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自動化された天秤「直視天秤」(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 以前の記事で上皿天秤を紹介したのですが、構造が単純で分かりやすい代わりに、やはり扱うのは面倒な部分があります。特に分銅。管理が悪いと錆びてしまったり、軽い分銅が欠損していたり、なかなかやっかいです。

 そこで作られたのが「直視天秤」というもの。見た目は今風の電子天秤と同じでサンプルを乗せる皿が一つだけ。天秤なのに分銅を用意する必要がありません。実は「直視天秤」の支点から向こう側は機械の中に隠されています。皿をささえる「うで」の部分だけが外から見えていて、反対側のうで、皿、そして分銅も外部から見えないようになっているのです。

 直視天秤の分銅は機械の中に入れたままで、通常の使用では外に出すことはありません。機械の内側で上皿天秤と同様にサンプルと分銅の重さを釣り合わせるのですが、その動作をダイヤルの操作だけでできるようになっているのです。

 21世紀になってすでに四半世紀が過ぎようとしてる今この時、直視天秤を使っているひとはあまり居ないと思いますが、昔は化学系の実験室で多く使われていた様です。

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 私自身は、自分の研究室でこの「直視天秤」を使ったことはありませんが、私が担当していた学生実験を行っている学生実験室に置かれていたのを思い出します。(本学に着任するまえなのでもう10年以上前です。)ダイヤルを操作すると「ゴトゴト」という手触りがあって、いかにも機械仕掛けな感じがして懐かしいですね。

 さて、この「直視天秤」ですが、さすがに古くなったことと、新しいものを購入すると値が張るということでいわゆる電子天秤に入れ替えを検討することになりました。その際、入れ替えに反対する先生の意見が印象的でした。曰く、

 「直視天秤」は一部自動化されているが本当の天秤であり、質量を測っている。その一方で「電子天秤」は天秤と名乗っているが、測っているのは重量に過ぎない。

というのです。

 質量と重量、という観点からすると、電子天秤は重量を測定している、というのですね。

 重量は物質に作用する重力、つまり力です。重量を量る道具としては「バネばかり」が典型的です。バネばかりはバネの伸びとバネにかかる力が比例すること(フックの法則)を利用してものに作用する重力、つまり重量を測っています。ですから「月で測ると約六分の一の値を示す」ことになるわけです。

 もちろん、天秤も同じように重力を利用した秤ですが、天秤は質量の基準となる分銅があって、その分銅と対象物の重量を比較して、質量を求めているわけです。分銅の重量も重力の変化で変わりますから、「月で測っても同じ値がでる」のはその通り。ただし、重力の無い場所ではそもそも使えない、という問題はありますが。

 

江頭 靖幸

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