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電子天秤が測定するのは重量か質量か?(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先日の記事「上皿天秤が測定するのは重量か質量か?」では上皿天秤が測っているのは質量であり重量ではない、という結論を出しました。えっ、質量と重量ってなにが違うの、という向きにはまずは「重量と質量」の記事を読んで頂きましょう。

 一つの物体を考えたとき、その物体と地球の間に働く引力が重量(これは「力」です)、一方でその物体の質量はその物体に力を加えたときの「動きにくさ」(あるいは動いているときの「止まりにくさ」)です。重力には「地球」という影のプレイヤーがいるのですが、質量にはそんなものは無い、ということ。その証拠に「月の重力は地球の約6分の1なので物の重さも6分の1になる」けれど「月面でも宇宙空間でも質量は変わらない」のです。

 さて、上皿天秤が測っているのはどちらか?地球でも月でも上皿天秤で測る「量」は同じ値になる。なぜなら、

上皿天秤は分銅と対象の物体の「重さ」を比べているだけだ、というのがポイントです。(中略)分銅の「質量」が分かっているのでその比率から分かるのも対象物の「質量」だ、という訳です。

ということで、上皿天秤は質量を測っているのだ、と結論しました。

 さて、上皿天秤はちゃんと質量を測っているとして、はて、化学の実験で広く使われている電子天秤はどうなのでしょうか?ちゃんと質量を測ってくれるのでしょうか。

 まず、電子天秤の仕組みを知りましょう。NHK for Schoolのこちらの記事に電子天秤の仕組みが紹介されています。

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 さて、ここでの説明では測定物をのせた皿についた竿を水平に保つような電磁石の電流を測定する、とあります。電流を測ることで間接的に電磁石と磁石の間の引力を測るわけですから、これは結局「重量」を測っているのだ、と結論づけられそうですね。

 とはいえ、上皿天秤の場合でも天秤の竿にかかっている力は地球と月では違います。上皿天秤が月でも正確、というのは竿にかかっている力が本質ではなく、その力を何と比較しているかがポイントだったのですね。そう考えると電子天秤の場合は「電磁石の電流」をどの様に「量」に変換しているのか、がポイントになります。

 つまり、月で電子天秤を使う場合、基準用の分銅をもって行って、その分銅の測定値を用いて「電流」から「量」へ変換係数を修正してやれば良いのです。上皿天秤がリアルタイムで対象物と基準用の分銅を比較しているとしたら、この場合の電子天秤は時間差で比較している、という言い方もできるでしょう。

 一部の電子天秤は基準用の分銅を内蔵していますから、その場合は「電子天秤は質量を測定している」と言っても良い……かも知れませんね。

 

江頭 靖幸

 

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