「「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義 (講談社+α新書)」という本を買ったのですが…(江頭教授)
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「うーん、これは悩ましい本が来ちゃったなぁ、などと思いつつ本日推薦するのはこの本」という書き出しで以前紹介したのは「食欲人」という本でしたが、今回の本も悩ましい。
このブログのカテゴリーには「推薦図書」と「書評」とがあって、私は内容に応じて「推薦図書」にするかどうかを判断している。そこで「推薦図書」に入れるべきかどうかを悩んだのが「食欲人」だったのですが、今回の本はまた別の意味で悩ましいのです。
まず、件の本は
大西広著 「「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義 (講談社+α新書)」 講談社 (2023)
という本。今回購入したのは電子版です。
さて、私は「人類滅亡」とかが大好き、おっと、とても気になっているので「どのようなことが起これば人類が滅亡するのか」などと常に考えていて、授業で学生さんのレポートを書いてもらったりするぐらいです。
この本の「人口ゼロ」というのもそれに類するお話しに違いない。日本ぐらいの大きさの国なら人口の減少は起こったとしても完全に「人口ゼロ」になるという事象は仲々考え難い。それなりに広い国土に分散して多くの人間が住んでいるのですから社会としての多様性も大きいはず。例えば東京で人口減少が続いたとしても沖縄では人口が増えるとか。中長期で考えれば人口が増えるカルチャーの方が優勢になるはずで、それを覆して予測可能な期間の内に日本人が全ていなくなるという驚異的な結論を導き出す新理論と一体どんなものなのでしょうか!?ワクワクドキドキでポチったわけですが…。
まず序論から読み進めると、最初の図として「国立社会保障・人口問題研究所」の長期予測データが引用されているではありませんか。さらに文章中には「2080年頃まで見据え」て「現在の3分の2です。」と言っている。あのー、「人口ゼロ」はどこに行ったのでしょう?3分の2でも8千万人くらいいるので、さすがにゼロとは言えないのでは。
結局のところ「人口ゼロ」というのは「釣りタイトル」だったのですね。ガッカリです。
おっと、ここで「「人口ゼロ」の資本論」がなぜ「悩ましい本」なのかを説明しないといけませんね。
これまで私はブログに載せる本や記事については一応全部に目を通してから「書評」なり「推薦図書」のカテゴリーで記事を書いてきました。しかし、今回のこの本は残念ながら到底読み切ることができないと、途中で諦めてしまったのです。
人口問題についての議論なら(別段目新しいものは感じませんが)読み進めることもできると思うのですが、残念ながら本書は関係ないコメントが多くて本筋を追うのがつらいのです。特に目立つのが「マルクスはこれを予言していたのだ(こういう直接的な表現ではないですが)」「一見、この部分はマルクスが間違っているように見えるかもしれない、でもこう考えれば実は…」といった部分。著者の方にとっては重要なことなのかも知れませんが私にとってはどうでも良いんですよね。100年以上前の人やその著作についてなんでそんなに執着するんだろう。(私だって、例えば、ニュートン力学の正しさを「信じて」居るわけですが、プリンキピアにどんな風に書いてあったかなんて別に気にしていない、というか知りもしません。ていうか、ほとんどの人はそうなのでは。)
と、いうことで今回の記事は残念ながら「推薦図書」でも「書評」でもない、ということになったのです。
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