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醤油差しと洗びん(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 化学の実験と料理は少し似ているところがありますよね。という話でこちらの記事では液体の体積の量り方の例として化学実験でつかうメスシリンダーと料理で使う計量カップを比較してみました。

 で、今回は量を測る、という点からは少し外れますが液体を少量取り分ける器具を比較してみましょう。

 まずは料理で使うものとしては「醤油差し」がその代表でしょう。容器内に入れた液体を、容器全体を傾けることで出口(「くちばし」とかいいますね。)から出す、というシンプルなものです。操作は傾けるだけ。液体は重力によって流出します。傾ける角度によって流出する速度を微妙に調整することができるという優れものですね。

 とはいえ、以前は醤油を出したあと、くちばしに残っている醤油が容器の外部に垂れてくる、液だれという現象があって、結構不愉快に感じたものでした。最近はいろいろと構造を工夫して液だれの起こらない・起こりにくい醤油差しが作られているようです。

 でも醤油以外の液体に利用する場合もあるので完璧とは行かないでしょう。特に気になるのはラー油を入れて使う場合。どうしてもベタベタになってしまいますよね。

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 さて、化学の実験で「液体を少量取り分ける」ために利用されているのは「洗びん」という道具です。

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 洗びんも醤油差しと同様に容器内に入れた液体をノズルから流出させる、という使い方をします。ただ、液体の流出させる力はプラスチックで作られた容器を押しつぶすことによって生じる圧力である、という点は大きな違いです。圧力が有効に使われるためには容器はきちんと密閉されていなくてはなりません。密閉の必要がないどころか、空気孔がないと巧く使えないことさえある醤油差しとは対照的です。

 洗びんのノズルからでる液体の速度は容器を押しつぶす力によってコントロールできます。実験器具を洗浄する場合など、純水を入れた洗びんから勢いよく水をだして汚れを落とす、などといった使い方ができます。この点も醤油差しではまねでできない特徴です。

 とはいえ、洗びんは液体をゆっくり微妙に調整しながら出す、という作業には不向きな様な気も。(おまえが不器用なんだ、と言われればそこまでですが……。)メスシリンダーの標線ぴったりに液体を入れたいと言うときに「あともうちょっと、数滴の液体を滴下する」といった用途には洗びんはいささか大雑把な道具の様な気もします。いや、ここは洗びんの代わりに醤油差しをつかった方が良いのかも。こんど実験室に「純水洗びん」と一緒に「純水差し」を置いておこうか。

 

江頭 靖幸

 

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