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kgとkgf(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回のタイトル「kg」は「キログラム」と読んで質量の単位ですよね。これはSIの基本単位の一つですから今更説明する必要もないでしょう。(基本単位なのに「k」が付いているのは如何なものか、とは思いますけどね。)

 さて、もう一つの「kgf」を皆さんは知っているでしょうか。私は、まあ知ってはいたのですが恥ずかしながら「kg重」と書いて「キログラムジュウ」と読むのが正しいのだと思っていました。でもどうやら「kgf」と書いて「重量キログラム」と読むのが正しい様です。英語ならfは「force」の略で「キログラムフォース」となるようです。

 なんかはっきりしない書き方で申し訳ありませんが、問題は「kg」にはSIというちゃんとしたスタンダード、こうであるべし、というルールがあるのに対して「kgf」にはそれが無い。もっというとSI的には「使わないことが正しい」という位置づけなのです。

 おっと、話の肝心な点が飛んでしまいましたね。そもそも「kgf」は何なのか。これ、実は力の単位なのです。ですが利用は推奨されない非SI単位となっています。

 通商産業省(経済産業省の以前の名前ですね。)のSI単位等普及促進委員会名義の「新計量法とSI化の進め方 -重力単位系から国際単位系(SI)へ-」という資料には

従来は力の単位として、質量と同じ単位の“kg”が使用されていた。日本では、20年ぐらい前から力の単位に質量と同じ単位の“kg”を使用することに問題があるとして、工学単位系では“kgf”を使用して表すことが多くなった。この表示は、質量と同じ単位の“k g”と区別するためであり、SI化ではなかった。(同資料15ページ)

という記載があります。この資料が平成11年(西暦1999年)に書かれていますからその20年前といえば1979年ということになります。当時私は高校生でしたら、私が本格的に物理学や工学の勉強をしていたころには力の単位としての「kgf」は(SI化ではないとしても)使われていたのですね。

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 さて、「kgf」が力の単位、ということですが、どのような力なのでしょうか。これは簡単で「1 kg の質量の物質にかかる重力」ということになります。1 kg のおもりを手で支えるとき、手にかかっている力が 1 kgf なのですね。重力加速度を 9.8 m/s2 とすると 9.8 N ということになります。大体 10 N でしょうか。いや、これは「 1 N は大体 0.1 kgf だ」とか「100 g のおもりを手で支えるとき、手にかかっている力が 1 N」と言い換えた方が役に立ちそうですね。

 じつは重力加速度は厳密には一定の値ではなく、場所によって変化する値です。したがって 1 kgf も場所によって変化するので、厳密には「東京工科大学八王子キャンパスでの 1 kgf 」とか言うべきなのでしょう。それもあんまりだ、ということで

標準重力加速度(9.80665 m2/s)を用いて 1kgf = 9.80665 N

と定義されているそうです。

 

江頭 靖幸

 

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