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「環境が悪いのが環境問題ではない」という話(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 新学期がはじまって私はまた「サステイナブル環境化学」の授業を始めました。いつもこの授業では「環境問題」とは何か、についての説明をしています。

 まず環境にもいろいろありまして、「家庭環境」とか「投資環境」とかね。でもそれは「サステイナブル環境化学」であつかう環境ではない、などと言う話を枕にして最初に強調するのが表題の「環境が悪いのが環境問題ではない」とうことです。

 例えば日本は夏は暑くて冬は寒い国です。暑い夏も寒い冬も環境が良いとは言えません。でもそれだけなら別に環境問題と言うことはないでしょう。問題なのは夏がどんどん暑くなる、とか冬が余り寒くならない、という変化が起こる場合です。

 世界い目を転じれば凍てつくツンドラや乾ききった沙漠など、劣悪な環境条件の場所はいくらもあるのです。でもそれが自然の状態であるならば、必ずそこにはその環境に応じた生態系が存在し、そこで生業を営む人々があるはずです。部外者の目には劣悪に見える環境もその人々にとっては日常の一部。それが変化して日常が奪われることこそが問題である。環境問題の「問題」はそう言う部分なのです。

 

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 さて、環境に変化が起これば、その中には良い変化も悪い変化もあるでしょう。例えば温暖化について考えれば、元々気温が低かった場所なら多少の温度上昇は気にならない。それどころか農業生産の向上などのメリットもあるかも知れません。しかしだからといって「環境問題」が無いということはできないと思います。

 ただしここでは「環境問題」は解決不能な問題ではない、ということも述べておきましょう。そしてその解決は必ずしも環境の変化を無かったことにする、旧来の状態に復元することに限られる訳でもありません。先ほどふれた農業生産などにメリットのある環境の変化が起こった場合には、その変化を積極的に利用することもまた「環境問題」の解決(適応というべですね)なのです。

江頭 靖幸

 

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