エビデンスに基づいた医療で「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現できるのか?(江頭教授)
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今回は前回紹介した
モリー・マルーフ著 矢島 麻里子 訳
脳と身体を最適化せよ!――「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法
ダイヤモンド社 (2024/2/14)
林 英恵 著
健康になる技術 大全
ダイヤモンド社,2023
とを比較してみたいと思います。
前回の記事でも少し触れましたが、後者の「健康になる技術 大全」の方はエビデンスに基づいた情報に限定した内容となっていて、この本に書いてある事は(基本的には)誰にでも適用できるもの、という位置づけです。
それに対して前者の「脳と身体を最適化せよ!」は「バイオハック」などと言い回しを工夫してはいますが、実情は著者本人の体験談。本人に効果があった(と本人が思い込んでいる)ことが並んでいるだけで、他の人に役立つという保証はないに等しいものです。
となれば、どう考えても後者が前者より優れている、とお思いではないでしょうか。ですが前者「健康になる技術 大全」には一つ大きな問題があるのです。
エビデンスのある健康に関する情報とは、一般的に「○○をすると××のリスクが減る」とか「△△を食べると■■のリスクが高くなる」といったものです。この「××」や「■■」に相当する部分は癌だったり心疾患だったりします。これは、今、現に「××」や「■■」に悩まされている人にとっては手遅れな情報ですし、今後の「××」や「■■」のリスクを減らしたい人にとっては体感的には何のメリットも感じられないのに、「○○」をさせられたり、△△を食べることを制限されるのものなのです。
うーん、これは厳しい。それに「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現できるようなエビデンスのある健康情報はないのです。(逆に「不老長寿」 を阻害するリスクについての知識はあるのですね。「意識朦朧」「疲労困憊」は徹夜でもすればすぐにでも実現可能でしょう。)
端的に言えば、科学によって個人のベストコンディションを作り出す方法を知ることは(少なくとも今のところは)できないということなのです。
となれば、少々、いやかなり怪しくても他の人の体験談を参考に、自分なりの健康法を試すしかないでしょう。その意味では、この「脳と身体を最適化せよ!」は結構、良い参考文献だと思いますよ。
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