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水と空気はどっちが重い?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 いや、別に「水1トンと空気1トン」みたいなナゾナゾをやりたいわけではありません。普通に考える様に同じ体積での比較、つまり密度の違いのお話しです。水が重いのは考えるまでもないことですが、まずは基本的な情報から。


 水の密度は1mL当たり1g。これはOKですね。では空気はどうでしょうか。空気の密度を求めるには「1molの気体は標準状態で22.4L」ということを覚えていると便利です。空気が酸素20%、窒素80%の混合気体だとすると平均分子量28.8の気体だと見なすことができます。22.4Lで28.8gですから1L当たり約1.3g、1mL当たりなら1.3mgとなります。まさに水より桁違いに軽いわけです。


 さて、ここからが本題。さきほど「標準状態で」と書きましたが、これは0℃1気圧の条件です。室温付近、20℃1気圧では空気はもう少し軽くなりますが、もっと違った条件ならどうでしょう。水が空気より軽くなる条件はあるのでしょうか。


Soda pop. Champagne. Effervescent drink. Fizz. Underwater fizzing air, water or oxygen  bubbles on white  background. Fizzy sparkles in sea, aquarium.  Undersea vector texture.

 はい、もうお気づきの方も多いかと思います。100℃1気圧、というか100℃のちょっと上の温度のことを考えてみましょう。水は蒸発して気体になりますから密度はぐっと小さくなるのです。


 この条件では標準状態より100℃温度が上がるので気体は373/273倍に膨張して1mol当たり30.6Lになります。空気の密度はこの効果によって約0.94 g/L となります。水は1mol当たり18gですから30.6Lで割って密度は0.59 g/L。この条件では「水の方が空気より軽い」のですね。


 物性につて議論するときは温度や圧力を規定しないと話にならない。これは物理化学の基本です。この話はその具体例、ではあるのですが、さて「気体になった水は水蒸気って言うのでは」とか「100℃の空気とあり得なくない?」とか。まずはこれが「物理化学の問題」かどうか、確認する必要がありそうですね。



江頭 靖幸

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