「Market DrivenとMarket Drivingは違うんだ」という話(江頭教授)
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最近、タクシーに乗ったとき、その車種がトヨタのプリウスだったので、運転手さんとトヨタの次世代自動車について話す機会がありました。この会話を通じて、大学時代の先生が40年近く前に海外の企業を訪問した際に聞いた話を思い出しました。先生はそのとき、「Market DrivenとMarket Drivingは違うんだ」と言われ、その話を私たち学生にしてくれました。この二つの概念は似ているようでありながら、実際にはビジネス戦略において大きな違いがあります。以下に、自動車産業に限定して、両者の違いについて詳しく説明します。
Market Drivenとは、市場のニーズやトレンドに基づいて戦略や製品を開発するアプローチを指します。自動車産業においては、消費者の要望や市場の変化に敏感に反応し、エコカーなど、需要に応じた製品を提供します。この方法は、顧客の声を積極的に取り入れ、競争相手と同じ土俵で戦うことを意味します。例えば、燃費の良い車や安全性能の高い車を開発することで市場のニーズに応える企業が典型的な例です。背景には、ユーザーの選択に任せるという姿勢があります。つまり、企業はユーザーが何を求めているかを重視し、それに応えることで信頼を得ようとします。
この戦略の代表的な企業がトヨタです。トヨタは、消費者の声を大切にし、ハイブリッド車のプリウスをはじめとするエコカーや、安全技術を搭載した車両を提供することで市場のニーズに応えています。トヨタのアプローチは、常に顧客中心であり、市場の変化に迅速に対応することで、信頼と高い評価を得ています。トヨタは、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池式の水素自動車、水素エンジンを利用した水素自動車など、多様な選択肢を提供することで、消費者の多様なニーズに応えています。
一方、Market Drivingとは、市場をリードし、新しい需要や価値を創造するアプローチを意味しますが、自動車産業においてはネガティブな側面が顕著に現れます。Market Driving企業は、自らの利益を最大化するために市場の方向を政治的な規制でゆがめようとすることがあり、例えば、電気自動車(EV)を推進する企業が政府に働きかけてガソリン車の規制を強化させるケースが典型です。これにより消費者の選択の自由が奪われ、企業の理念や価値観が押し付けられる可能性があります。政府の補助金や税制優遇措置を利用して市場を操作することは反自由主義的であり、健全な競争を妨げるリスクもあります。
これらの違いを理解することは、自動車産業における企業の動きを見る上で非常に重要です。ビジネス戦略が客観的なものではなく、企業の理念が反映していることに留意すべきです。その「理念」が実は競争相手より有利に立ちたいという単なる利益優先主義の隠れ蓑かもしれない、という視点を持つことも必要です。
先生が強調した「Market DrivenとMarket Drivingの違い」は、私たちに市場の捉え方とアプローチの多様性を教えてくれました。企業の戦略がどのような理念に基づいているかを理解し、その背後にある真の目的を見極めることが求められます。
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