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スモッグを知らない子どもたち(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

今日の授業では大気に関係する環境問題について話していこう。

まずはスモッグについて。

こんな感じで授業を始めたのですが、ふと思いついて学生さんにたずねてみました。

じゃあ、スモッグを知っているひと手を挙げて

えっ、なに? ほとんど手が挙がらない!

 いやいや、これは一体どうしたことでしょう。最近の若者はスモッグも知らないのか。

 と、思ったのですがよく考えてみると最近スモッグについてニュースなどで見た記憶がありません。たまに海外の都市の大気汚染事情が報道されて「いや、これスモッグじゃない。昔の日本も大概だったものだが。」などと思う程度。いや、最近どころか随分前からそうで、ひょっとすると今の学生さん達は生まれた頃からスモッグとは無煙だった、じゃなくって無縁だったのでは。

 スモッグといえば「スモーク(煙)」と「フォッグ(霧)」から作られた造語で、本来はばい煙が地域的に集中して排出されることによって空気が濁る現象のことでした。ばい煙の処理が徹底されると、今度は自動車の排ガス等に含まれる炭化水素などが太陽光と光化学反応を起こすことで発生する「光化学スモッグ」が大きな問題になったものです。

 この「光化学スモッグ」は刺激性の化学物質が生じることで人に直接被害を与えます。しかし従来のスモッグと違って光化学スモッグは目には見えません。太陽の光と気象条件とが関与することから、気象庁は「光化学スモッグ注意報」を出すことになりました。注意報がでると屋外での体育の授業を中止にする、などの対応が取られたものです。

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光化学スモッグか、何もかも皆懐かしい……

なんて思っていたら、実は気象庁は今でも「光化学スモッグ注意報」を出しているそうです。光化学スモッグは排気ガスに太陽の光と気象条件が重なることで生じるのですが、注意報の基準は光化学スモッグの発生しやすい気象条件かどうか、ということに。これは大気中の汚染物質の濃度とは無関係なので排ガス対策が進んでも警報は出続けるのですね。

 では、実際に光化学スモッグはどのくらい起こっているのでしょうか。東京都など地方自治体がまとめた資料をみると光化学スモッグの被害者(正確には被害を申告した人)は近年非常に少なくなっています。人間に被害を与えることを光化学スモッグの定義とするなら従来型のスモッグ同様、光化学スモッグもほとんど解決済みの公害問題の様に思われます。

 とはいえ、今の若者達は「スモッグを知らない子どもたち」です。もしかしたら光化学スモッグの被害にあってもそれが光化学スモッグだとは気が付かず、申告もしないのかも知れませんね。

江頭 靖幸

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