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氷河期から温暖化へ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ここのところ過去に考えた未来と本当に来た未来の違いについての記事を書いているのですが、今回も同じ趣向で気候変動について書きましょう。今現在の人間の活動に適した気候が変化してしまうかも知れない。これはある種の根源的な恐怖であって、どうしても人々の(特に少年の)興味を引きつけてしまいます。私も子供の頃からそんな話題が大好物(不謹慎ですが)でした。

 まず何より、地球の気候が今と全く異なっていて、ひどく寒冷であった期間、つまり氷河期というものが本当に存在し、その発生理由は(少なくとも現在まで)はっきりと理解されておらず、いつまた次の氷河期がやってくるか分からない、という事実は子供の頃の私にとっては大きな恐怖でした。もし次の氷河期がやってきたら人類は生き残ることができるのだろうか。などと興奮しつつ心配していたものです。Hyougaki_mammoth

 今の私は「氷河期が始まるとしてもその変化にかかる時間は長く、極めてゆっくりと起こるものだ」ということを知っていますし、その様な変化に対してなら「人類は充分に対応できるはずだ」と思えるほどには人間のことを信じています。私の子供の頃の「氷河期」への恐怖心はまさに子供時代特有の熱中だったのですね。

 しかし、その後に続いた気候変動に関する恐怖の対象は全く逆の「温暖化」でした。こちらは人間の活動が原因だとされていて、地質時代の変遷のよりはずっと早く進展することが危惧されていました。

 私がこの考え方に触れる様になったのはもう少年とは言えない年齢になって大学で化学工学を学んでいたころ、1980年代の半ばぐらいのことです。当初は「暴走温室効果」と呼ばれる「気温の上昇が止まらなくなって、地球がそもそも人間の生息に適さない星になってしまう」というシナリオ、つまりはっきりとした「人類滅亡のシナリオ」があり得る、と考えた私はその事実に(「大好物」などと言っていられない)本当の恐怖を感じていたことを良く覚えています。

 もっとも、私はその後に上記のような意味での「暴走温室効果」の起こる可能は低いこと、たとえ「暴走温室効果」に発展しないとしても温暖化の人間社会への影響は甚大であることを知るようになりました。おかげで私は恐怖に飲み込まれることなくこの問題についていろいろと考えを巡らせることができる様になりました。ある意味で私は「真剣さ」の様なものを失ったのかも知れませんが、この変化を経て恐怖を克服することができたことを私は素直に良かったと思っています。

江頭 靖幸

 

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