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物理学者と化学者のお話し(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 化学と物理、同じ自然科学ですがかなりイメージが違いますよね。これを読んでいるあなたが高校生なら、「僕は物理が好き」「私は化学が好き」といった好みがあるかも知れません。(いや「両方好き」でいてほしいところですけどね。)

 さて、今回は私が学生時代に聞いた化学者と物理学者の違いについてのお話を一つ紹介しましょう。

 ある実験でデータを整理してグラフを描いたところ、ほとんどのデータは一つの曲線にのっていました。でも一つだけその曲線から外れたデータポイントがあったのです。

 物理学者は言いました。「これはいけない。測定の際に何か間違いがあったに違いない。」物理学者は問題のデータポイントを測定したときの状況を詳しく調べ、エラーに対する徹底的な対策をして再実験を行いました。新しいデータポイントは他のデータポイントと同様、おなじ曲線に乗ることになりました。「さあ、この曲線を決めている理論はどんなものだろう」物理学者の研究はここからが本番です。

Graph10_oresen1

 さて、以上が物理学者版。次は化学者版で、同じ様に曲線から外れたデータポイントについての話です。

化学者は言いました。「これは面白い。この測定は他とどこが違うのだろう。」化学者は実験を繰りかえして外れたデータポイントを再現しました。でもそこで終わりではありません。その後も実験を重ね、もっと外れたデータポイントがでる条件を次々と見つけていったのです。やがてグラフには二つの曲線が現れました。「さあ、新しい種類の物質が見つかったぞ。」化学者の研究はこれからが本番です。第三、第四の物質を探して実験をつづけましょう。

とまあ、出処不明のお話ですが、化学と物理の違いを巧く言い表しているのではないでしょうか。物理学者は正確な実験を数少なくやろうとしていて、化学者は実験をたくさんやって全体像をみようとしている。そして物理者が一般的な法則に「まとめる」方向で努力しているのに対して化学者は新しい事を見つけてどんどん「広げる」方向で努力しているのです。いや、化学には終わりが見えないですよね。

江頭 靖幸

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