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エネルギーの将来象(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 我々応用化学科が所属する工学部の大学院は「工学研究科」ではなく、「サステイナブル工学研究科」という名称です。サステイナブル工学の確立を目指す、という方針を明白に示した名称ですね。その大学院の授業のなかで私は「サステイナブル工学概論」という授業を受けもっています。

 この授業の中で「サステイナブル社会」についてレポートを書いてもらいました。具体的には2050年以降の社会がどうなっているか、という課題です。

 レポートでは未来の、というか2050年のエネルギー源についても質問しました。どんな答えが返ってくるのでしょうか。

 おそらく皆さんのご想像の通り、一番多かった回答はのは太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーが2050年、そしてそれ以降の主要なエネルギーになる、という回答でした。

 もしこのブログを読んでいるあなたが高校生か大学生なら、この回答はいたって「普通」だと感じたはずです。でも、私には、いえ、私の年代の人間にとってはある意味感慨深い回答なのです。

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 私が高校生、そして大学生だったころですから今から25年前、じゃなくて45年前にはこんな回答はごく少数だったと思います。おそらく、当時の典型的な回答は

枯渇した石油資源に替わる原子力、とくに核融合の実用化が急がれているが、現時点では石油のインフラを利用して液化した石炭が主に利用されている。

といったものだったと予想されます。高校生・大学生諸君には信じがたいことかも知れませんが、当時は多くの人がそう信じて疑わなかったのです。

 ここ半世紀くらいの間にエネルギーに関する将来ビジョンは大きく変化しました。この変化そのものについて、いろいろ考えるところもあるのですが、何よりの驚きは「多くの人が信じて疑わない」共有された未来のビジョンというものでも、長い年月の間には180°方向転換してしまうこともある、という事実です。

 今現在、「多くの人が信じて疑わない」再生可能エネルギーですが、さてもう45年過ぎた時にどのように評価されるのでしょうか。私自身がその結末を見届けることは難しそうですが、高校生・大学生諸君はその結末に立ち会うことができるのです。なんともうらやましい限りです。

江頭 靖幸

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