2050年は近い将来か遠い未来か(江頭教授)
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今回は前回の記事の続き。大学院の学生さんに「2050年、日本のエネルギー自立は成るか」と題して
2050年の時点で日本がエネルギー的に自立している可能性は何%くらいだと予想しますか?
というレポートを書いてもらった、その感想です。
上記の課題、学生さん達の評価は仲々厳しいもので自立している可能性は概して低く予想されていました。0%という予想も一人や二人ではありません。それぞれいろいろな視点・論点からの予想を説明してくれたのですが、そのなかで印象的だったのが、少なくない人たちが
日本のエネルギー的に自立は可能だが、2050年までと考えると時間的に難しい
と述べていたことです。
えっ、2050年なんてずっと先に話じゃないの。
2050年というと私は88歳になっている計算ですから寿命が持つかどうか、半々といったところでしょう。そんな私は、どうやら無意識に2050年を遠い未来のことのように考えていたようです。でも20代前半の学生さん達にとって2050年は「自分達が働き盛りの時期」で現在とリアルに地続きな近い将来なのですね。
とはいえ、60歳の私と20代の学生さん達の「約30年」という時間に対する感じ方の違いには他にも理由があるのではないかと思います。
図は世界経済のネタ帳より
私が20代だったのは1980年ごろ。それまでの20年間、とくのその前半は高度経済成長の時代で世の中がどんどん変化していた時期なのです。白黒テレビがカラーテレビになって…とか、新宿にどんどん高層ビルが建つようになって、など今の学生さん達には何を言っているのか分からないくらいの世の中の変化というものを私は肌で感じて成長してきたのです。ですから、20年や30年という期間は世の中が大きく変化するための時間としても充分長いように感じるのです。
翻って、今20代の学生さん達が経験してきた社会は2000年以降の日本です。上に引用したGDPの変化に代表されるように2000年以降の社会の変化はそれほど大きくはない。GDPだけが社会の指標ではありませんが、たとえば私は新幹線は私が生まれた後すぐに作られたもので、真新しい最新のシステムとしての新幹線を知っています。その一方で今の学生さんにとっての新幹線は生まれるまえからずっとあって、今もあり続けるものなのではないでしょうか。私はマイコンがパソコンと呼ばれるようになった経緯とか、インターネットが世の中にひろがった過程などを知っていますが、これも今の学生さん達からすれば生まれるまえからずっとあって、今もあり続けるものでしょう。
私も冷静に考えると「30年程度で社会インフラが入れ替わるはずがない」と思います。ですから学生さん達が「2050年までと考えると時間的に難しい」と考えるのは至極当然で、私の「2050年なんてずっと先に話」という感覚が間違っていることも自覚しています。それでも、若い人に「世の中は変わる」という気持ちを持ってほしい、そんなノスタルジックな感情が私の中にもあるのだな、と、そんな事を感じたのでした。
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