「産業と技術革新の基盤をつくろう」VS「人や国の不平等をなくそう」(江頭教授)
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東京工科大学には大学院が併設されていています。本学の学部から進学する人も、外部から入学する人もいて、大学と大学院は完全に繋がったものではありません。とはいえ「大学院の研究室」というものはなくて学部の学生も大学院の院生も同じ研究室で研究するのです。一体化しているとは言いませんが、強いつながりがあるというところでしょうか。
さて、我々応用化学科の学生が大学院に進学する際、普通は「サステイナブル工学専攻」となります。「応用化学専攻」ではないのですね。「サステイナブル工学専攻」は「工学部」とは異なって学科ごとの運営ではありません。大学院の授業も工学部、じゃなかったサステイナブル工学専攻で共通となります。
大学院で私が担当する授業は「サステイナブル工学概論」。「サステイナブル工学専攻」そのもの、というタイトルですね。まあ、学部のサステイナブル工学の授業から続いて担当するというところでしょうか。
今回、この授業のなかで「SDGs」について触れてみました。学部生とは違って大学院生には「自分の研究」というものがありますから、まず「あなたの研究はどのSDGsの目標に貢献しますか」というレポートを書いてもらいました。
その中で多かったのが目標の9「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。これは納得ができますよね。その一方で「人や国の不平等をなくそう」という目標の10に自分の研究が貢献する、と書いた人は一人も居なかったのです。
なるほど。では、ここで敢えて再度のレポート課題を。「あなたの研究はSDGsの10番目の目標、人や国の不平等をなくそう、にプラスに作用しますか、マイナスに作用しますか?」
その結果は下図のとおり。
やはり「プラスの影響がある」が過半数。レポート課題で自分の研究について語るのですから、無理にでも「プラスの影響がある」と言いたいところでしょう(実際、そのように思えるレポートもちらほら。)でもそれだけでなく、障害者や体力の無い人に役立つ様な研究で、本当に「人や国の不平等をなくそう」にプラスになる研究もありました。(なら、最初のレポートの段階で目標10を入れておくべきでは、という気もしますが。)
その一方で中立とかマイナスの影響があるという意見もそれなりにあるのは驚きでした。
たとえば目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献するような新しい技術の研究について考えてみましょう。
技術というものは基本的に誰でも利用可能なのですから途上国でも先進国でも役に立つ。だから「人や国の不平等をなくそう」にプラスだ、と考えるひとがいる一方で、自分の開発する技術によって途上国も先進国も同時に進歩発展するのだから不平等は無くならない、という意見もありました。さらには先進国の方が新しい技術を受け入れる体制が整っているのだから技術の発展は不平等を助長する。つまり「人や国の不平等をなくそう」という目標にはマイナスだ、という意見もあったのです。
これらの意見、どれが正しいなどと一概に言えるものではありませんが、「17の目標からあってるものを選ぶ」というレポートよりも、今回の課題の様に一つの目標に絞って考える方が「自分の研究がどのように社会に受け入れられるか」という問に、より深く迫ってもらえたのでは無いか、などと思っています。
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