都知事選挙と有効数字の話(江頭教授)
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この記事が公開されるのは2024/07/08の10:00の予定。すでに東京都の知事選挙が終了して誰が当選したかが分かっているかと思いますが、この記事を書いている時点ではまだ分かっていません。そもそも生々しい選挙の話は学科の公式ブログには不向きでしょう。ということで今から10年以上前(東京工科大学工学部応用化学科ができる前ですね)の都知事選の思い出話を。
その当時、私は東京都の住民ではありませんでしたが、見ていた番組のレギュラーコメンテーターの人が都知事選に立候補する、というシーンに出くわしたことがあるのです。(公示前だったか後だったか。いま考えると公職選挙法的に微妙な気もします。)どんな話からそんな流れになったかは覚えていないのですが都庁の予算の使い方についての議論で
この様にしたら都の○○兆円の予算から××%の……ちょっと待ってください。
そこでやおら電卓を取り出して計算を始め
△億◎千万……□円のお金が利用できます。
と言ってみせたのです。いや、本当に最後の1円の桁までです。
これを見て私は「この人は大きな組織の運営には向かないんだろうなあ」と思ったのですが、結果はその通りの落選でした。
さて、何が問題か。最初に理科系の教員の立場で一つ。「有効桁数の概念が無い!」です。最後の1円までなんて元データの有効数字がそんなにあるのか?与えられたデータの有効数字より高い精度の数字を出すことは悪く言えば科学的に不誠実な態度、良く言っても無知(いや「良く」か?)です。
そもそも最後の1円までの数字が必要なのか。これが予算や決算の数字なら最後の1円まで計算して、それが間違っていないかをきっちり鑑査してもらわないといけません。
でも都知事の仕事はもっと大雑把で良い。その代わりに全体像をきちんと把握しておかないと。いや、把握するだけではなくて頭の中に基本的な数字をいれて、それをその場その場でいろいろな数値に換算するべきなのです。わざわざ電卓を使うようではスピードに欠ける。有効桁は1桁で十分なので暗算で換算を繰りかえして数字の意味を吟味することが理解につながるはずです。
と、まあ、その当時はそんなことを考えたのですが今回の選挙をみていると基本的な数字が頭に入っていただけ、当時の候補者にはそれなりの人が選ばれていたのだなあ、などと考えてしまいました。(いや、今回の選挙でも素質のある候補者の方もたくさんいたのだと思いますが。)
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