"mass"は「質量」か?(江頭教授)
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とある事情で英語の化学の問題の翻訳を見せてもらう機会があったのですが、今回のお話はそのときに気がついたことです。
「○○の質量を求めよ。ただし単位はmgとする。」という記述がありました。化学の問題で物理量を答えるなら単位をつけるのが当たり前です。そこでわざわざ 「mg」と指定しているところ、物理量の数値の部分を一意に決めたいのでしょうか。マルバツ式ではなく、記述式の試験なのでそんな必要があるとは思えませんし、他の問題と比較しても何か奇妙です。
はて、と思って原文に当たってみると「mass」を求めよ、という設問。そして単位は「mg」と指定しているのです。
なるほど、英語の "mass"という単語には質量という限定的な意味である以前により一般的な「量」という意味があります。化学の問題の中で "mass" を求めよ、と問うた場合、物質量だと思い込む人がいるかも知れない、その事を考えて質量であることを強調するために mg という質量の単位を指定した、のではないかと想像します。
バイオマス(biomass)のmassも「質量」というより「量」ですよね。
日本語では「質量」という言葉には質量以外の意味はありません。質量を求めよ、と問えば必ず mg (いや、g か kg かも知れませんが…)で答えが返ってくるはずです。
漢字を使って新しい言葉を簡単に作れる日本語は便利だね。こう言える一方で、日常会話で使われる言葉と科学技術関連の用語が解離している点は、日本の科学が海外からの輸入品であることの証拠でもあるのですね。
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