計量カップとメスシリンダー(江頭教授)
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先日の記事で化学の実験での操作について
液体の「体積を測る」という操作にはいろいろなタイプがあり、そのやり方も化学実験独自のものと言えるでしょう。
と書きました。今回は、この液体の体積を測る操作について少し説明しましょう。
まず、私達の身の回りで液体の体積を測る、という操作自体、どのくらい必要なものなのでしょうか。「コップ一杯」とか「バケツに半分」とか。あまり正確に体積を測るという場面は思い浮かばないのでは。場合によっては「ひたひたになるくらい」の様に絶対量ではなくて相対的な量だけが問題になるケースも多いでしょう。
「化学の実験なんて料理みたいなもの」という言い方がありますが、一般の家庭で液体の体積を測ることが必要になる場面はやはり料理をする台所でしょうか。小さじ一杯 5 mL、大さじ一杯 15 mL など決まった体積を測る方法もありますが、任意の量を測る(というか測り取る、でと言うべきですね)とすれば計量カップが使われるのではないでしょうか。目盛り付きの透明な容器で、使い方は一目瞭然。入れた液体の量を目盛りで読み取るわけですね。
化学実験の操作でも同じ機能をもった器具が使われています。
それがこのメスシリンダー。同じ使い方をするのですが、こちらのデザインは少し違っていますよね。
まず、縦に細長い形状になっていること。同じ体積の液体を入れても細ければ細いほど液面の位置の変化は大きくなりますから、正確に測定し易いのですね。
そして、しっかりとした台座が付いていること。液体を測り取るとき、水平な机の上にきちんと固定して液面が正しく水平になる様にしなくては。
上の写真は 500 mL のメスシリンダーですが、目盛りの最小幅は 5 mL の様です。目分量で最後の 1/10 目盛りを読めば 0.5 mL、つまり 0.1% の精度で液体の体積を正確に測定できるのです。計量カップの最小メモリは10mLなので精度は 1 mL で 0.2% となります。メスシリンダーは計量カップより倍は精度が高い訳ですね。
もっとも、計量カップとメスシリンダーの違いはその使用方法の方が大きいでしょう。メスシリンダーを使う際には「液面の高さに目線を合わせて水平な方向から見る」様に指導されます。でも計量カップでそこまで気を遣うことは少ないのでは?(そもそもそんなに精度が必要か、という問題もありますよね。)
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