工学部の化学は「化学工学」じゃないかと思った?(江頭教授)
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今回は、応用化学科で「化学工学」を担当する江頭です、と自己紹介しましょう。続けて「化学工学」についての説明を。
読者のあなたがもし高校生でしたら、もしかしてこう思われたのではないでしょうか。
「機械」についての工学を行うのが「機械工学科」これは分かり易い。「電気電子工学科」はなんで「電気」と「電子」を区別するのかな?「化学」の工学をやるのは「化学工学科」だよね。あれっ?なんで「応用化学科」なんだろう…。
実は「化学工学」は化学製品の生産技術に関する工学として出発したものです。昔は「化学機械学」などとも呼ばれていましたが、化学工場で使う個々の機械が連結されて化学プラント、コンビナートなどに発展するのとともに「化学工学」という呼び名に変わってゆきました。
つまり、工学部の化学を「何を作るか」と「どうやって作るか」に分けたとすると、「どうやって作るか」の部分に「化学工学」という名称が割り当てられているのです。
なぜ「どうやって作るか」の部分が化学工学になったのか?これは今となっては謎ですが私の考えを少しだけ述べさせてください。
化学産業の特徴として常に新しい物質が登場しつづけている、という点があります。これは社会のニーズに答える、という側面もありますが、化学での新しい発見が比較的短期間に商品に結びつく、という面も大きいのです。つまり、シーズ主導の製品開発が行われている、と言えばよいでしょうか。
化学産業の分野では発見と実用化の距離が短いので、大学の工学部ばかりでなく理学部で発見された化学物質が製品化されることも普通のことです。「何を作るか」の部分では理学と工学の境目はかなり曖昧になっている。その一方で「どうやって作るか」の部分は、早いサイクルでの商品開発に対応できるように実験室規模の器機とはかなり異なった装置を組み合わせたものになっています。
「何を作るか」「どうやって作るか」がはっきりと分かれている一方で、「何を作るか」の部分は理学と工学の差が少ない。こういう状況で「どうやって作るか」=「化学工学」、という呼び名が定着したのではないか、と思うのですが如何でしょうか。
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