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「フード・アクション・ニッポン」がいつの間にか「ニッポンフードシフト」になっていた件(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 「フード・アクション・ニッポン」は農林水産省の広報用のWEBサイトで、これについてこのブログで最初に書いたのがこちらの記事でした。「食料自給率を上げよう、と言いますが」というタイトルで、文字通り「食料自給率を上げよう」という「フード・アクション・ニッポン」の、延いては農林水産省の目標設定に対する疑問を書いたものです。

 食料自給率を上げる必要性は、要するに「世界的な食糧危機が起こったときのために平時から自給率を高めておかなくては」という主張でした。これ自体は耳に入りやすいのですが、よく考えてみると「世界的な食糧危機が起こる」という状況が今ひとつ想定できない。地球上のどこかで何かの作物が不作というのはあり得ても地球全体で全ての作物が不作というのは考え難いのではないか。だとしたら「世界的な食糧危機」は地球全体での物流の停止といったレベルの危機でしょう。そのときに自給率が高いことは望ましいことですが、それと平時の自給率に如何ほどの関係があるのだろうか。農作物の生産にはエネルギーが必要ですが、地球全体での物流の停止のような危機の状態でエネルギーの供給だけ安泰ということがあるのだろうか。もしエネルギー不足が起こったら平時と同じ食料生産はできず、せっかく高めた自給率も意味を成さないのでは、などなど疑問は尽きません。(実際ウクライナとロシアの戦争は食料危機であると同時にエネルギー危機でもありますよね。)

 とまあ、当初はこんな感じだった「フード・アクション・ニッポン」ですが、その次にこのブログで取り上げたのがこちらの記事。今度は「「フード・アクション・ニッポン」は迷走しているのでは?」というタイトルで、

以前、このサイトを取り上げたときは「食料自給率の向上」という目標には納得できない、(中略)と書きました。そのブログの影響でというわけではないのでしょうが、現在のフード・アクション・ニッポンの目標には「食料自給率の向上」が含まれていないのです。

という状態に。

 そして久々にこちらのサイトを覗こうとしたところ、何と「ニッポンフードシフト」に改名されていたのです。

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「ニッポンフードシフト」の目的は

日本社会が大きな変化に直面している今、これからの「食」はどうあるべきか。
食料自給率、環境との調和、新しい生活様式、健康への配慮、食育、サプライチェーンの状況など、私たちが真摯に向き合わなければならないテーマは少なくありません。

とうい前提の下、

消費者、生産者、食品関連事業者、日本の「食」を支えるあらゆる人々と行政が一体となって、考え、議論し、行動する国民運動「ニッポンフードシフト」始まります。

とのこと。

「食料自給率」というワードは残っているのですが、はて「ニッポンフードシフト」の運営者、延いては農林水産省は「食料自給率」をどうしたいのかについて、明確な言及はなくなってしまいました。

 これは日本政府が「食料自給率」向上を、すでに目標とはしていないということなのでしょうか。人々と行政が一体となって、考え、議論し、行動することを促したいのならもう少し情報の出し方があるのではないか、などと考えてしまうリニューアルでした。

江頭 靖幸

 

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