30年前に考えた人類の未来の思い出(江頭教授)
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前回の記事では約30年前の冷戦終結の際の私の個人的な感想を書かせてもらいました。
「さあ、これから世界は一直線に発展し続けるんだ!」
というのがそれ。今回は「一直線に発展し続ける」という点について少し補足したいと思います。
私は1962年生まれで今年60歳です。私が生まれてすぐの1964年には最初の東京オリンピックが開催されました。これは、日本が戦後の混乱を脱してかつての、いえ、それ以上の繁栄を取り戻したことを世界に向けて発信するイベントでもありました。わたしの子供時代はこれに続く高度経済成長の期間とほぼ一致しているのです。高度経済成長は石油ショックにより一時は中断したもののその後も高いレベルでの経済成長が続きました。冷戦終結の1991年はバブル景気の真っ最中であり、その年に私は30歳少し前という年齢になっていました。
このような経験を通して、私は世の中は良くなっていくのが当たり前だ、という考えが根付いていました。しかし聞くところによると世界の全ての国々がそうなっている訳ではないようだ。どうやら発展を続けている日本は特殊なケースらしい、ということも気になっていたのです。
発展するのが「普通」で「自然」なのに、それが実現できない国々(今なら「発展途上国」と言うところですが当時は無遠慮に「後進国」と呼んでいました)には何か問題があるに違いない。おそらく共産圏の存在と冷戦がその理由なのだろう、と考えていたのです。
(出典:世界経済のネタ帳)
この「後進国」の中には、今では隔世の感がありますが、中国も入っていました。しかし市場経済を取り入れることによって急速に発展を遂げており、計画経済を維持してまさに「崩壊寸前」だったソビエト連邦とは際だったコントラストがついていたものです。
やはり共産主義にもとづく計画経済は間違っていて、ソビエト崩壊と冷戦終結によってそれが明らかになれば世界の「自然」な発展を遮るものは何もないだろう。
例えば、ソ連は崩壊したが中国は市場経済を導入して発展している。このまま経済の自由化が進み豊かになれば民主化されていつかは西側諸国の一員になるだろう、などと気楽に考えていたのですね。
さて、ここまでが30年前に考えたことですが、結果はどうなったのでしょうか。
まず、一部ではありますが当時の「後進国」は見事な発展を遂げました。が、当たっていたのはここまで。中国の民主化などいまでも遠い夢のようです。そしてなにより大きく外した点は日本がそれまでの様には発展しなかった事。そしてさらに大きく間違っていたのは、私自身が発展(正確には成長)をそれほど欲していなかった、という事でした。
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