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「サステイナブル工学」とは何か ー サステイナブルな食生活を考えてみよう(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 いや、私は健康とか医療とかに特別な知識がある人間ではないので、真面目に人様の食生活について云々することはできません。今回の話はあくまでも「サステイナブル工学」とは何か、というお話しで、例え話として食生活を題材にしたい、ということなのです。ですからこの話の食生活に関する部分は話し半分にうけとってくださいね。

 さて、現代人の食生活には大きな問題がある、というのは周知のこと。カロリーの摂り過ぎとそれによる肥満というのが問題になって久しいのですが、我々はその問題を未だに解決することができません。これはおそらく人間の進化の過程が影響しているのでしょう。毎日決まった時間に食べ物にありつけるとは限らない状況であれば、余剰の食糧があれば食べてしまって脂肪の形で蓄えるが最適な選択です。しかし今や我々は自由に食糧を入手することができる様になりました。おいしいものを食べ過ぎれば脂肪が貯まって消費が間に合わない。サステイナブルな体重を超えて肥満に一直線という訳ですね。

 健康のことを考えればカロリーをある程度に制限してサステイナブルな食生活を送ることが必要なはず。でもやはりおいしいものはおいしいのです。つまり人間にとって「必要なもの」と「欲しいもの」とは今や一致していないのです。

 さて、ここでサステイナブル工学の話に移りましょう。

 従来の工学は人々が必要としていて欲しいとおもっているものを作り出すことがその責務でした。

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 例えばハーバーボッシュ法。窒素肥料を無限に生み出す技術は食糧の生産を増やし、人々はおなかいっぱい食べることができるようになりました。当時は「必要なもの」と「欲しいもの」とが一致していたのですね。

 さて、その後どうなったのでしょうか。化石燃料を使っていろいろ便利なもの、つまり「欲しいもの」が作られたのですがそれらは本当に「必要なもの」なのか。とくに化石燃料から発生する余剰の二酸化炭素の蓄積が気候変動という問題を起こすおとが知られてた今でも必要と言い切れるのか。

 という問題設定、私は「サステイナブル」的だと思いますが「工学」的ではないと思うのです。私が思う「工学」的な解決方法は「必要なもの」と「欲しいもの」とを再び一致させることです。

 分かりにくいでしょうか。再び食生活の例に戻って説明したい思うのですが、「欲しい」と思うだけ食べると「必要」以上に食べてしまう、というジレンマの解決策は「欲しい」と思う心を意志の力で押さえつけることだけではないでしょう。「欲しい」だけ食べても太らない食品とか「必要」以上の欲しくならない食欲抑制剤とか。なにか邪道のような気がしますが、工学というのは本来そうのようなものではないでしょうか?

 再度「サステイナブル工学」に戻りましょう。直近の地球の環境を前提にすれば「欲しいもの」を作っても温室効果ガスを排出しないこと、これが「サステイナブル工学」の目標となります。こう言う表現だと「邪道」には感じないのでは?

江頭 靖幸

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