世界は変化するけれど思ったほど良くはならないなあ、というはなし(江頭教授)
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大学で助手(今で言う助教)をしていた頃の話です。センター試験(今で言う共通テスト)の試験監督を担当したのですが、社会の試験の開始と同時に問題文の訂正を黒板に書くように指示されました。詳しい文言は定かではありませんが
問題文中の「ソビエト連邦」は「ロシア連邦」と読み替えてください
という指示でした。センター試験の問題が作られた後、印刷など準備をしているうちにソビエト連邦が崩壊してしまった。それでやむなくこのような対応になったのですね。つまり問題作成者の人たち(それなりに社会や歴史に詳しい人たちのはず)ですら試験日までソビエト連邦が保たないなどとは考えなかった。それほどまでにソビエト連邦の崩壊は急速で劇的な出来事だった、ということなのでしょう。
ソビエト崩壊が1991年の事ですから、これはおそらく1992年の早春のセンター試験だったのでしょう。ソビエト崩壊といえば歴史に残る一大事ですが、私という一個人はこのような形でその大事件に触れた、ということになるのです。
さて、ソビエト連邦の崩壊は冷戦終結の大きなステップでもありました。冷戦下では「全面核戦争による人類滅亡」の恐怖が常にリアルに存在し続けていたのですから、私はその終結に言いようもない開放感を感じたものです。「さあ、これから世界は一直線に発展し続けるんだ!」などと素直に考えていました。
とまあ、これが約30年前のお話。今から振り返ってみるとさすがに期待外れとしか言いようがありません。
当時「歴史の終焉」という本が流行ったのですが、気分はまさに「ごちゃごちゃした歴史は終わりを告げてこれからは発展一直線だ」という感じで浮かれていたのですね。でも「歴史はくり返す」と言うべきでしょうか。新生したロシアは期待されたように民主主義国家となって西側諸国に一員になることはありませんでした。また、核戦争の脅威は今も解決されていない、どころか状況は悪化しつつあります。
今後、私はまた何かの形で新たな歴史に残る一大事に触れることになるのでしょうか。残念ながら全くワクワクしないのですが…。
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