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2023年11月

2023.11.30

太陽はどれくらいのエネルギーを放出しているのか?(江頭教授)

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 地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーは莫大で、その一部を利用するだけで人類が必要とする全てのエネルギーがまかなえる、という話はよく聞きます。では視点を変えて、太陽自体はどのくらいのエネルギーを放出しているのか、その中のどの程度のエネルギーが地球に届くのか、それが今回のお題です。

 さて、この数字の求め方ですが、まずは太陽定数からスタートしましょう。太陽定数はこちらの記事で説明したとおり、「地球の外、地球の軌道上でみた太陽からの光のエネルギーの密度」の事で、その値は1367 W/m2 となるそうです。

 もう一つ必要な数字は太陽と地球の距離。これは149 597 870 700 m、約1.5×1011 m、つまり千五百億メートルです。正に天文学的な距離。それもそのはずでこれは「1天文単位=1au」という距離の単位として定義されているくらいです。

 さて、この2つの数字から太陽が発するエネルギーを計算することができます。

 まずは太陽と地球の距離を半径とする大きくて中空の球が太陽を囲んでいると考えてみましょう。太陽がこの巨大な球の中心に位置していれば球の内部はどの面でも同じエネルギーを受けていると考えられます。そのエネルギー密度、実は太陽定数のことですよね。

 巨大中空球の面積は 4×3.14×(1.5×10112 = 2.8×1023 m2 という計算になります。これに太陽定数をかけると

 2.8 ×1023 × 1367 = 3.8×1026

3.8×1026 W となります。うーん、数字が大きすぎてどう表現して良いかわかりませんね。化学の人間ならアボガドロ数の約600倍とでも言えば良いのでしょうか。

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2023.11.29

「未来を見たい」というはなし(江頭教授)

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 「今の若い人たちがうらやましい」と思っている大人(老人?)はたくさんいると思います。私もその一人でその理由もたくさんあるのですが、今一番に感じる理由は彼らが未来の世界を見ることができるから、です。

 もちろん、何時の時代も若者には未来を見るチャンスがあり、老人がそれをうらやましく思う、という構図はあったと思いますが、今、この時代は少し特別なのではないか、私にはそう思えるのです。

 少し大きな話になりますが産業革命以降、世界はどんどん変化するようになりました。私の祖父も、父も、亡くなるときには生まれたときの生活とは全く違うレベルの豊かな生活を送っていたものです。そして私もまたそうなるでしょう。

 世の中は進歩と発展を続けているのです。しかし、世界を見渡せば未だに産業革命の恩恵が行き渡っているとは言い難い国もあります。それでも、私が子供の頃、いえ、大人になってからもしばらくは東西冷戦が続いていて、世界は豊かになる以前に戦争で滅んでしまうのではないかという恐怖と共に暮らしていたのです。その冷戦が終結し、産業革命の完成を妨げるものはなにもなくなった様にみえました。私も一時は自分の生涯の内に世界中の人たちが豊かな暮らしを手に入れる理想的な世界が実現すると思ったこともありました。

 

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2023.11.28

海水を淡水化するにはどれくらいの圧力が必要か(江頭教授)

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 海水には塩分が含まれていてそのままでは飲み水として利用することはできません。もちろん、農業用水として利用することもできませんから大量の海の水を目の前にしながら水不足に悩む、という不条理なことが起こります。そこで、海水を淡水化する技術、具体的には海水の塩分と水とを分離する技術が求められてきました。


 一番簡単に思いつく水と塩との分離技術は蒸留でしょう。海水の水を蒸発させると塩が残って…あれっ、水は?水は水蒸気になってしまいますから、このままでは塩田で塩を造る技術になってしまいますね。ということで、実際に海水淡水化に用いられている技術は逆浸透という膜を利用する分離技術、つまり膜分離技術の一種です。


 「逆浸透」とは浸透の逆、という意味ですから、まずは「浸透」から。「浸透」という現象は高校の化学の「浸透圧」のところで説明されています。塩などが溶けている水と純粋な水を「半透膜(水は通すが塩は通さない膜)」を介して接触させると水が純水側から塩水側に向かって浸み透ってゆく現象が浸透、そのときの水が塩水に向かってしみ込もうとする圧力を浸透圧といいます。


 よく、純水側から塩水側に水が流れ込んで半透膜の両側で水位に差がつく、という表現がされています。塩水の方が水位が高くなるのですが、では塩水側に圧力をかけておけば水の流れ込みを阻止できる筈です。そのために必要な圧力が「浸透圧」ですが、では浸透圧以上の圧力をかけたらどうなるのでしょうか。


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今度は塩水側から純水側に水が流れるはずですが、その際、塩分は半透膜を通り抜けることができないので純粋な水だけが塩水から搾り取られる事になります。これを組織的に行うのが逆浸透という技術です。


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では、海水から純水を搾り取るにはどのくらいの圧力が必要なのでしょうか?

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2023.11.27

真空への気体の溶解度(江頭教授)

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 「ヘンリーの法則」は液体に溶ける気体の量は気体の圧力に比例するという法則ですね。あっ、温度一定という条件があります。

 「気体の量が圧力に比例する」という関係は液体、例えば水を一定の空間だと見なすと「ボイルの法則」とそっくりです。これを逆にみて真空を一つの液体とみなして、ボイルの法則をヘンリーの法則に読み替えて「真空への気体の溶解度」を計算してみよう、というのが今回のお題です。

 まず本当の気体の溶解度の数値を見てみましょう。1.01×105Paの気体が0℃の水1Lに溶ける物質量を教科書の表から拾ってみると

H2 0.98×10-3mol

N2 1.06×10-3mol

O2 2.19×10-3mol

CO2 76.5×10-3mol

HCl 23.1mol

となります。

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 ではお待ちかね。1.01×105Paの気体が0℃の真空1Lに溶ける物質量、つまり0℃、1Lに存在する1.01×105Paの気体の物質量を求めてみましょう。状態方程式が…という計算もできますが、0℃1気圧の理想気体1molは22.4Lという数値を覚えておけばすぐ計算できます。

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2023.11.24

郵便番号192-0982(江頭教授)

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 郵便番号 192-0982、これは本学の八王子キャンパスの郵便番号です。本学ホームページにも下の図の様にしっかり書いてあります。

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 ここには、キャンパスの所在地は八王子市の片倉町だ、ともあります。

 なるほど、じゃあ八王子キャンパスのある片倉町一帯の郵便番号がこれなんだな、と思って郵便局の郵便番号検索を使って調べると意外にも片倉町の郵便番号は192-0914だ、と出てきます。

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あれ?どうなっているのでしょうか。

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2023.11.23

COガスの不純物(江頭教授)(江頭教授)

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 私が学生だった頃の話です。一酸化炭素、COを使ってNOを還元する触媒の反応実験を行っていました。粉状の触媒を内径10mm程度のガラス管に詰めて周囲から加熱、COを含んだガスを送り込み、反応ガスを分析する。そんな実験をルーチンで何回もくり返していたのですが、実験を始めてしばらくすると触媒を入れるガラス管に黒っぽい汚れがつき始めました。

 この汚れ、ガラス管が加熱用ヒーターで暖められている部分、ガスの流れの上流側、内側についていました。洗ってもとれませんし、触媒に直接接触する部分でもないので、そのまま使い続けているとだんだん黒さが増してくる。やがて黒い色から金属光沢を示す様になってきます。

「一体、これは何だろう?」

 研究室の仲間に相談するとすぐディスカッションが始まります。

「ガラス管の内側、ガスが加熱されてすぐの場所で生成しているのだから供給されたガス内の何かが固体になったはず。」

「供給されているのはCOとNO。希釈用のHeはさすがに無視して良いはずだからC、N、Oでできたもののはずだ。光沢のある固体として考えられるのは炭素、グラファイトだろうか。」

「でも、数百度程度の温度で炭素の析出が起こるとは考えにくい。」

「ガラス管の上流と下流で原料の濃度はそんなには変わっていない。にもかかわらず上流にしか発生しないというのもおかしい。」

「これは原料そのものではなくて、原料に不純物が含まれているのでは。不純物は加熱されて分解し、この金属光沢のある物質となるのだろう。入口近くですべての不純物が分解し、それより下流には影響が出ないわけだ。」

 などなど、結論は出なかったのですが、「他の研究室でも同じ現象が起こっている」という耳寄り情報もありました。結局、そちらから原因を教えてもらったのですが、ガラス管にくっついている物質は鉄、それもボンベの内側の鉄がガスと一緒に運ばれてきたものだ、というのです。

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2023.11.22

クレジットカードで失敗したはなし(江頭教授)

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 いや、失敗したと言っても「莫大な借金を抱えた」とかいう話ではないということを先にお断りしておきましょう。「110円損した!」というお話し。それにクレジットカード会社が悪いわけではないということも先にお断りしておきます。

 家に帰って郵便受けをみるとクレジットカードの「ご利用明細」の葉書が届いていました。以前は封書で紙に印刷したものが送られてきたものですが最近は葉書に代わっています。これも経費削減なのでしょうか。葉書ののり付けされた内側を開いみるとそこに「ご利用明細書発行の有料化について」とのタイトルが。「今回のご請求分より」明細書の発行手が有料化されるそうです。ついでに「Web明細なら発行手数料は無料」とのPRもありました。

 そりゃそうですよね。Web明細は一度システムさえ作れば利用者数にかかわらずコストはほとんど同じ。それに対して郵送される明細書には一通一通にしっかりとコストがかかります。カード会社としてはWeb明細をはじめた時から全面的にWeb明細に移行してすぐにでも葉書の明細書は無くしたかったのではないでしょうか。

 かく言う私も普段からWeb明細を利用していて葉書の(いや、以前は印刷された紙の)明細書は事実上利用していませんでした。Web明細に移行しても別に問題無かったのです。それなのに今月分の葉書をもらったために手数料「110円」を徴収されることになってしまいました。いや、そうと分かっていたら移行したのに。

 「えぇ、ちょっとまって。手数料をとるのはせめて来月からにしてよ。」

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2023.11.21

工学基礎実験Ⅱ(C)「レポート発表、講評、ディスカッション」(江頭教授)

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 応用化学科の1年生の学生実験は「工学基礎実験」という名称です。工学部共通の命名なので応用化学では正確には「工学基礎実験(C)」。前期はⅠなので今学期、後期の1年生の学生実験は「工学基礎実験Ⅱ(C)」となります。

 さて、後期も始まって8週間。折り返し点を越えて半分の実験が終了したので表題の「レポート発表、講評、ディスカッション」を開きました。提出されたレポートを教員がみて、これは、と思えるレポートを書いた学生さんに発表を依頼。学生さん同士の質疑応答と、それに加えて教員からの講評を行う、という会です。実験後半にも同じ趣旨の会を実施しますので、正確には「レポート発表、講評、ディスカッション(1)」ですね。

 コロナ禍の影響でオンライン実施になったり、「対面ただし遠隔受講可」というハイブリッド形式になったりしたこの発表会も最近はすっかり対面での実施が普通となりました。

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2023.11.20

「サステイナブル工学研究会~学びの祭典~」が開催されました(江頭教授)

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 皆さんの中で「大学院フェスティバル」という言葉を聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか?

 という書き方で紹介してきたこのイベント、前回からは「サステイナブル工学研究会 ~学びの祭典~」と名前を変えて今年も開催。これで5回目の実施となりました。

 本学工学部に接続している大学院、サステイナブル工学専攻が毎年開催しているイベントでスタート時点では対象者を本学の学部学生として大学院生が学部生に向けて自分がどんな研究をしているのかを紹介する、というイベントでした。その後、外部の先生たちにお願いした招待講演、本学科の若手の先生たちが学生時代から研究者を目指して現在に至るまで道を振り返るパネルディスカッションも加わり、学外から高校生の皆さんの参加もあり、という調子で順調に発展しています。今年は250人を超える参加者が集まっての開催となりました。

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2023.11.17

ネコロボ(ネコ型配膳ロボット)を見た(江頭教授)

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 少子高齢化が続く日本では慢性的な人手不足がつづきます。その対策としていろいろな分野での省力化・省人化が必要で、その決め手の1つがロボットの導入。とまあ、そんな堅苦しい前置きをしなくてもファミリーレストランでの配膳ロボット、しかも猫をモチーフにしたロボットの大量導入というのは話題のニュースだったと思います。

 で、このニュース自体は少し前のお話しだったのですが、私も先日、はじめて本物のネコロボをみた、というのが今回のお話し。

 久々にあった他大学の先生と食事を、ということで中華料理専門のファミレスに入ったのですがその時点ではネコロボのいる店だとは気が付いていませんでした。まず注文がタブレットを利用する形になっているのをみて「やっぱり人手不足なんだなあ」などと思ったくらい。メニューに飲み物がお酒しかないと思ったらソフトドリンクはセルフサービスのドリンクバー一択、というのも人手不足への対応でしょうか。

 さて、タブレットでの注文を終わってしばらくすると件のネコロボがやってきました。そのときはじめてこの店がロボットを導入した会社の系列店であることを思いだした次第です。

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2023.11.16

インフルエンザの季節…なのか?(江頭教授)

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 最近授業を休む学生さんがちょくちょく目立つ様になりました。連絡をくれると決まって「インフルエンザにかかりました」とのこと。聞けば他の学科・学部の先生たちも同じ様子。ひょっとしてインフルエンザが流行っているのだろうか?

 ということでちょっと調べてみました。以下のグラフは国立感染症研究所の「インフルエンザ過去10年間との比較グラフ(第43週 11/10更新)」という記事から引用のです。

 いや、これは一体どういうことなのでしょう。43週というと10月末から11月初めのころで、本来はインフルエンザが流行する季節には早すぎなのです。2023年のデータは明らかに異常。例年に比べて比較にならない高レベル。大きな流行の波の年末ごろのレベルに近い値がすでに記録されているという状況です。

 このデータを一体どう見るのか。「今年の末から来年の初めにかけて空前のインフルエンザの大流行が起こる」とするとこれはとんでもないことです。とはいえ「この冬のインフルエンザの流行は10週間ほど前倒しだ」という見方もあるでしょう。一体これからどうなるのかは分かりませんが、私たち一人一人にできることは「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」それに「三密を避ける」でしょうか。

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2023.11.15

イチョウ並木の黄葉(江頭教授)

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 本学キャンパスのイチョウについては時々このブログでも紹介しています。まず記録のために以下の写真の撮影日を書いておきましょう。2023年11月14日火曜日朝の写真です。

 まず1枚目の写真。東京工科大学八王子キャンパス正門のイチョウ並木はすっかり黄色くなりました。もう秋ですね。

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 こちらは先の写真の中の1本。立派に黄葉していて「ザ・秋のイチョウ」という感じですね。

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とはいえ中には残念なものも。

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2023.11.14

今日で第3クォーターの授業は終了です(江頭教授)

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「今日で授業終了って、いくら何でも早すぎでは?」と思ったそこのあなた、あなたは正しい。本学の授業はもちろん、明日も続きます。

 ここで言っているのはクォーター制の授業についてです。あなたが高校生なら学校は3学期制でしょうか?それとも2学期制でしょうか?本学は基本的には2学期制、というか大学なのでセメスター制と呼ばれる「14週間の授業+期末試験を年2サイクル」というスタイルですが、一部の授業はクォーター制で、年4サイクルの授業を行っているのです。そして今日は第3クォーターの授業最後の日、というわけ。でも明日からすぐに第4クォーターが始まるので特別感は薄いかも。

 さて、我々応用化学科が所属する本学工学部のクォーター制ですが、これはコーオプ実習(企業と共同で行う1日8時間週5日7週間の企業実習)をカリキュラムに組み込むために導入されたもの。学部の立ち上げ時から準備された制度故の仕組みです。

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2023.11.13

半導体とアイスクリームの市場規模(江頭教授)

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 今からもう30年か40年くらい前のことでしょうか。当時、半導体に関係する仕事をしていたのですが「半導体の市場規模はアイスクリームの市場規模よりも小さい」という話を聞いたことがあります。「半導体の市場規模ってそんなに小さいのか」と驚くべきなのか「アイスクリームの市場規模ってそんなに大きいのか」と驚くべきなのか、人それぞれかとは思いますがどちらの立場から見ても意外性のある比較なので記憶に残っていたのでしょう。ついこないだも話のながれでこのセリフがふと口をついて出てきたのでした。

えっ、本当ですか?

いや、もうずいぶん昔の話だから。そういう時代もあったということだよ。

そうですよね。さすがに今はそんなことはないですよね。

といった結論になりました。今の世の中、PCやスマホに限らずほとんど全ての電気製品、いえいえ、機械や装置の類には必ず半導体を中心とした電気回路が入っているはずですからね。でもデータを見ずに結論というのは良くないなあ。ということで少し調べてみることにしました。

 まずは半導体の市場規模について。総務省の「情報通信白書令和5年版 データ集」には「日本の半導体市場(出荷額)の推移」として以下の様なグラフが示されていました。

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日本の半導体の市場規模は77億ドルくらいのようです。ではアイスクリームはどうでしょうか。

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2023.11.10

格好良い文章とは(江頭教授)

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 1962年生まれの私の中学・高校時代と言えば昭和50年(1975年)から昭和56年(1981年)となります。インターネットもまだアメリカの軍事技術だった時代で(今に比べれば)娯楽の少ない時代。学校の図書館からいろいろな本を借りだして読むのが私の楽しみでした。

 内容に余りこだわりなくいろいろな本を読んでいたのですが、そのなかで印象に残ったのが廣重徹氏の著作「科学の社会史」という本でした。

 いや、この本の内容が素晴らしかった、という訳ではありません。(いや、それなりに興味深くはありましたが。)その文体が格好良くて、当時高校生だった私はそこに「シビれ」て「あこがれ」ていたのです。

 高校生まで、いえ、大学に入っても卒論生になるまではあまり自分で文章を書く機会はなかったように思います。実験レポートなどは書いたはずですが、定型の書き方が中心で自分で文体を考える、という程ではありません。やがて卒論、修論、博士課程とすすむにつれて自分で文章を書く機会が増えると、格好良い文章を書きたい、という気持ちが芽生えてきました。

そう言えば「科学の社会史」は凄く格好良い文章だったはず。あれを参考にしよう。

と思いついて、何とかこの本を入手して、再読してみたのでした。

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2023.11.09

自分の文章は好き?嫌い?(江頭教授)

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 我々応用化学科が属している本学工学部、その工学部に接続している大学院は本学大学院の「サステイナブル工学専攻」です。私はその中で「サステイナブル工学概論」という授業を受け持っているのですが、その中で学生さん達(ここでは大学院の学生さんですね)にいろいろなレポートを書いてもらっているのことは以前にこのブログでも紹介しました。(こちらとか、こちらとか。)

 さて、先日のその授業では「サステイナブル工学」と自分の研究について述べなさい、という課題をだしました。提出されたレポートはどれも読み応えがあり、皆さんそれぞれに「サステイナブル工学」とは何かについて考えをまとめてくれていました。その中で本学のホームページの引用もちらほら。そう言えばどんな説明をしているんだっけ?

サステイナブル社会とは

20世紀から21世紀にかけて、科学技術の爆発的な発展によって、地球は70億人を超える人々が豊かに暮らす惑星となりました。私達にはこの豊かさを子々孫々にまで引き継いでゆく、持続してゆく義務があります。

同時に私達は、貴重な資源やエネルギーの枯渇、環境の汚染や地球温暖化など地球の限界に由来する問題に直面しています。この問題の克服なくして私達の豊かな社会を持続可能にする=サステイナブルにすることはできません。

従来は「産業・経済」「人間・生活」の協調と対立の場として理解されていた社会に、新たに地球の限界、つまり「自然・環境」という要素が加わりました。「サステイナブル社会」はそれらが調和を保ちながら健全な発展を続けていく社会であり、現在、世界中でその具現化をめざす取り組みが始まっています。

これは仲々、いや、かなり素晴らしい文章なのでは。

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2023.11.08

自分の声は好き?嫌い?(江頭教授)

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 私がはじめて「自分の声」を聞いたのは…って、普通に声をだせば自分の耳にも聞こえるわけですが、そうではなくて録音した自分の声を聞いたのは、という意味です。ずいぶん小さい頃、おそらく私が小学校入学前か、あるいは小学校の低学年だったころかと思います。叔父が持っていたオープンリールのテープレコーダーで録音してもらったのですが、そのとき何をしゃべったのか、そして自分の声についてどう思ったかは、ほとんど、というか全く覚えていません。

 その後、小学校の高学年くらいでしょうか。自分の家にもカセットテープレコーダーが来ると、自分で自分の声を録音して自分の声を聞く、ということが可能になりました。で、自分の声を聞いての感想ですが、当時の私は自分の声が嫌いだと感じていたのでした。

 自分が話をしているときに自分に聞こえている声と、録音して聞く声が結構違っている。録音した声の方が甲高くて、子供っぽい声(いや、本当に子供ですから)に聞こえたのがいやだったのでしょう。

 その後、別に録音した自分の声を聞くという機会はほとんどなかったのですが、コロナ禍を機に自分の授業を録画・録音するようになって少し状況が変わってきました。

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2023.11.07

「サステナビリティ」は何に対する言葉なのか?(江頭教授)

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 昨日の記事では「人類の共通目標」について考えてみました。

 それには「人類の存続」が相応しい。何故ならどのような立場、どのような価値観の人にも受け入れられるからだ、と述べた上で

これって「サステイナビリティ」ってことですよね。

と言い換えました。

 自分で書いておいて何ですが、この言い換えにはすこしずるいところがある。今回はその点について述べたいと思います。

 「人類の存続」を本当に言い換えるなら本当は「人類のサステイナビリティ」であるべきです。そこを曖昧に「サステイナビリティ」と言っていしまうと、何が持続可能なのか、分からない表現になってしまいます。

 象徴的なのが国連のSDGsで言われる「誰一人取り残さない」という言葉。これは「サステイナビリティ」の対象は全ての人だ、と宣言しているワケです。でも「サステイナビリティ」が「人類の存続」という意味ならちゃんと存続できるだけの人口が生き残れば良いのだ、という理解もできるはずです。

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2023.11.06

価値観を超えた人類の共通目標としての「サステナビリティ」(江頭教授)

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 人類はいかなる共通目標を持つべきか、なんて哲学的な問を立てたとしたら一生答えを得られずに終わるでしょう。いや、話のスケールが大きすぎてまともに考える事すら難しいですよね。とにかく決めよう、と決断主義的になって(=諦めて)いるならともかく、誠実になればなるほどまともな回答には至らない。だって、人類の目標ですよ。何をどう考えて良いかは分かりませんが、何らかの結果を得て、そして一応、人類全員の同意を得ないとね。世界総選挙というか地球住民投票というか。いや、これは大変だ。

 では逆に考えて合意が得られることを最優先にすれば「人類の共通目標」を設定できるのでは。誰も反対しないことと言ったら…そうだ!誰だって死ぬのはいやだ。例え自分が死ぬのは仕方ないとしても自分につながる人たちには生きていてほしいはず。自分の家系から始まって国や人類全体、とにかく滅びて死に絶えることを良しとする人は居ないだろう。なら「人類の共通目標」は「人類の存続」で良いのでは。

 あっ、でもこれって「サステイナビリティ」ってことですよね。

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2023.11.03

今日(11月3日)は休日なのですが(江頭教授)

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「今日は何の日?」

「文化の日です。祝日でお休みの日です。」

はい、世間一般ではそうですね。ですが本学では今日、11月3日は祝日授業開講の日です。

 さて、祝日授業開講日について説明しましょう。 別に「祝日授業」という特別の授業がある訳ではありません。祝日ですが、「授業を開講」する日、という意味です。

「祝日なのに授業が有るなんて!」もしあなたが高校生(あるいは中学生、小学生)ならそう思うかも知れませんね。

 大学の科目は原則として14回の授業と1回の期末試験とで構成されています。ですから前期・後期、それぞれ15週間で終わります。つまり、年間30週間しか授業は無い、ということです。高校まではいつも授業があって、その間に休みがある、という感じでしたが、大学では30週間の授業を一年間に割り当てる形になっていて、それ以外は休み、ということになるのです。休日の意味合いが違いますよね。

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2023.11.02

「日本の文系大学院卒の就職率が学部卒より低いのはなぜ」なんだろう?(江頭教授)

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 ニューズウィーク日本版については以前このブログで記事を書いたことがあります。その際は雑誌(とはいえ電子版)についてのお話しだったのですが、今回はニューズウィーク日本版のWEBサイトの記事について書きたいと思います。記事のタイトルは

日本の文系大学院卒の就職率が学部卒より低いのはなぜか?」というもの。

 日付は2023年11月1日(水)11時30分となっています。著者については…敢えてここでは書かないことにしましょう。

 私も大学関係者の一人なので、この様なタイトルがあると気になってしまいます。で、その内容について。まず、議論の元になるデータは文科省の「学校基本調査」(2022年度)です。そして大学学部卒業生の就職率と修士課程修了生の就職率との比較を行っています。

 そして学部卒業生の就職率とくらべて修士卒の就職率は微減するとのこと。さらに理工系は大学院に進んだ修士の方が就職率が上がるのに対して、文系、とくに人文科学、社会科学では下がってしまうことを示しています。

 ここまではデータです。で、その後に「何故か」の説明があるのですが、結局企業が求めるのは「(大学院が向上させる)学力や能力」を発揮する人材ではなくて「従順な労働力」なのだ、としています。

 うーん、それってあなたの感想ですよね。

とまあ、あきれたのですがそれでわざわざブログを書こうとは思いません。私が問題だと思ったのはその続きの部分です。

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2023.11.01

ハロウィンにやってくる「カボチャ大王」を信じていたはなし(江頭教授)

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 「ハロウィン」というものが日本で一般に知られる様になったのはいつ頃からなのでしょうか。少なくとも私の子供時代(1960年代後半から1970年代)には余り知られていない西洋のお祭り、くらいの扱いだったと思います。海外製のドラマなどで「そーゆーお祭りがあるのだな」と知る程度。

 ハロウィンには子供達が近所の家を回って「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ(Trick or Treat)」といってお菓子をもらうそうな。それにカボチャの実をくりぬいたかぶり物をして仮装するんだっけ。

 あ、そうそう、ハロウィンと言えば「カボチャ大王」も忘れちゃいけない。ハロウィンの夜によい子の皆にプレゼントを配って回るのですよね。

とまあ、これが私の認識だったのですが…。

 いや、「カボチャ大王」っていうのはピーナッツ(チャールズ・M・シュルツ氏の漫画。スヌーピーと言った方が通りが良いかも)に登場するネタの1つだったのですね。私は割と真面目に信じていたのです。だって、ほら、当時はハロウィンについての情報が少なかったですから。

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