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2024年2月

2024.02.29

水俣病とアセトアルデヒド(江頭教授)

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 水俣病の原因は水銀、それも有機水銀と呼ばれたメチル水銀が体内に取り込まれたことによる重金属中毒である、ということは良く知られていると思います。メチル水銀を放出したのはチッソの水俣工場だった、これも良く知られているのではないでしょうか。

 では、チッソ水俣工場では何を作っていたのか。正確にはチッソ水俣工場のどのプロセス、何を造るプラントからメチル水銀が流出したのでしょうか。ここまで来ると知っている、という人は少ないと思います。

 答えは「アセトアルデヒド」。アセトアルデヒドを造っているプラントからメチル水銀が流れ出たのです。(まあ、化学に詳しくないひとは「アセトアルデヒド」とは何ですか、となるだけでしょうが...。)

 さて、今回のお題。このアセトアルデヒドは今、どのように作られているのでしょうか。他のアセトアルデヒド製造プラントから再びメチル水銀が流出し、新たな水俣病を起こす可能性はないのでしょうか。

 まず確認しましょう。アセトアルデヒドは炭素、酸素、水素からなる有機化合物であって、水銀を含んではいません。アセトアルデヒドは当時、アセチレンと水を反応させて作られていましたから、原料物質にも水銀は含まれていません。

 当時のアセトアルデヒド製造プラントでは水銀は触媒として利用されていました。触媒は「自身は変化することなく、反応を加速させるもの」なので、本来はプラントから排出する必要はありません。水銀は安価な物質ではありませんから、廃液から水銀を回収した方が有利なはずなのですが...。

 実際に、水俣病が発生した当時、水銀を触媒として利用していたアルデヒド製造プラントは日本国内にも6基以上あったそうですが、メチル水銀が流出して水俣病が起こったケースは2件だけです。なぜ、こんな事が起こるのか、についてはこのページで紹介した書籍「水俣病の科学(西村 肇, 岡本 達明 著 日本評論社)」に詳細な考察が述べられていますので参照してください。

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2024.02.28

世界中の石炭が燃えたらどうなるか(江頭教授)

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 「世界中の石炭が燃えたらどうなるか」なんてことを思いつきました、というのが今回のお話し。

 さっそく「世界中の石炭」から始めましょう。資源エネルギー庁のエネルギー白書によると世界の石炭確認埋蔵量は1兆741億トン。まあ1兆トンですね。これが全て炭素だとしましょう。(本当は灰分という不純物があるのですが、これは無視しましょう。)炭素の原子量12で割って 8.95×1016 mol となります。これが全部二酸化炭素になると3.94×1018 g あるいは約4兆トンですね。

 現在の世界の二酸化炭素排出量は300億トン程度ですから約130年分。

 体積にすれば 8.95×1016 mol × 22.4 L/mol = 2.0×1018 L = 2.0 ×1015 mなので、1000兆立方メートル。(「子供の喧嘩か!」という数字ですねえ。)

 これが大気中に放出された一体どうなるのでしょうか。

 

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2024.02.27

授業点検に参加した「プロセス工学」の授業(江頭教授)

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 前回の書き出しはこんな感じでした

「授業点検」という本学の制度についてはこのブログでも紹介したことがあります(こちらの記事とか)。今年の後期の授業点検に「プロセス工学」という科目があったので、ああっ「懐かしいなあ」と思った、というのが今回のお話し。

で、前回の記事、よく見たら肝心の授業点検に参加した「プロセス工学」の話をし忘れているではないですか。ということで、今回はそのお話しを。

 まずこの「プロセス工学」の授業、実は応用化学科の授業ではありません。本学工学部の三つある学科の一つ、電気電子工学科の授業なのです。前回紹介した「プロセス工学」が実は「化学プロセス工学」の事だったのに対して、この「プロセス工学」は「電気電子プロセス工学」…ではなくて、実質的に「半導体プロセス工学」なのです。

 電気電子工学科の先生に

この内容なら「半導体プロセス工学」という名称にするべきでは?

と聞いてみたのですが、

いや、「プロセス工学」といえば普通は「半導体プロセス工学」の事ですよ

とのこと。所変われば品変わる、とでも言うのでしょうか。

 

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2024.02.26

学生時代に受けた「プロセス工学」の授業(江頭教授)

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 「授業点検」という本学の制度についてはこのブログでも紹介したことがあります(こちらの記事とか)。今年の後期の授業点検に「プロセス工学」という科目があったので、ああっ「懐かしいなあ」と思った、というのが今回のお話し。

 私が大学の3年生の時の授業で担当は前回紹介したこちらの本を書かれた西村肇先生でした。教科書として指定されていたかどうか、よく覚えていないのですが、そのとき買ったプロセス工学関係の本が写真の「化学プロセス工学」という本。これは凄く難解な本で、通学途中に電車のなかでこの本を読んだところ、深い眠りに落ちて乗り過ごすこともしばしば、という有様でした。

 だとすると授業の方もさぞかし…と思いきや、これが凄くためになった、というか身になった授業だったのです。

 授業は教科書をまったく使用せず、演習問題を解くというスタイル。しかもその演習問題というのが1学期の授業で2問しかないのです。

 この授業は化学プロセス、つまり化学物質を合成して大量生産するための工場をどの様に設計するか、という内容でした。そのため、現実に存在するプロセスから例をとって、その簡単なモデル化と条件最適化をやってみよう、というのが演習問題なのです。簡単なモデル化、といってもそこは化学プラントのプロセスの問題。すぐに解けるような単純なものではありません。いくつかのステップに分けて複数回の授業時間をつかって問題の解説と解き方の説明が行われるのですが、それが科目の内容の説明を兼ねていたのです。問題を解く、という状況のおかげで単純に教科書を読むよりも理解が深まったように感じます。

 やがて数値計算で答えを出せるところまで理解が進んだのですが、利用できるのが当時出始めていたプログラムの組める電卓(こちらの記事で紹介しています)ぐらいしかなかったのですから、数値解を求めるのは相当に大変な作業でした。

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2024.02.23

推薦図書「水俣病の科学(西村 肇, 岡本 達明 著 日本評論社)」(江頭教授)

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 これは面白い本です。それも科学の面白さを伝えてくれる本だと思います。

 もちろん興味深い、とか考えさせられる、という面もあるのですがそれ以外の科学の面白さ、あえて言えば「スリリング」な面白さを感じさせてくれる、というのが私の感想です。

 内容は表題の通りで水俣病についての研究成果をまとめたものです。前半はかつてチッソの水俣工場で働いていた岡本氏が当時の状況を解説。水俣工場で水銀がどのように扱われていたか、など水俣病の原因特定までの議論の流れと対比すると興味深い内容です。

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2024.02.22

「pH」はなんと発音するのか?(江頭教授)

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 いや普通に「ペーハー」でしょう?

というと「世代がバレる」というニューストピックスが少し話題になっているようです。最近は「ピーエイチ」と読むのだとか。もしこのブログを読んでいるあなたが高校生なら「ピーエイチ」と読んでいるはず。いや、読んで字のごとし(注意、この言葉はそういう意味じゃないですよ)で普通に「ピーエイチ」だろ、と思うのでは。でも私達の世代(私は1962年生まれで61歳です)はpHを「ペーハー」と読んでいたのです。

 でもなんで「ペーハー」なのか。これはドイツ語読みでpは「ペー」、Hが「ハー」なのです。(とはいえ、youtubeで動画を探してドイツ語のアルファベットの読み方を聞いてみるとHは確かに「ハー」ですがpは「ピー」に近いような。)歴史的な経緯でドイツ語読みが日本で広まっていた訳ですが、ドイツ語について知らないひとからすれば変な読み方です。なら普通に英語読みで良いじゃないか。それはその通りで、2012年から日本の高校の教科書ではpHは「ピーエイチ」になったのだそうです。

 とはいえ、私達の世代の感覚からすれば「ペーハー」がやっぱり「本当の読み方」の様な気がするのですが…いや、チョット待てよ。pHの概念を提唱したセーレン・セーレンセンってデンマーク人じゃなかったっけ?だとすればデンマーク語で読むのが本当なのでは。

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Wikipedia より引用(2024/02/21閲覧)

 

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2024.02.21

研究室配属が発表されました(江頭教授)

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 新年早々(?)の1月11日に開催した「研究室配属に関する説明会」、その結果を反映して、昨日2024/02/20に研究室配属の結果が公開されました。

 1月始めに説明会で2月20日に配属発表、一か月以上というのは時間がかかりすぎでは?そう思った人も多いかも知れませんね。でもこの期間、学生諸君は興味のある研究室を訪問したり有意義に時間をつかう人も多くいます。

 研究室配属は学生さん達の希望優先しています。この場合、どうしても希望者数のばらつきが起こるので何らかの調整が必要となります。このため、本学科での配属は

「学生の希望、研究室への適性、GPA、習得単位数等」を総合的に判断する

という申し合わせになっています。ここに「GPA、習得単位数」が入っているのがポイントです。これら、成績情報を使った調整は後期の成績が確定した後でないとできないのですから。

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2024.02.20

ChatGPTの示す「研究」の定義

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 昨日の記事では「研究」という言葉について、黒柳徹子さんの話を引用してその意味(というか、その重み?)について考えてみました。私は(少なくとも以前の私は)「研究」という活動は非常に重いものだと思っていて、専門家が職業として行っているものこそが「研究」という呼び名にふさわしいものだ、と思っていたのです。でも黒柳徹子さんの用法をみるともっと軽い意味でも使われる言葉なのかもしれない、そんな風に考えを改めた、というお話し。

たとえば、

 「最近、○○が面白くて色々調べているんだよね。」

などという軽いレベルの話でも

 「最近○○について研究してるんだよね。」

という言い方もできる。

そもそも「研究」という言葉はそのぐらいのニュアンスで使うのだ、というのが黒柳徹子さんの言語感覚

とまあ、そんな結論に落ち着きました。

 まあ、日本語の用法について黒柳徹子さんの右にでる人は今の日本にそれほど居そうもありませんから、私は素直に自説を撤回することにしたのですが…。

 いや、チョット待って。右にでる人は居なくても最近はやりのAIならどうだろう。そう思って以下の質問をChatGPTに入れてみました。

 

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「研究」とはどのような活動を指すのでしょうか?例えば

 「最近、○○が面白くて色々調べているんだよね。」

などという軽いレベルの話でも

 「最近○○について研究してるんだよね。」

という言い方もできるものでしょうか。

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2024.02.19

「徹子の部屋」と研究(江頭教授)

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 「徹子の部屋」は黒柳徹子さんによるインタビュー番組でつい先日49年目に入ったとか。今回はこの番組の話、ではなくて昔に見たこの番組のCMの記憶をもとに話をしたいと思います。

 もうずいぶんと昔になるのですが、この「徹子の部屋」について黒柳徹子さん本人が紹介するCMがテレビで流れて居たのを何気なく聞いていました。そのなかではこの番組をいろいろな人に「楽しいお話を聞く」番組だと紹介していました。それは正にその通り。ですが、私がハッとしたのはそのいろいろな人たちに話をしてもらう内容の例として「今、研究していること」という言葉が出てきたことです。

 へぇー、「徹子の部屋」には科学者も出るんだ。

などと当時の私は勝手に思い込んでいたのですが、これはそういう意味ではないでしょう。

 「研究は科学者(≒研究者)がすることだ」あるいはもう一歩踏み込んで「研究者以外の者がする研究は研究の名に値しないのだ」という思い込みが私の中にあって、その認識と黒柳徹子さんの言葉遣いとの間に矛盾があった、ということなのだと思います。

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2024.02.16

成績登録の日(江頭教授)

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 1月早々に23年度後期の授業が終了。期末試験が終わってから今までの期間は学生さん達にとっては気楽なお休みの期間かも知れません。一方、我々教員にとっては試験やレポートの採点を行い学生の皆さんの成績を付けるという大切な作業を行う期間となっています。

 いわゆる学修支援システム(本学なら moodleですね)の導入によって以前の授業では紙を印刷した資料を配っていたものが、電子ファイルを共有することが多くなったのと同様、本学をはじめほとんどの大学では成績も電子的に処理されているかと思います。こちらは「教務システム」というのでしょうか。我々教員も書類で成績を提出することはありません。PCを利用してWEBの画面から成績を登録しています。

 そして今では学生さんの成績確認もWEB経由でできるようになりました。昔懐かしい「通信簿」は少なくとも大学からは無くなったのですね。(とはいえ、本学では成績通知の郵送は今でも行っています。でも情報は紙より電子の方が早いです。)

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2024.02.15

「6.02E+23」の"E"って何?(江頭教授)

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 アボガドロ数は 6.02×1023 ですが、これが「6.02E+23」などと書かれていることがあります。学生諸君がつくるレポートはともかく、学会の発表などでもこの書き方を見かけることがあるのですが、これは科学における数値の正式な書き方ではありません。

 おそらく、ですがこの書き方はプログラミング言語 FORTRAN の数値表現から始まったものだと思います。FORTRANは最初のプログラミング言語であり、今のようなスクリーンではなく、タイプライターの様な機械的な端末で結果を出力していた時代から使われていました。そのような端末では「1023」の23の部分のような上付きの文字を表現することができなかったのです。

 では、6.02*10^23 の様な表現もあり得たのでは。(BASICではこう書きますよね。)たしかにこれならタイプライター型の端末でも表現可能です。でも「*10^」の部分は毎回おなじなのですから、一文字にまとめても構わないだろう。まとめる方が効率的だ。いや、まとめるべきである、ということなのでしょう。「でもプラスとマイナスを明確にするために+は付けるべきだ」というところが几帳面ですね。

 さて、「*10^」をどんな一文字でまとめれば良いのでしょうか。「べき乗の指数」を表す"Exponent”からとって"E"。確証はありませんが、おそらくそんなところではないかと思います。

 FORTRANでは"E"以外の文字を使った表現もありました。「6.02D+23」のように"D"を使う書き方です。"D"は倍精度変数、と呼ばれる普通の変数より高い精度でデータを表現できる変数に使用される表現方でした。(図は手元のFORTRANの処理系をつかった実例です。倍精度ではない変数にD指定子を使ってもエラーはおろか警告も出ないところが、ある意味FORTRANらしいところです。)

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2024.02.14

ハーバーとボッシュ、偉いのはどっち? 9年目 (江頭教授)

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 これは本学科1年生向けの「サステイナブル化学概論」というオムニバス形式の授業での私のレポート課題、本当は「どちらの業績を評価するか」という質問です。私の授業ではハーバーボッシュ法の説明をして、毎年この質問をすることにしています。

 ハーバーボッシュ法は空気に含まれる大量の窒素ガスを植物が利用できる形態に変化させる技術です。この方法でほぼ無尽蔵の窒素肥料を合成することが可能となり、80億を超える人口を支える現在の農業の礎となった偉大な発明です。

 ハーバーとボッシュ、フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュ、の名前はこの空中窒素固定技術では必ず一緒に出てきます。しかし、その役割は大きく異なっていました。大ざっぱに言えば窒素、水素、アンモニアの平衡関係を解明し、高圧条件下で触媒を用い、比較的低温でアンモニアを合成する方法を考案したのがハーバーであり、高圧で水素を扱う場合に起きるいろいろな困難を一つ一つ解決して実用化したのがボッシュだ、という役割分担になります。

 さて、今年の結果はハーバーがかなり優勢でした。

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2024.02.13

2月12日は振替休日だということを忘れていた(江頭教授)

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 皆さんご存じのとおり、2月11日は建国記念日で国民の休日。で今年はこの日が日曜日だったので翌日の2月12日の月曜日は振替休日だったのです。

 何を当たり前のことを、とお思いかも。しかし、私は実は2月11日の夜までこのことに全然気が付いていなかったのです。

 いやースケジュール管理のソフトを見ておかしいとは思っていたんですよね。なんか12日の月曜日に用事がまったくない。授業こそ終わっていますが、学期末で忙しいこの時期にこんな日もあるんだなあ、などと感心していたのです。いや、その日お休みだから。

 そう、授業が終わっているというのもポイントです。このブログでも時々書く話題なのですが(例えばこの記事)、本学では「祝日授業開講日」という制度があります。授業の回数の都合上、授業期間中の祝日を開講日として授業を普通に行っているのです。この制度に慣れすぎて、なんか祝日をお休みだと思えなくなっているのかもしれません。(いや、単にうっかりしているだけかも。)

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2024.02.12

看護師試験会場としての八王子キャンパス(江頭教授)

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 われわれ応用化学科が所属する工学部は本学東京工科大学の八王子キャンパスにあります。八王子キャンパスでは一昨日の2月10日まで本学の一般入試が行われていたのですが、その翌日の2月11日にもおびただしい人が訪れいていて…実はこの日にはまた別の試験が行われていたのです。

 タイトルでお分かりかと思いますが、看護師試験の会場として利用されいているのですね。厚生労働省の資料「第113回看護師国家試験受験者留意事項 」によれば下の図のように受験番号14669~15518の人が受験するらしい。人数にすると約750人くらいでしょうか。(もっとも受験番号が連続しているかどうか、よくわかりませんが。)八王子キャンパスで実施された大学入試の共通テストの受験者数が約900人だったのでそれに匹敵するほどの人数。しかも試験の終了時間が一定なので多数の受験生が本学キャンパスの最寄り駅である横浜線八王子みなみ野駅に押し寄せる。この日の夕方の時間の混雑具合はこの季節の風物詩になっています。(いや、ちょっと大袈裟ですかね。)

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2024.02.09

シリカゲルの乾燥剤(江頭教授)

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 子供の頃、お菓子の入れ物に入っていた乾燥剤、それが「シリカゲル」という名前であることを知ったのは「シリカ」や「シリコン」、「ゲル」といった言葉を知るよりずっと前の事でした。白い半透明の粒が入れ物の中の水分を吸収するのですが、中に混ざっている青い粒が赤く変色したらもう使えない。なんとなく不思議なものだと思っていた記憶があります。

 「シリコン」の酸化物が「シリカ」、シリカのコロイド粒子の溶液が固化したものが「シリカゲル」ですが、実際に乾燥剤として利用されているものはここから溶媒(水)を蒸発させて乾燥させたものです。シリカゲルには溶媒の抜けた細かい穴(孔)がたくさん開いているので「多孔質」とよばれています。シリカゲルの表面は親水性で水となじみやすく、多孔質なので孔の内側の表面を含めると重さ当たりの表面積が非常に大きくなります。このためシリカゲルは空気中の水分を吸着する力と量が大きい理想的な乾燥剤となるのです。

 これも子供の頃の話ですが、シリカゲルを水に浸けてみたことがあります。熱くなってパチパチと音を立てながら丸いシリカゲルの粒が砕けていくのをみて驚きました。

 シリカゲルの表面に水が吸着して安定化。その分のエネルギーが熱として解放されて全体が熱くなったのでしょう。シリカゲル粒子の周りから水が中にしみ込んでゆくとシリカゲルの中に入っていた空気には逃げ場がありませんから中心に向かって押し込められる。その圧力が高くなってもろいシリカゲルの粒はその圧力に耐えられなかったのだ。今ならそう理解できます。

 さて、シリカゲルの乾燥剤に含まれている青いシリカゲル。これには他のシリカゲル粒子と違って、コバルト塩がしみ込ませてあります。

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2024.02.08

マスフローコントロラーは質量流量の調節器か?(江頭教授)

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 ガスを使った実験でガスの流量調節を行うとき、簡単なバルブを使うこともありますが、再現性良く流量を調節したいとき使うのが「マスフローコントローラー」です。流量の測定するユニット「マスフローメーター」と電磁弁を制御回路でつないで設定したとおりの流量を再現性良く流す、それがこの装置の仕組みです。

 マスフローメーターでの流量測定には伝熱現象を利用しています。ガスが流れると熱が伝わりやすくなる。その熱の伝わりやすさと流れの速さの関係から流量を検出します。伝熱による温度変化を電気抵抗の変化として読み取るのですが、流路の構造や抵抗体のサイズと配置、そしてガスの種類によって熱の伝わりやすさが変化しますから、ガス流量と抵抗との関係を定量的に予測するのは難しい。そこでガスの種類に応じて検量線を作って流量を測ります。

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2024.02.07

雪と入試(江頭教授)

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 一昨日、2024/02/04午後から降り始めた雪は一晩過ぎてかなりの積雪に。昨日5日は交通機関にも影響がでました。我々応用化学科が所属している本学八王子キャンパスのスクールバスの発着駅、八王子みなみ野駅や八王子駅を通っている横浜線や中央線も降雪の影響をもろに受けた形です。おかげで修士の2年生の最終発表がオンライン開催に変更された、というお話しは前回の記事に書きました。

 さて、昨日の朝には既に雪はやんでいて、本学のキャンパスは写真の様な様子に。

 これはお昼頃の写真ですが、すでに雪かきが始まっていることが見て取れますね。

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2024.02.06

雪の八王子キャンパス(江頭教授)

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 毎年冬になると、雪が降らないかなあ、と期待すると同時に、雪が降ると困るなあ、と心配もしています。いや、雪そのものが困るのではないのです。雪が理由で交通機関が乱れるといろいろなトラブルが。特に授業期間中、それも学期末が近づくと一度の雪で授業が中止になるといろいろと予定が変わってしまいます。これが期末試験中ともなればもっと深刻に。

 幸い、昨年2023年は雪がほとんど降らない冬でした。新年に入ると少し降雪があったり、共通テスト期間中ということでヒヤリとしたのですが、ありがたいことに交通機関に影響を与えるほどではありませんでした。

 そうして迎えた昨日2024年2月5日ですが、関東は昼から降雪、そして大雪との予想です。予想通りに雪が降り始めました。以下の写真をとった16:00頃にはかなり深刻な様子です。そのまま雪は降り続け、帰宅するころにはかなりの積雪に。いつもは歩くところをこの日ばかりはバスを利用させてもらいました。

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2024.02.05

卒論発表会後の成績判定会議(江頭教授)

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 前回の記事でも紹介した応用化学科の卒論発表会、一人の持ち時間は10分と短いのですが一つの会場で全員が発表するので結構な時間がかかります。初日(今回は2月1日)は文字どおり朝から晩まで続いたのですが、二日目(2月2日)はやや早めに終了。

そりゃあ、みんな打ち上げに行きたいですもんね。

いえいえ、そんな理由で早く終わる訳ではありません。学生さんはそうでも我々教員には別に評価の仕事があるのです。

 卒論発表会では学生の発表があって先生からの質疑がある。よくやったね、という暖かい質疑もあれば、何やってたんだい、という雰囲気のことも。これは学生諸君からも見えている評価の部分。でも時間の関係上、先生たちが全員質疑に参加できる訳もありません。ただ聞いているだけなのかというとそんなことはありません。実は全ての発表に全教員が何らかの形で評価を付けているのです。

 さて、発表会が終わると

学生諸君は荷物を持って速やかに退出してください。

というアナウンスが。我々教員は部屋に残って「判定会議」をはじめるのです。

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2024.02.02

卒業論文発表会 2日目(江頭教授)

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 我々応用化学科の卒業論文発表会は昨日(2024年2月1日)から開催。今年は6期生が発表します。

 応用化学科は学生数が比較的少ないので、学生の発表を聞くことができるパラレスセッション無しのスケジュールとなっています。各学生には主査の他に副査が2名つき、発表を聞きながらWEB上の評価を記載してゆきますが、会場でのディスカッションはオープンですから、発表会の議論を通じて卒業論文の改訂を行い、その改訂版が正式な卒業論文となります。

 さて、東京工科大学、工学部の応用化学科は化学のなかのいろいろな専門分野がワンセットそろった学科という位置づけです。そのためでしょう。研究の内容はバラエティに富んでいます。

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これは発表開始前の会場の様子です。発表会場は撮影禁止!なのですが、これはぎりぎりOK。

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2024.02.01

卒業論文発表会(江頭教授)

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 我々応用化学科の卒業論文発表会は本日(2024年2月1日)から2日間で開催。実は本学科が開設してから卒業論文発表会は今回で6回目。今年発表する学生諸君は6期生ということになります。もう何回も卒業生を送り出してきた様に思うのですがまだ6期生なんですね。

 応用化学科は学生数が比較的少ないので、パラレルセッション無しで全ての学生の発表を聞くことができる様になっています。各学生には主査の他に副査が2名つき、発表を聞きながらWEB上の評価を記載してゆきますが、会場でのディスカッションはオープンですから、発表会の議論を通じて卒業論文の改訂を行い、その改訂版が正式な卒業論文となります。

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