しつつ心配していたものです。Hyougaki_mammoth

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2023.09.08

30年前に考えた人類の未来の思い出(江頭教授)

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 前回の記事では約30年前の冷戦終結の際の私の個人的な感想を書かせてもらいました。

「さあ、これから世界は一直線に発展し続けるんだ!」

というのがそれ。今回は「一直線に発展し続ける」という点について少し補足したいと思います。

 私は1962年生まれで今年60歳です。私が生まれてすぐの1964年には最初の東京オリンピックが開催されました。これは、日本が戦後の混乱を脱してかつての、いえ、それ以上の繁栄を取り戻したことを世界に向けて発信するイベントでもありました。わたしの子供時代はこれに続く高度経済成長の期間とほぼ一致しているのです。高度経済成長は石油ショックにより一時は中断したもののその後も高いレベルでの経済成長が続きました。冷戦終結の1991年はバブル景気の真っ最中であり、その年に私は30歳少し前という年齢になっていました。

 このような経験を通して、私は世の中は良くなっていくのが当たり前だ、という考えが根付いていました。しかし聞くところによると世界の全ての国々がそうなっている訳ではないようだ。どうやら発展を続けている日本は特殊なケースらしい、ということも気になっていたのです。

 発展するのが「普通」で「自然」なのに、それが実現できない国々(今なら「発展途上国」と言うところですが当時は無遠慮に「後進国」と呼んでいました)には何か問題があるに違いない。おそらく共産圏の存在と冷戦がその理由なのだろう、と考えていたのです。 

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(出典:世界経済のネタ帳)

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2023.09.07

世界は変化するけれど思ったほど良くはならないなあ、というはなし(江頭教授)

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 大学で助手(今で言う助教)をしていた頃の話です。センター試験(今で言う共通テスト)の試験監督を担当したのですが、社会の試験の開始と同時に問題文の訂正を黒板に書くように指示されました。詳しい文言は定かではありませんが

問題文中の「ソビエト連邦」は「ロシア連邦」と読み替えてください

という指示でした。センター試験の問題が作られた後、印刷など準備をしているうちにソビエト連邦が崩壊してしまった。それでやむなくこのような対応になったのですね。つまり問題作成者の人たち(それなりに社会や歴史に詳しい人たちのはず)ですら試験日までソビエト連邦が保たないなどとは考えなかった。それほどまでにソビエト連邦の崩壊は急速で劇的な出来事だった、ということなのでしょう。

 ソビエト崩壊が1991年の事ですから、これはおそらく1992年の早春のセンター試験だったのでしょう。ソビエト崩壊といえば歴史に残る一大事ですが、私という一個人はこのような形でその大事件に触れた、ということになるのです。

 

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2023.09.06

推薦図書 デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン著「食欲人」(江頭教授)

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 うーん、これは悩ましい本が来ちゃったなぁ、などと思いつつ本日推薦するのはこの本

デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン著、櫻井 祐子訳「食欲人」(サンマーク出版 2023/5/30)

実は「新版・科学者達が語る食欲」という副題がついている事から分かる様に「科学者達が語る食欲」という図書の新訳版という事のようです。元々は英文の「Eat Like The Animals: What Nature Teaches Us About the Science of Healthy Eating」という図書ですね。

 さて、出版の経緯はともかく、この本はやはり悩ましい。何が悩ましいかというと「推薦」すべきか「紹介」にとどめるべきか、というところ。

 本ブログでは「推薦図書」と「書評」という二つのカテゴリーがあります。どちらも似たようなところがありますが、その本の内容に私が賛同できて、ブログを読んでくださる皆さんにも是非読んで欲しい、という場合には「推薦図書」に、そうではなく「お勧めできないけどコメントしたい」といった場合には「書評」と使い分けているのです。

 はて、本書は果たして「推薦」して良いものなのだろうか。そう言う意味で悩ましいのです。

 前置きが長くなりました。本書では

動物(含昆虫)は自由に餌を選べる場合には、それぞれの栄養分(タンパク質や炭水化物)を自分が必要とする分だけバランス良く食べることができる。

動物は各種栄養素に対してそれぞれの「食欲」を持っていて、それぞれの栄養素への「食欲」が満たされるように餌を食べているのだ

また、餌に制限がある場合は必ず必要とされるタンパク質を摂取できるように食べる。タンパク質が少なく、炭水化物が多い餌しか入手できない場合はタンパク質への「食欲」が満たされるまで、過剰に炭水化物を摂取する事もいとわない

そしてこれは人間に対しても成り立つ。現在、タンパク質が少なく炭水化物や脂肪を多く含む「超加工食品」が世に溢れているが、これが肥満の蔓延の原因なのだ。

とまあ、このような事が述べられています。

 さて、本書を読むと最初は「バッタが餌を食べる様子を観察する」というなかなか突飛な話からスタート。それは丁寧に事実を探り出してゆく科学的な実験についての解説で一見地味でありながら知識が増えるに従ってスリリングになってくる、という良質の科学ドキュメンタリー独特の面白さが確かに感じられます。

 これは是非皆さんに推奨したいと思ったのですが、それからがねぇ…

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2023.09.05

ロジスティック曲線はS字カーブなのだろうか?

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 ロジスティック曲線とはどんなグラフなのか、まずは形を下図で見てもらいましょう。

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横軸t(これは通常時間のこと)が0からスタートしてN(こちらは生物の個体数、あるいは人口などを表しています)の値ははじめのうちはまさに「指数関数的に」どんどん加速しながら増加するのですが、やがて「成長の限界」に突き当たる。今度は増加速度はどんどん減速し最後には増加が止まって一定値に達する、というグラフです。

 これは最初は無制限なはねずみ算的な増加が起こるが、やがて資源の枯渇や環境の制限などで成長が阻害される。その過程をモデル化した微分方程式の解として与えられるカーブです。

 これ自体は問題ありません。で、このロジスティック曲線のことを「S字カーブ」と表現することがよくあるのですが、私は「S字カーブ 」という呼び方聞いたときには違和感を拭えませんでした。

 いやだって、S字カーブってこんな奴だろう。 

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2023.09.04

応用化学科球技大会を開催しました(江頭教授)

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 小学校から高校まで、皆さんの学校でも「運動会」というものがあったのではないでしょうか(高校だと「体育祭」になりますかね?)。では大学ではどうでしょうか。

 東京工科大学そのものとしての体育祭というものはありませんが、我々応用化学科では学科としてスポーツのイベントを実施してきました。第一期生を迎えた春に新入生交流のイベントという位置づけで「ドッジボール」をやったのが始まり。その後学年も増え、第一期生が研究室に配属されるようになると学年有志チームや研究室チームの対抗試合に。種目もソフトボールに変更になりました。

 この様な経緯で本学科の伝統行事になるかと思われたソフトボール大会ですが、ご多分に漏れずコロナ禍によって中断ということに。そして今年、「新生」スポーツ大会を実施できることになりました。

 今回から種目はバレーボールに。会場も八王子キャンパスの体育館を借りて屋内での実施に。この時期屋外での球技大会は気温的に厳しい。また、屋内実施ということでソフトボールという訳にはいきませんよね。

 さて、球技大会の開会式は10時から。でも体育館は8時半から開場していて、多くの学生さん達が開会式よりずっと早くに来て肩ならしをしていました。

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 こちらの写真は開会式の一部として行ったラジオ体操。応用化学科の学生さんが一斉にラジオ体操をしている風景はちょっとレアですね。

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2023.09.01

「関東大震災」がもう一度起こったら?(江頭教授)

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 本日9月1日は防災の日。関東大震災が9月1日に起こった事にちなんでこの日が防災の日とされているのですが、今年は関東大震災からちょうど100年目にあたるのだそうです。もう1世紀たった、ということなのですね。

 さて、地震というもののメカニズムから考えて同じ様な地震がもう一度起こることは想像に難くありません。山根博士風に「あの地震が最後の1回とは思えない」ということで、もう一度「関東大震災」が起こったらどうなるのか、ということを想像した人は数多くいたでしょう。

 その中の一人がSF小説家の小松左京氏。その作品「日本沈没」という小説は1973年に出版され大ベストセラーとなりました。東宝によって映画化もされ、これも大ヒットしたのでした。

 この小説、そして映画の中でも第2次関東大震災は描写されていますが、以下の様に「死者 行方不明 360万人」という、日本人の30人に1人が死亡する途方もない規模の災害として描かれています。

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